Project/Area Number |
21K00846
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03020:Japanese history-related
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
橋本 雄 北海道大学, 文学研究院, 教授 (50416559)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 破墨山水図 / 雪舟等楊 / 了庵桂悟 / 別幅 / 偽使派遣勢力 / 対馬宗氏 / 足利義政 / 足利義満 / 珠光 / 心の一紙 / 維摩信仰 / 兼好法師 / 徒然草 / 正徹 / 禅宗 / 心の下地 / 宗祇 / 全杲・吉祥院 / 雪舟 / 茶 / 花 / 能・狂言 / 文化交流 / 貿易 / 東山幻想 / 東山御物 / 君台観左右帳記 / 座敷飾り / 室町文化 |
Outline of Research at the Start |
日本文化史上の焦点の一つに「東山文化」がある。室町将軍家の書画・工芸品コレクション「東山御物」は、遅くとも戦国時代から、茶の湯を行なう大名や商人の間でブランド品とされた。そうした品々を列挙し、価値の高低を示し、どのように陳列するかを示したテキストが、『君台観左右帳記』などの座敷飾りマニュアルである。しかし、座敷飾りのテキストには、すでに死没した人間が奥書を記すなど、不自然な点が複数認められる。他の史料との突き合わせも含めて、また隣接分野の文化史や美術史などにも学びつつ、おもに文献史学的手法によって再検討していきたい。「東山幻想」を解体し、15~16世紀の室町文化の実像に迫ろうとするものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、①「雪舟筆、国宝「破墨山水図」成立事情考:追賛部分に関する検討から」(髙島晶彦氏との共著)、②「『大明別幅并両国勘合』(妙智院蔵)所収の日朝関係文書:年紀不詳の別幅四通」、③「日本伝統文化形成期の室町殿たち」を発表することができた。 ①では、雪舟の代表作「破墨山水図」をデジタル顕微鏡による現物調査をきっかけに見えてきたことをまとめた。検討の結果、この作品は以下のような経緯で成立したと考えられる。雪舟は、主君大内氏と連携し、弟子の如水宗淵の東行に合わせ、月翁周鏡ら五山僧の追賛を企画、その制作と周旋とを旧知の京都東福寺僧了庵桂悟に依頼した。了庵はまず自身が追賛し、そのあと、基本的には年齢や臘次の低い順から廻し、追賛を6点付加することに成功した。従来の単純素朴な「破墨山水図」に関する研究を乗り越えられたと自負する。 ②は、室町期日朝外交文書に関する基礎的な研究。副題に掲げた別幅は、贈品リストのことを指し、贈品が独立した紙(それゆえ別幅と言う)になるかどうかで儀礼的態度の多寡が窺える点で重要なものだ。従来未検討であった『大明別幅并両国勘合』に収録される年紀不詳の朝鮮国別幅4通の年次比定を試みた。1通を除き、その比定には完全に成功したと考える。また、そのなかでも、ある1通に関しては、次のような餘慶があった。偽使派遣勢力の中核たる対馬宗氏が、偽使派遣の機会や手段を守るべく、ある通信使一行を惨殺したという仮説である。筆者の年来の偽使研究にも資する内容となった。 ③は、足利義満・義政・雪舟等楊について評伝を綴り、また、二条良基・今川了俊・絶海中津・世阿弥・足利義持・義教の短い解説を行なったもの。いずれも、本研究課題とも密接に関係する内容となり、既往の筆者の研究をまとめつつ、新たな知見を付け加えることもできた。 総じて、最終年度に向けて、足固めをすることができたと確信する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍の影響を脱しつつあり、また自身の体調も復帰傾向に入っている。これにより、通常の調査や出張などを行なえるようになったことが大きい。このまま無事に事態が推移し、研究を滞りなく進められることを祈るばかりである。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(2024年度)の成果としては、すでに公表済みの拙稿「外交儀礼論のパースペクティヴ:室町時代の日明関係を中心に」がある。この論稿は、2023年5月に原稿依頼を頂戴し、応諾して成したものであり、2024年4月15日付けで発行された。そういう意味では、当初計画にはなかったものである。だが、本研究課題とまったく無縁なものではない。以下、その理由を述べる。 同稿では、室町殿(足利義満・義教)の外交儀礼に関する研究を行なった。儀礼の克明な復元もさることながら、実際には、史料論というべき内容であった。というのも、従来基幹史料とされてきた『満済准后日記』を脱構築しているからである。具体的には、幕政の顧問たる満済が、自身の個人的都合で室町殿の儀礼を左右していたことが分かった。これは、本研究課題との関係でいえば、中国の儀礼文化をどのように日本が受容したのか、変容させたのかという和漢論そのものと言える。室町時代の日本は、何も、中国の言う通りに外交儀礼を行なっていたわけではなかったのである。そういう意味で、前述の通り、同稿は本研究課題において不可欠な要素になったと思う。 そして、来年度中には、現在進行中の、拙著『”日本国王”と勘合貿易』(初出NHK出版本では4章編成)の増補改訂が刊行される予定である(講談社学術文庫を予定)。2章分を新たに付け加えるその増補作業は、現段階で大詰めを迎えている。もちろん、その増訂部分のなかには、和漢論の要素をふんだんに盛り込んでいる。つまり、当然に本研究課題とも密接な関わりを有するわけである。 なお、本研究課題遂行中には遺憾ながら間に合いそうにないのだが、『和漢梵の文化史』(仮題)をまとめつつある(中公新書として刊行予定)。すでに概要は出来ており、大学の講義などでブラッシュアップしてさらに内容を固めていく所存である。
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