Research Abstract |
○研究目的:血液がん患者の治療法である造血幹細胞移植(HSCT)時に拒絶や移植片体宿主病(GVHD)の予防を目的としてシクロスポリン(CsA)が広く用いられている。しかし、半数以上の患者においてCsA血中濃度が既知の外的要因なしに、定常状態到達後に測定誤差を超えた変動を示す症例を経験してきた。そこで、CsA血中濃度を変動させる内的因子として、我々はヘマトクリット値(HCT)に着目し、HCTの増減によるCsA血中濃度の変動およびHCTの高低群別のCsAの腎障害との関連を検討することを目的とする。 ○研究方法:CsA血中濃度の変動を定義するためAxSYM[○!R]アナライザー(アボットジャパン)を用いて、各HCT濃度(0,10,20,30,40%)に調製した血液にCsA(50,100,200,400ng/mL)を添加し測定誤差を検討した。対象患者に濃厚赤血球(MAP)輸血後のCsAのC/D比の変化を調査した。観察期間のHCT値が平均25%未満群(低HCT値群)と25%以上群(高HCT値群)の2群間でScrの変化を調査した。 ○研究成果:各HCT値に調製した血液中に既知濃度のCsAを添加し、いずれのHCT濃度においても測定可能であり、測定誤差は平均±12%以内であった。過去2年間に対象患者は20例であり、いずれの患者においてもMAPを投与後に測定誤差である12%を超えるCsAのC/D比の上昇が確認された。このC/D比の上昇はHCT値の上昇に起因するものと考えられた。また、HCTの高低とScrの変化に関連が認められず、今回の検討において腎障害はHCT以外の他の因子が関与している可能性が明らかとなった。
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