周縁にて女性が書く行為をめぐる言説構造の解明:現代沖縄文学の多層性への新たな視座
Project/Area Number |
21K00299
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02010:Japanese literature-related
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Research Institution | Kochi National College of Technology |
Principal Investigator |
翁長 志保子 高知工業高等専門学校, ソーシャルデザイン工学科, 准教授 (70805671)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
Fiscal Year 2024: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 沖縄近現代文学 / 女性文学 / 周縁性 / フェミニズム批評 / 日本近現代文学 / 日本文学 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、1970年代後半から90年代初頭に登場した沖縄の女性作家たちの活躍に焦点を定め、女性が書く行為をめぐる言説構造について分析を行う。 復帰後沖縄で求められた「女性らしさ」「沖縄らしさ」が、県内外の文壇や社会に与えた影響を女性作家の作品やそれを取り巻く言説の分析で明らかにする。その際2000年以降の「消費される<沖縄>」にあるジェンダーの問題、沖縄の女性作家作品における表現や表象に着目し、東京を中心とした文壇との同時代性だけで測ることのできない地方(周縁)の多層性も考察することで、周縁において女性が書く行為をめぐる困難と多層性を研究する。それを日本の近現代文学における自己批評につなげる。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、1970年代後半から90年代初頭に登場した沖縄の女性作家たちの活躍に焦点を定め、女性が書く行為をめぐる言説構造について、作品の読解を中心に分析を行う。その目的を達成するために、本年度は以下のような取り組みを行った。 1)【基礎的資料の収集・整理】本年度の総括に向けて作業を重ねるなかで、女性作家の「海」に関する表象を研究した昨年度の成果を発展させ、奄美群島を含めた琉球弧において沖縄を中心とする南島の人々の主体形成について島尾ミホ作品を再読することで考察する観点を発見し、資料の整理を進めた。また、『新沖縄文学』や『青い海』など、本研究が対象とする期間に発刊されていた資料を収集・閲覧し、「ヤマト嫁」のテーマに関する資料を集約し、分析を行うことにも取り組んでいる。 2)【学会・講座等での成果発表】本年度は国際学会で2回発表した。まずは第11回東アジアと同時代日本語文学フォーラム・バリ大会(9/1)において、女性特有のモチーフとされがちな妊娠/中絶を扱った「妊娠/中絶をめぐる東アジアにおける沖縄女性の生と戦争――田場美津子「仮眠室」論」を発表した。さらに、第13回国際日本語教育・日本研究シンポジウム(11/19)では、南島に関する表象から沖縄の日本〈復帰〉にまつわる事柄を島尾ミホ作品の再読を通して論じた「沖縄の日本〈復帰〉以降における〈沖縄人〉主体の形成過程の一考察――島尾ミホ作品の再読を通してーー」を発表した。 3)【論文の学会誌への投稿、採用】本年度は、沖縄における女性と「海」の開発に焦点を当てた「「海辺」に「死」を語り継ぐ女たちの連帯ー沖縄の「海」をめぐる言葉と空間の撹乱ー」が『社会文学』(第58号)に査読Aで採用され、掲載された。また、国際学会で発表した研究について、その内容を精査し、論文化に向けて考察を深めている状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度末までに山里禎子「ソウル・トリップ」に関する研究(新自由主義下の沖縄における障害者の自己決定(不)可能性 ――山里禎子「ソウル・トリップ」論)と、女性作家の「海」に関する表象の研究(「海辺」に「死」を語り継ぐ女たちの連帯 ――沖縄における「承認」をめぐる言葉の再編と撹乱 ――)については、査読有り学会誌に投稿して論文化が完了しており、計画通りに進行している状況にある。また、この両テーマについては、研究の総括に向けて、さらにテーマを深めている段階にある。 加えて、「海」に関する表象の研究については、上記に加えて、これまでの研究の過程で、1972年の沖縄〈復帰〉前後に盛り上がった「反復帰論」と島尾ミホの作品を再読していくことで、〈復帰〉以降の沖縄におけるある種の沖縄の人々の主体形成を問う観点を得ることができており、国際学会での発表を経て、論文化への筋道を立てている状況にある。 しかし、沖縄文学の文壇における女性作家の扱いの総括については、資料の収集と整理の段階に留まっており、新たに見いだした観点を踏まえて、今後は具体的に分析を進めていく必要がある。また、「ヤマト嫁」に関する分析についても、具体的な作業に取り掛かり、学会での発表や論文化に向けての準備を整えていく必要がある。 全体の進捗としては概ね順調であるが、個別の分析観点ごとに進度に差があるため、科研における研究テーマの総括に向けて、進捗を適宜管理していく必要があるのが現状である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる本年度の研究の推進方針は、研究テーマの総括に向けて、これまでに重ねてきた個別の研究ごとのテーマを深めつつ、研究の全体像をまとめていくことである。1980年代前後の時代に沖縄において活躍した女性作家の作品の分析を進めていくことで見いだしてきた、障害や開発、労働、妊娠/中絶、病理化などの観点を、今後はさらに深化させ、作品相互の関係性や時代との関わりへの分析に広げていくことで、本研究がテーマとする女性が書く行為をめぐる言説構造の包括的研究の総括に取り掛かりたい。並行して、今後も継続するテーマとなる沖縄文学の多層性に関するテーマを取り巻く状況についての資料収集・整理に務め、次年度以降の研究につながる土台となるテーマの探求にも務める。また、沖縄と関わりのある作品を残している石牟礼道子や干刈あがたなど、沖縄や南島性に関わるところで書かれた女性作家の作品や周辺の言説の収集、整理・分析にも務め、日本近現代文学の分野にも波及するようなテーマを見出すことで、更に研究を広げていく予定である。 具体的な予定としては、昨年度国際学会で発表した田場美津子「仮眠室」の作品分析と、島尾ミホ作品の再読に関する研究成果を論文化し、年内に査読有りの学会誌等に投稿することを目指す。また、並行して「ヤマト嫁」に関する作品・言説分析にも取り組み、1990年代以降の沖縄の現代文学における女性作家の立ち位置や作品の評価なども行いつつ、女性作家の扱いに関する総括を段階的に進行させる予定である。
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Report
(3 results)
Research Products
(6 results)