Project/Area Number |
21H04371
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 4:Geography, cultural anthropology, folklore, and related fields
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡邉 悌二 北海道大学, 地球環境科学研究院, 教授 (40240501)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 不可知 九州大学, 比較社会文化研究院, 講師 (00822644)
韓 志昊 立教大学, 観光学部, 教授 (40409545)
渡辺 和之 阪南大学, 国際学部, 准教授 (40469185)
相馬 拓也 京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (60779114)
アバタル ラム 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (90648057)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥37,700,000 (Direct Cost: ¥29,000,000、Indirect Cost: ¥8,700,000)
Fiscal Year 2024: ¥9,750,000 (Direct Cost: ¥7,500,000、Indirect Cost: ¥2,250,000)
Fiscal Year 2023: ¥7,930,000 (Direct Cost: ¥6,100,000、Indirect Cost: ¥1,830,000)
Fiscal Year 2022: ¥9,360,000 (Direct Cost: ¥7,200,000、Indirect Cost: ¥2,160,000)
Fiscal Year 2021: ¥10,660,000 (Direct Cost: ¥8,200,000、Indirect Cost: ¥2,460,000)
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Keywords | 持続可能な社会 / 山岳国立公園 / 土地劣悪化 / ポスト・コロナ観光 |
Outline of Research at the Start |
本研究では,これまでに誰も試みてこなかった,広義のヒマラヤの東西の違いに着目し,3地域(東ネパールのサガルマータ国立公園,西ネパールのカプタド国立公園,およびパキスタン最北部のフンジェラブ国立公園)を対象に,山岳地域の住民とそこを訪れる人の双方について,その地域の自然環境をどのように利用し,影響を与えているのか,また逆に自然環境によって, どのような影響を受けているのかを明らかにする。これらの結果から,多様性を維持した,持続可能な山岳社会の将来の方向性を見いだす。その際,ポスト・コロナ社会における途上国の持続可能な山岳観光と山岳社会の方向性についても議論する。
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Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き,現地調査を継続した。2023年6月および7月に,ヘルマン・クロイツマン教授(ドイツ自由大学)らと共同で,フンジェラブ国立公園とその周辺においてヤクおよびヒツジ・ヤギの移牧経路に関する調査を行った(渡辺悌二)。8月にはアンナプルナ保全地域において家畜の移牧の調査を行った(渡辺和之)。具体的には夏の放牧地を訪れ,ヤク,水牛,ヒツジの放牧地の位置,移動経路,夏の祭りなどについて聞き取りを行った。アンナプルナ南麓シーカ谷のパウダル村,スワンタ村,キバン村などで在来有用樹の利用方法などの伝統知のドキュメンテーションを実施した(相馬)。9月にはアンナプルナ保全地域のABC トレッキング・ルートにあるロッジの調査を行った(韓)。10月から11月に,サガルマータ国立公園でヤクおよび人の歩行による地表面(登山道)の劣悪化に関する調査を行った(渡辺悌二)。11月には地元の登山道管理委員会の主要メンバーと登山道の持続可能な管理に関する議論を行った。2024年3月3日から23日にかけて,サガルマータ国立公園を含むクンブ地方とソル地方にて調査を行った(古川)。クンブ地方ではコロナ後の観光産業の現況と山道の整備状況を確認し,ソル地方では車道建設の進捗とその影響についてデータを収集した。クンブ地方ポルツェ村では急速な人口流出が進み,ロッジの経営権なども外部者の手に渡るようになっていることを確認した。 2023年10月6日から8日には,渡辺らが主催したポカラにおける国際会議(2nd Sustainable Mountain Development and Tourism Conference)において,成果の一部を公表するために,セッション提案を行い,そこで7件の発表を行い,ヒマラヤの専門家らと議論を行った(全員)。他には日本地理学会(2024年3月19日から21日)などで発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野外調査については,対象地域である3つの国立公園だけではなく補完地域としてアンナプルナ保全地域においても調査を進めた。カプタード国立公園では家畜の移牧に関する一部のデータ収集が完結していないが,2024年度の補足調査で終了の見込みである。また,トレッカーが急増しているサガルマータ国立公園では,家畜と人が利用する登山道の荒廃に関する研究が,今後,きわめて重要な課題の一つになることを明らかにした。その一方で,荒廃した登山道の管理に関わる地元コミュニティの人材育成が喫緊の課題であることも理解できた。フンジェラブ国立公園に関する現地調査は2023年度に終了できた。 また,エスノグラフィ調査と合わせて長老級人物や古老から環境共生観を伝える多数の民話を収集し,ヒマラヤ保全協会が実施したJICA草の根文化無償事業で実施した2011年から2021年の植林活動・苗畑運営の影響評価を実施した(相馬)ほか,地元コミュニティによる登山道の整備に関する議論と助言を行うなど,本研究を通して,関連する団体・組織に対しても貢献を行っている。 2023年10月7日に,ネパール・ポカラで実施した国際会議において, 7件の発表を行って(他に2件の関連研究発表も行った),ヒマラヤの専門家らと議論を行った(全員)。このほかに,多くの学会などで研究者および一般市民向けに発表を行った(全員)。一部の成果は,学術雑誌および市民向けの雑誌等でも公表した。また,ネパールのコミュニティによる森林管理についての関連研究として,北海道大学に博士論文を提出した。さらに,成果の一部を観光関連の国際学術雑誌に投稿し,現在,査読審査中である。 以上,現時点で当初の計画通りに進んでいるものと判断でき,最終年度以降に目指していた書籍の出版を最終年度内に間に合わせるように準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年5月後半から6月初旬に,アンナプルナ保全地域でエスノグラフィに関する補足調査を実施し(相馬),カプタード国立公園の北方の集落において,国立公園の内外を利用する家畜の放牧制度の変容に関する補充調査を行い,村の家畜放牧と観光開発の現状を明らかにする(渡辺悌二)。また,8月にソルクンブ郡を再訪し,登山道整備と車道建設の進行状況を再確認し,生活への影響などを聞き取るとともに,特にコロナ後に発生した人口動態の変化について調査を行う(古川)。さらに,9月から10月にかけてサガルマータ国立公園において,家畜とトレッカーの歩行が草地に与える影響および観光開発による家畜の放牧の変容について詳細な調査を行うと同時に,現地でワークショップを開催して,海外の国立公園管理の専門家をオンラインで招待して,登山道の持続可能な維持管理に関する技術的な助言を行う(渡辺悌二)。また,室内では,4月から6月にパキスタンのフンジェラブ国立公園およびネパールのアンナプルナ保全地域の土地利用土地被覆図の精度向上作業を行う(アブタル)。 英文書籍の原稿執筆については,2024年3月時点で6章分の草稿ができているが,これらの執筆を完成させて,さらに残りの章についても秋を目処に完成させる(全員)。その後,原稿を日本地理学会の審査委員会に提出する。また,ネパールの2つの国立公園については,今後の持続可能な公園管理にかかわる調査結果について,年度末までにネパール政府に報告書を作成・提出する予定である。 さらに,成果の一部は,学会発表ならびに学術雑誌に論文として投稿する。学会発表については,9月にドイツで開催される第12回MMVの国際会議で発表するとともに, 2025年3月に駒澤大学で開催される日本地理学会などで発表を行う。
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