Project/Area Number |
21K00839
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03020:Japanese history-related
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Research Institution | Kawamura Gakuen Woman's University |
Principal Investigator |
辻 浩和 川村学園女子大学, 文学部, 教授 (70735513)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥130,000 (Direct Cost: ¥100,000、Indirect Cost: ¥30,000)
Fiscal Year 2022: ¥130,000 (Direct Cost: ¥100,000、Indirect Cost: ¥30,000)
Fiscal Year 2021: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
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Keywords | 日本中世史 / 身分 / 集団 / 奈良 / 遊女 / 遊女屋 / 都市 |
Outline of Research at the Start |
中世の遊女は自ら経営権をもち、相互扶助的な職業集団を形成していた。遊女の仕事は家業として女系で相伝されたため、外部から女性が流入する例はほとんどない。これに対して近世の遊廓では、男性の遊女屋経営者が人身売買によって女性を集め、性売買を行わせる。また集団の構成者も遊女屋経営者たちとなる。 このように遊女のあり方は中世から近世にかけて大きく変化する。本研究では、その画期となる15・16世紀を対象として、遊女屋の経営形態とその社会的位置づけの変容を分析する。遊女社会の変容と再編成過程の解明を通して、中世から近世に至る身分制の変容過程を、社会的な基盤と広がりをもった動向として描き出そうとするものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
・第1年度の事例蒐集によって遊女屋破却には興福寺衆中・講衆が関与していることが明らかとなったため、第2年度は衆中引付を中心としてさらに事例蒐集につとめた。具体的には天理図書館所蔵保井家文書、奈良市立史料保存館寄託竹林家文書、薬師寺史料(薬師寺所蔵)などの閲覧と蒐集を進めた。時期的変遷の地図化や都市行政研究との比較等を行い、京都・奈良の状況に即して遊女集団の崩壊と遊女屋集団の形成を考察した。蒐集資料を時系列に並べて地図化することで、京都・奈良における遊女屋の位置的変遷がよくわかるようになった。 ・こうした作業を通じて、遊女屋集団の定着と遊廓の形成とを連続的に理解できるようになった。具体的には、近世史における遊女町研究の進展を踏まえつつ、京都島原遊廓、および奈良木辻遊廓の形成過程を解明し、遊女屋集団と一般町人との関係性について考察した。 ・以上の成果は歴史学研究会中世史部会大会準備会(第2~4回)および歴史学研究会中世史部会大会にて「京都・奈良における遊女屋の展開と都市権力」と題して報告し、「京都・奈良における遊女集団の展開と権力」(『歴史学研究』1028、2022)に発表した。 ・あわせて、遊女集団と春日社との関係変容、ひいては遊女集団の崩壊過程を見通すべく、当該期の猿楽集団と春日社との関係との比較考察を行った。その成果は9月の能楽学会世阿弥忌セミナーにて報告し、能楽研究者との討論を行った。 ・また遊女をめぐる社会的イメージの変遷を系統的に理解するため、国際日本文化研究センター共同研究「ソリッドな無常/フラジャイルな無常」第7回研究会において「遊女の〈移ろいやすさ〉をめぐって」と題する研究報告を行い、文学・宗教学を中心とする研究者との議論を行った。 ・奈良における遊女屋の排除に関して「中世後期の遊女屋をめぐる社会観念」(『国立歴史民俗博物館研究報告』235、2022)を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
・新型コロナ感染状況の好転や史料のデジタル閲覧環境の整備もあって、史料の蒐集は予想以上に順調に進んだ。所蔵機関の機器トラブルにより閲覧がかなわない史料などもあったが、デジタル公開の進展などもあって、思いがけず入手できた史料なども多かった。 ・第2年度は計画以上に研究成果の発表が進展した。研究成果の論文化を2篇行うことができたほか、歴史学研究会や能楽学会などからの依頼により、当初の計画以上に成果発表の場を持つことが可能であった。 ・とりわけ、歴史学研究会大会で京都と奈良における遊女屋の展開過程を比較した結果、両者に共通する点が多いことを見いだせたのは大きな成果であった。身分集団としての遊女集団の解体について考える上で、両都市間に共通する展開がみられることは重要な発見であったと考える。 ・また、歴史学研究会大会での報告では、本研究を他の身分集団に関する報告と突き合わせることとなり、都市領主との関係や15世紀における身分集団の変容に共通点が多いことが判明した。中世身分集団論の捉えなおしを図る本研究にとっては、こうした見通しを得られたことが大きな意味を持った。 ・以上より、総合的に見て第2年度における本研究の進捗には予想以上の進展があったと判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
・第3年度より関西の研究機関に移動することとなったため、これまでアクセスしにくかった京都大学文学部古文書室(一条院文書)や奈良県立奈良図書館、東大寺図書館などでも史料蒐集を継続したい。 ・また、第2年度の事例蒐集と分析によって豊臣政権期から江戸初期にかけての都市政策が遊女屋の疎外に大きく関わるという見通しを得たため、当該テーマに関する情報収集と分析を進め、都市政策の展開と遊女屋の展開とを照合する作業を行う。 ・最終年度である第3年度は、研究課題の総合的考察と研究総括に取り組み、成果発信を積極的に行いたい。 ・成果発表として、能楽学会での報告内容を論文化するほか、中世の働く女性について執筆する一般向けの新書(集英社インターナショナル新書より2024年3月刊行予定)に遊女と遊女屋に関する項目を立項する予定である。また、第1・2年度の成果を踏まえて中世遊女の全体像に関わる一般書の執筆を進める(吉川弘文館より刊行予定)。
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Report
(2 results)
Research Products
(12 results)