Research Abstract |
本研究の目的は,探究的な学習を通して,データを処理・解釈する能力の分析を行い,児童に有効なデータ処理と解釈能力を育成する指導法を示唆することである。 そこで,本研究では,データを処理・解釈する能力を特に2つの観点(理論負荷性,児童のもつ予想)から関連性を検討することにする。実施は第5学年「ふりこのはたらき」の「おもりの質量の異なる振り子実験」である。 以下に本研究の成果を述べる。実験前の予想の段階において「重いふりこの方が,軽いふりこに比べて1往復する時間が長い」を選択した児童が42.4%,「軽いふりこの方が,重いふりこに比べて1往復する時間が長い」を選択した児童が32.6%,「重いふりこも軽いふりこも1往復する時間は同じ」を選択した児童が25.0%であった。その後,予想をさらに深めるために,「重いおもりと軽いおもりを凝視する」→「重いおもりと軽いおもりを持って重さを実感する」→「重いおもりと軽いおもりの重さを測定する」→「軽いおもりは重いおもりの何倍かを表現する」といった予想のステップを4つ施したところ,実験後の考察において「重いふりこの方が,軽いふりこに比べて1往復する時間が長い」を選択した児童が8.7%,「軽いふりこの方が,重いふりこに比べて1往復する時間が長い」を選択した児童が2.2%に減少,「重いふりこも軽いふりこも1往復する時間は同じ」を選択した児童が84.8%に増加した。 予想を4のステップで行ったことにより,児童にとって予想の根拠が明確になり,そして,十分に実感を伴って実験を遂行したため,データの処理や解釈時に児童のもつ「重いものの方が軽いに比べて速く動く」,といった理論負荷的な考えが生じなかったと考えられる。 射程は狭いがデータを処理・解釈する能力を育成するためには,根拠をもって予想を十分に行わせることやデータを取る回数を増やすことが重要である。
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