Research Abstract |
【研究目的】 本研究では,地域の小・中学校(以下,小・中学校)に通学する肢体不自由のある児童生徒(以下,肢体不自由児)に対する支援が十分に行われていないという先行研究や,筑波大学附属桐が丘特別支援学校(以下,本校)の支援部に寄せられる教育相談の約8割が体育の授業に関するものであるという実情を受け,体育の授業における継続的な教育的支援を通じて,小・中学校に在籍する肢体不自由児の体育授業を充実させるための指針を得ることを目的とした。併せて,支援の事例を通して,小・中学校の教員の障害に対する知識や理解を育み,体育の授業において,障害に応じた指導を行うことができるようになるための有効な支援の在り方について検討することを目的とした。 【研究内容とその意義】 本校に支援の要請のあった板橋区内の小学校を訪問し,授業見学や支援の対象児童および保護者のニーズの把握,および担任教員との面談を経て,平成20年11月より体育授業における支援を行った。先行研究では,小・中学校に通学する障害児の体育の授業において,受け入れ方や援助の仕方に統一の基準が無く,教員の資質によって運動経験が異なること,インクルーシブな体育・スポーツ活動を展開するためには,教員や指導員の資質・能力を向上させることが必要と言われているため,今回の支援では,こちらが一方的に支援の方法や具体的な道具やルールの工夫について提案するのではなく,単元毎に「実態把握表」を基にして,授業への参加の仕方や参加の際に必要となる手だてや配慮について,担任教員と一緒に検討した。こうした支援の方法により,学級担任自身が,対象児の「できること」「できないこと」を把握した上で,参加可能な内容の判断や参加できないときに何を行うのかということについて考えることができた。具体的な方法論だけでなく,体育の授業への参加に関する視点を伝えていくことは,障害の理解を助け,通常学級の教員の専門性を発揮した指導の工夫への一助となることが示唆された。
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