Project/Area Number |
21K00046
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01020:Chinese philosophy, Indian philosophy and Buddhist philosophy-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西村 直子 東北大学, 文学研究科, 准教授 (90372284)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | ヴェーダ / ヴェーダ祭式 / 祭官選任儀礼 / pravara / 社会階層 |
Outline of Research at the Start |
本研究は,ヴェーダ祭式における祭官選任儀礼の精査により,祭式の整備過程と社会の変化の解明に資する資料を提示する。祭官選任への言及は最古の『リグヴェーダ』(紀元前1200年頃)に既に現れるが,家系図読み上げ等の詳細は紀元前8世紀頃の文献において初めて議論され,祭式整備の過程で家系を論ずる必要が新たに生じたことを推測させる。社会階層を構成する四ヴァルナ(婆羅門,クシャトリヤ,ヴァイシャ,シュードラ)が世襲を基本としている点を考慮すると,家系を巡る議論の進展がインド社会における階層性の強化に果たした役割は小さからぬものと言える。本研究では古代インドにおける階層社会形成過程解明への寄与をも目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,ヴェーダ祭式における祭官選任儀礼(Pravara プラヴァラ)に関する伝承を精査し,祭式の整備過程と社会の変化との解明に資する資料を提示する。 ヴェーダの主要祭式では,執行に携わる祭官を選出する儀礼が式次第に組み込まれている。この儀礼について,紀元前6世紀頃以降に成立した祭式綱要書(シュラウタスートラ)の諸伝承は,祭主の家系図(父,祖父などの名前)を読み上げるべく規定する。本研究は,当該儀礼に関する伝承の精査を通じて以下の諸問題の解明を目指し,ヴェーダ祭式の整備過程と社会の変遷との解明への寄与を目的とする: ① なぜ既に進行している式次第の途中で祭官を選任するのか,② 祭式に参与する祭官は,実際にはいつ,何を基準にして選ばれるのか,③ 祭式綱要書以前の祭官選任儀礼はどのように行われ,どのような過程を経て祭式綱要書における様式化へと至ったのか,④ なぜ祭官選任の際に祭主の家系が問題になるのか。 祭官選任への言及は,最古の『リグヴェーダ』(紀元前1200年頃編集固定)に既に現れるが,家系図を読み上げる等の具体的な手順については紀元前8世紀頃以降の文献に初めて論じられ,祭式整備の過程で家系を論ずる必要が新たに生じたことを推測させる。社会階層を構成する四ヴァルナ(婆羅門,クシャトリヤ,ヴァイシャ,シュードラ)が世襲を基本とする点を考慮すると,家系を巡る議論の進展がインド社会における階層性の強化に果たした役割は小さからぬものと言える。本研究では,古代インドにおける階層社会が形成されていく過程の解明に寄与する成果をも目指す。 今年度は国際学会の発表1件,論文執筆1件を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は,pravara-とその派生元となった動詞表現(語根vari+前綴りpra「選び取る」)の,ヴェーダ文献における全用例について,語義展開を精査,分析する計画であったが,その過程で前綴りのないvariも含めて検討することも必要であると明らかになり,計画当初の範囲を拡大する必要が生じたため。
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Strategy for Future Research Activity |
語根vari±前綴りpraの用例全体を精査し,語義展開について分析する。特に,白ヤジュルヴェーダ学派によって祭官選任儀礼の伝承状況は大きく変化したと考えられるため,同派の伝承を中心として文献の内容を精査する。また,祭式綱要書においてはリグヴェーダ学派の果たした役割が拡大している可能性が指摘できるため,祭式の整備が複数学派の協同により進展したことを具体的に示す例としても,検討を重ねる。 更に,祭官選任儀礼において唱えられるマントラ(祝詞,祭詞)の伝承については,先述の白ヤジュルヴェーダのみならず,黒ヤジュルヴェーダ学派においても奇妙な点が見られる。マントラは原則的に「サンヒター(本集)」に収録され,その解説は「ブラーフマナ(儀規文献)」において為される。ところが,黒ヤジュルヴェーダ諸学派の中には,マントラを「ブラーフマナ」に収録し,「サンヒター」で解説を行うものがある。一方,白ヤジュルヴェーダ学派は祭官選任を論ずる際に,自派の「サンヒター」に収録されていないマントラを解説している。いずれの方式も,一般に理解される文献編集の原則から逸脱していると言える。この点は,祭官選任儀礼に留まらずヴェーダ祭式全体の整備と文献編集にかかわるものであるから,より長期的な見通しを以て慎重に精査を進めたい。
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