Research Abstract |
2009年7月21日,小笠原諸島北硫黄島沖の海洋(船上)にて,皆既日食時におけるシャドウバンドの観測を行った。第2接触時にはシャドウバンドを目視で確認することはできなかったが,第3接触の約28秒後から約30秒間に目視で確認することができた。今回のシャドウバンドは,これまで一般的とされてきた幅10cm程度の帯が一方向に流れるように見えるものとは異なり,幅5cm程度の明暗の帯のなかで特に幅1cm程度の明るい帯が揺らいでいるような姿を見せた。この様子は,数km離れた別の船での観測結果とも合致している。おそらく,太陽高度が高かったために,大気の揺らぎが拡散することなくストレートに地表まで伝わったためであると考えられる。シャドウバンドがこのような姿を見せたことについては,これまでに特段の報告がなく,シャドウバンドの研究においては希有な情報となる。 また,ハイビジョンビデオカメラを用いて,水星及び皆既直前直後の細くなった太陽とシャドウバンドを同時撮影して揺らぎの同調の検証を試みたが,検出はできなかった。これは,科学的な手法を用いて画像処理を行っても同じだった。おそらく,シャドウバンドの濃淡の違いがビデオカメラの検出能力を下回っていたことが原因と考えられる。また,同様に水星の瞬きも確認できなかったが,このことは,日食前後の大気の揺らぎの度合いは,水星の瞬きを十分に引き起こすほどの規模ではなかったことを意味する。このような事実は,日食現象についての科学的な情報として,今後の研究に十分に役立つものである。 今後,時間分解能に優れ且つ高感度のハイビジョンビデオカメラが汎用化すれば,本研究の目的である「シンチレーションとシャドウバンドの同調」が,簡単に検出できるようになるであろう。
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