帝国日本の情報統制データ網と闇ルートの機能に関する研究
Project/Area Number |
21K00271
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02010:Japanese literature-related
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
高 榮蘭 日本大学, 文理学部, 教授 (30579107)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 検閲 / 朝鮮総督府図書課 / 内務省図書課 / 出版警察 / 社会主義 / 植民地 / 出版市場 / 移動 / 情報統制 / データ / 出版 |
Outline of Research at the Start |
1920年代後半から書物―思想の移動に対応し、効果的な情報統制の方法を模索するために、内務省と総督府で作られた情報統制に関する内部データは、お互いの参照枠として機能することになる。しかし、これまで情報統制データに対する思考が、抵抗思想に対する抑圧の重さを示すレベルに留まり、朝鮮総督府と日本内務省の資料に対する定量分析や共起語(co-occurrence word)分析を媒介とする「文化ネットワーク地図」への可能性を模索してこなかった。本研究では、植民地朝鮮と内地の統治システムの差異を意識しながらも、両方をつなげる形で、文化ネットワークの問題を考える。
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Outline of Annual Research Achievements |
1920年代半ばから1940年代はじめまで、帝国日本の検閲システムは、内地―朝鮮―台湾―満洲を繋ぐ形で膨大なデータ網を構築しながら拡張した。本研究は、①このようなデータ網と、②それに痕跡を残さない形で日本帝国の法域を潜り抜けるための「闇ルート」が同時に機能していたことに注目し研究する。その上①と②がGHQの検閲や冷戦構造を媒介に、旧植民地の軍事独裁政権による検閲の中で、どのような役割をはたしていたのかについて明らかにすることを目的とする。 データ網について理解するためにはデジタル人文学に関する理解が必要である。2022年度はこの分野で最も注目されている韓国の孫真元(高麗大学)氏をお招きし、講演会「デジタル時代の 韓国文学-WEB小説の現在」(7月8日)について講演をしていただいた。その他、日本の文学・文化史に関わる7回の講演会を主催した。韓国文化体育観光部、国立国語院、成均館大学共催の「冷戦書物の文化史」という国際会議(10月6日から7日)で発表した。ここではアメリカや日本、韓国の出版社代表、韓国翻訳院の関係者と、今後の共同研究の可能性についても話し合った。その他、米国、日本、韓国、中国、台湾の研究機関主催の国際会で9回の発表を行った。韓国でデジタルヒューマニティーズ研究を牽引している李載然「生活と態度 機械が読む『開闢』と『朝鮮文壇』の作品批評用語と批評家」を慶応大学の金景彩と共訳で発表した。シカゴ大学の崔キョンヒ氏とは検閲をめぐるデジタル人文学の成果を踏まえながら、英語と韓国語の共著の執筆を続けている。韓国圓光大学の金在湧氏が中心になっている台湾・中国・日本・韓国の研究者との共同研究も続いており、「2022 東亜植民地主義と文学会議」(8月17日)では日本帝国と植民地の知の循環について議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、基礎的な資料の集めと、研究成果の公開方法の模索、共同研究の基盤作りを行った。2021年度に本科研の研究課題を深めるために文学とメディア環境研究会を作った。過去2年間計3回の国際会議と7回の講演会を開催している。デジタル・ヒューマニティーズの方向から検閲資料を研究するために、朝鮮総督府図書課に関する資料を分析した経験のある孫ソンジュン(韓国海洋大学准教授、「韓国近代文学 検閲研究の統計的接近のための試論」『外国語文学』38号、2010年)、李載然(蔚山科學技術院准教授)、呉ヨンジン(ソウル科学技術大学講師)と連携をとりながら、基礎的なデータ構築の方法について学習した。日本語の資料を扱うための方法を模索するために、名古屋大学の日比嘉高教授主催の電算文学研究会に参加し勉強している。シカゴ大学の崔キョンヒ教授は朝鮮総督府による検閲研究の専門家である。現在も定期的に、Zoomを利用し、共著を執筆するための研究会を続けている。崔さんと協力しながら韓国・日本・米国に散在している本研究関連の資料を集めている。また、韓国圓光大学の金ジェヨン教授が主催しているネット空間における市民大学にも参加し、研究業績をより多くの方達に公開できる方法を模索している。異なる地域、異なる空間を生きる研究者とネットワークを構築することにより、単独の研究では実現しえなかった多元的な側面からの研究基盤作りが固まりつつある。その意味において、最初に提出した研究目標を充分に達成することが出来たと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
①昨年に引き続き、朝鮮総督府の検閲資料をデジタル人文学の方法で研究している孫ソンジュン(成均館大学)、李載然(蔚山科学技術大学)、呉ヨンジン(ソウル科学技術大学)と連携をとりながら、日本帝国の検閲資料のデータを集め、デジタル人文学の方法で分析を進める。②学生アルバイトの助けを借りながら、集めた資料を整理する。これらの資料、特に日本語の資料の分析方法を模索・開発するために、名古屋大学の日比嘉高教授主催の電算文学研究会に参加し勉強している。2023年も連携を続ける。③2023年7月おわりから8月半ばまで、シカゴ大学の招待で、検閲資料の調査、共著の執筆、秋に開催する予定の国際会議の準備を進める予定である。シカゴ大学に滞在期間中にデジタルヒューマニティーズ研究で名高いホイットロング教授とも研究方法についてアドバイスを得る予定である。金在湧教授をはじめ中国・日本・韓国・台湾の研究者と、帝国日本の植民地政策と文学・文化に関する国際会議を、今年度夏に済州島で共催する予定である。④デジタルヒューマニティーズ関連の研究論文を日本語訳する。また本科研の期間内に研究成果の一部を公開するために、単行本を執筆中である。出版社もすでに決まっており、できれば2023年度中に刊行できればと思っている。
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Report
(2 results)
Research Products
(43 results)