Research Abstract |
カルバペネム系薬は臨床における使用頻度および使用量の増加に伴い、世界中でカルバペネム系薬に耐性を示す細菌[主にメタロβ-ラクタマーゼ(MBL)産生菌]が増加している。これまで、それらの菌はインテグロン構造を有する伝達性プラスミドを保有し、そのプラスミド上にMBL遺伝子とプラスミド性キノロン耐性遺伝子(qnr)を同時に保有するものが報告されているが、本邦では報告されていない。本研究は(1)腸内細菌科のMBL産生菌におけるqnr保有率を調査すること、(2)MBL遺伝子およびqnrを保有するプラスミドの構造解析を行うことを目的とする。 対象は2007年4月から2009年3月までに臨床分離された腸内細菌科のうち、IPMまたはMEPMのMIC値が≧2μg/mlであった59株を用いた。ディスク法にてMBL産生を確認した後、MBL産生菌についてMBL遺伝子およびqnrの検出を行った。さらに、それらを有する1株のKlebsiella oxytocaについて接合伝達試験を行い、伝達性プラスミドの構造をPCR mappingにて解析した。 MBL産生株は12株(Enterobacter cloacae 10株、K.oxytoca 1株およびCitorobacter freundii 1株)であり、全株でbla_<IMP-1>およびqnr(qnrA:2株、qnrB:10株)を保有していた。K.oxytocaが保有する伝達性プラスミドは約140kbであり、ドナー株の薬剤耐性(IPM,MEPM,CPFX,LVFX,CTX,CAZおよびAMK耐性)がレシピエント株に全て移動した。ドナー株およびトランスコンジュガンドが保有するプラスミドは、class 1 integronを有しbla_<IMP-1>aac(6')-IIcの順に耐性遺伝子が集積していた。さらにPc promoterのweak version(TGGACA-17 bp-TAAGCT)を保有し、これまで報告されているIn87(GenBank accession no.AY648125)と類似した構造であった。しかし、同時に保有するqnrB6の周辺の配列は明らかにすることが出来なかった。 以上の結果から、腸内細菌科のカルバペネム系薬耐性株は伝達能を有するプラスミド上にMBL遺伝子とqnrを保有し、抗菌作用の異なる薬剤に対する耐性機構をいくつか持つことが確認された。そのため、それらは多剤耐性化を伝播させる可能性が考えられることから、今後も監視が必要であると示唆された。
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