Research Abstract |
【研究目的】 当園の入所者の平均年齢は約81.5歳と高齢である。そのほとんどが手指や眼の障害,顔面神経麻痺や知覚障害等のハンセン病後遺症を有しているため,通常の高齢者と比べて口腔衛生や喫食の自立が難しく,また,誤嚥のリスクが高い。本申請研究では,当園の入所者の口腔状態と摂食・嚥下機能の現状を把握・分析し,その評価に応じて口腔ケアと摂食・嚥下リハビリテーションをシステマティックに実施して評価し,それによって,ハンセン病療養所における入所者の口腔管理および摂食・嚥下リハビリテーションシステムを確立することを目的とした。 【研究方法】 摂食・嚥下障害対策委員会を組織し,委員の協力を得て口腔管理状態を調べ,摂食・嚥下に関しては全入所者にアンケート調査を実施した。その結果を分析し,個々の状態に応じた管理を検討するとともに,摂食・嚥下障害のリスクのある者を抽出して,摂食機能に関するアセスメント:口腔機能のテスト(口唇閉鎖,舌運動,頬膨らましの可否,発音機能検査(パ・タ・カ)等)およびスクリーニングテスト(反復唾液嚥下テスト,改訂水飲みテスト,フードテスト,頸部聴診,摂食・嚥下状態)を実施した。その結果に基づいて,個々に応じた摂食・嚥下訓練や食支援を行ってその評価を行った。 【研究成果】 口腔衛生管理に関しては,定期的な歯科診療室における歯科治療や専門的口腔ケアとともに,各部署における看護師や介護員による日常的口腔ケアを実施するシステムを確立した。また,個々の口腔状態に応じて,病棟,老人センター,不自由者棟には,週1度の歯科医師と歯科衛生士による往診システムを併せて実施している。ただ,口腔衛生管理について現状を調査して評価したところ,歯科を中心とした医療スタッフ数に対して全介助や一部介助を必要とする入所者が多く,口腔ケアをより能率的・効率的に行い,口腔管理システムをさらに整備する必要があることがわかった。 摂食・嚥下管理に関しては,入所者全員に対するアンケート調査を分析して,そのうち誤嚥リスクの高い33名についてスクリーニングテストを実施した結果,口唇閉鎖できない人や分割嚥下を行っている人が多いことがわかった。 さらに,嚥下造影検査も一部に実施したところ,誤嚥のリスクが高い入所者には,食形態の工夫,摂食方法の指導,喫食支援が必要であり,専門的スタッフによる定期的な回診が不可欠であることがわかった。
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