バルプロ酸血遊離形濃度の変動機構解析とこれに基づく乳児の脳発育障害回避法の確立
Project/Area Number |
21928005
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Scientists
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
薬学Ⅲ
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
上島 智 Okayama University, 病院, 薬剤師
|
Project Period (FY) |
2009
|
Project Status |
Completed (Fiscal Year 2009)
|
Budget Amount *help |
¥590,000 (Direct Cost: ¥590,000)
Fiscal Year 2009: ¥590,000 (Direct Cost: ¥590,000)
|
Keywords | バルプロ酸 / 乳児 / てんかん |
Research Abstract |
【研究目的】バルプロ酸(VPA)の抗てんかん作用や副作用の発現は血中遊離形濃度と良く相関するが、VPAの血中遊離形濃度は総濃度の上昇に伴い非線形的に上昇する。一般的に、乳児期の脳は発育過程にあることから、VPAの過剰投与により乳児の脳発育障害の惹起が危惧される。従って、乳児にVPAを投与する場合、遊離形濃度を適切に把握することが極めて重要である。そこで今回我々は、乳児の脳の発育障害を回避するためのバルプロ酸の新規個別投与設計を確立することを目的に、母集団薬物速度論の手法を用いてVPAの血中総濃度と遊離形濃度の関係を精査した。 【方法】遡及的解析は岡山大学病院小児神経科にてVPAの血中総濃度と遊離形濃度が同時に測定されている乳児のTDMデータを対象とした。VPAの遊離形濃度と血中総濃度の関係はLangmuir型に従うと仮定し、非線形混合効果モデル(NONMEM)法により、VPAと血清タンパク質の最大結合部位数Bmと解離定数Kdの母集団平均値を推定した。 【結果・考察】先ず、単剤療法群のデータを対象に発育指標がBm、Kdに与える影響を検討したところ、Bmが乳児の体重に正比例し、Kdは一定であることが明らかとなった。次いで、このモデルを用いて併用薬の影響を検討したところ、併用療法条件下ではBmのみが減少することが示された。さらに、発育指標と併用薬の影響を考慮したモデルを用いて各乳児におけるVPAの遊離形濃度の予測精度を評価したところ、遊離形濃度の実測値と予測値は良好に相関した。従って、今回決定された母集団平均値を用いることで、日常のTDM業務で測定される乳児のVPAの血中総濃度から遊離形濃度を精度良く予測可能であることが示唆された。本研究成果はVPAを投与している乳児に対し脳発育障害を回避するための個別投与設計を実施するための有用な情報を提供できると考える。
|
Report
(1 results)
Research Products
(3 results)