Project/Area Number |
21H04977
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Research Category |
Grant-in-Aid for Specially Promoted Research
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Biological Sciences
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
工藤 洋 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (10291569)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
角谷 徹仁 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (20332174)
本庄 三恵 京都大学, 生態学研究センター, 准教授 (30450208)
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Project Period (FY) |
2021-05-18 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥631,150,000 (Direct Cost: ¥485,500,000、Indirect Cost: ¥145,650,000)
Fiscal Year 2024: ¥119,730,000 (Direct Cost: ¥92,100,000、Indirect Cost: ¥27,630,000)
Fiscal Year 2023: ¥120,900,000 (Direct Cost: ¥93,000,000、Indirect Cost: ¥27,900,000)
Fiscal Year 2022: ¥124,280,000 (Direct Cost: ¥95,600,000、Indirect Cost: ¥28,680,000)
Fiscal Year 2021: ¥145,860,000 (Direct Cost: ¥112,200,000、Indirect Cost: ¥33,660,000)
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Keywords | ヒストン修飾 / H3K27me3 / 長期環境応答 / エピジェネティクス / ハクサンハタザオ |
Outline of Research at the Start |
地球上の生態系が温暖化によって大きく変貌しつつある今、生態系のエネルギーフローの出発点にある植物の長期応答を理解することは急務である。生物の長期応答にはクロマチン記憶が主要な役割を果たすが、新たな課題は、長期クロマチン記憶における修飾間のクロストークを明らかにし、その生態機能を明らかにすることである。クロマチン記憶の環境応答におけるメカニズムと役割を明らかにする総合研究を実施する。
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Outline of Annual Research Achievements |
クロマチン長期記憶の環境応答におけるメカニズムと役割を理解するために、1.長期クロマチン記憶の新規メカニズム、2.新規環境要因で変化する長期クロマチン記憶のターゲット、3.長期クロマチン記憶の生態機能を明らかにすることが目的である。具体的には、① H3K27me3介在型プロモーターの解析による新規メカニズムの解明、② 修飾間のクロストークとDNAトポロジーの役割の解明、③ 温度ミミックのターゲット解析、④ ウイルスで変化するクロマチン記憶の解析、⑤ 長期クロマ チン記憶の温度依存性と生態機能の解明、⑥ 防御における季節ゲーティングの解明、である。 2023年度には、2022年度に引き続き、研究を進めるとともに、⑤と⑥も重点的にすすめた。その結果、シロイヌナズナのH3K4me2脱メチル化酵素LDL3が転写と協働して働くことを示した(Mori et al 2023 EMBO J)。また、LDL3の変異体やH3K4me2のメチル化酵素の変異体を用い、これがH3K27me3やH2AUbに影響することを示した(論文準備中)。さらに、クロマチン修飾変異体の背景で高温の影響を調べることにより、反復配列における特徴的な応答を見出した(未発表)。さらに、任意の遺伝子に長期環境応答を付与するプロモーターについて論文をまとめ投稿中である。また、「環境要因」では、温度ミミックの細胞内外の局在を明らかにするための実験をすすめた。「生態機能」では、ヒストン修飾を介して、病虫害に対する誘導防御がシャットダウンされる新しい機構について実験的な検証をすすめた。さらに、葉の老化が冬の間にシャットダウンされることを明らかにし、これについて解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記した①~⑥の計画ともに、期待通りの成果が出ており、その成果が一部論文として発表されるか、投稿準備中の状況にある。①「H3K27me3介在型プロモーターの解析による新規メカニズムの解明」については、長期的記憶を司るプロモーターおよび下流の遺伝子上におけるH3K27メチル化の長期低温応答についての論文を投稿中である。このプロモーターについての解析を進め、長期低温応答に必要な部位を特定した。②「修飾間のクロストークとDNAトポロジーの役割の解明」については、シロイヌナズナのH3K4me2脱メチル化酵素LDL3が転写と協働して働くことを示し、これが環境応答の長期記憶に貢献する可能性を提案した(Mori et al 2023 EMBO J)。また、LDL3の変異体やH3K4me2のメチル化酵素の変異体を用い、これがH3K27me3やH2AUbに影響することを示した。さらに、クロマチン修飾変異体の背景で高温の影響を調べることにより、反復配列における特徴的な応答を見出した ③「温度ミミックのターゲット解析」については、その細胞内外の局在を明らかにする実験をすすめた。⑥「防御における季節ゲーティングの実証と生態機能の解明」については、遺伝子発現レベルの季節ゲーティングについて、短期と長期の温度の効果を実験的に検証し、さらにその産物の季節性と温度依存性を明らかにした。また、 ④「ウイルスで変化するクロマチン記憶の解析」と⑤「長期クロマチン記憶の温度依存性と生態機能の解明」については、前者ではカブモザイクウイルス感染のヒストン修飾に及ぼす効果、後者では葉の老化応答の季節ゲーティングの解析を進めており、当初予定していた範囲を越えてクロマチン記憶の生態機能が理解されることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
クロマチン記憶における修飾間クロストークの役割を解明するために、東京大学ではエピゲノム形成に関与する因子の変異体を用いた解析に加えて、ロングリード解析を進める。京都大学では分子遺伝学的実験、温度ストレス・ウイルス感染実験に加えて引き続き自然集団での研究を実施する。また、新規のクロマチン記憶現象の探索も実施する。また、成果については、国際学会や学術論文としての発表を進める。計画①ついては、H3K27me3介在型プロモーターにおいて、長期温度応答に必要な領域を特定したので、その解析をすすめる。また、当該プロモーターを持つ内在遺伝子の機能について解析する。計画②については、H3K4に加えH3K27に影響する変異体を用い、これらの修飾の相互依存性を整理する。また、高温の影響をロングリード解析で調べる。計画③については、温度ミミックペプチドの機能を明らかにするとともに、細胞内の局在部位での働きについても研究を進める。また、この因子のターゲットの遺伝子発現変化とペプチド濃度との関係を解析する。計画④については、引き続き、ハクサンハタザオ―カブモザイクウイルス持続感染系において、野外の感染株と非感染株の間でヒストン修飾を比較し、感染によりH3K27me3の蓄積が変化する遺伝子を特定し、発現との関係を明らかにするとともに、接種実験により長期の感染の効果を検証する。計画⑤については、冬季における老化のスイッチオフ機構におけるクロマチン記憶について解析するとともに、高温・低温応答性の季節変化についてのデータ取得を進める。計画⑥については、みどりの香りのゲーティング現象において、遺伝子発現調節とH3K27me3の蓄積との関係について、阻害剤を用いた検証を試みる。
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Assessment Rating |
Interim Assessment Comments (Rating)
A: In light of the aim of introducing the research area into the research categories, the expected progress has been made in research.
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