Study on growth management and use of the Coastal Forest in the Japanese early modern period
Project/Area Number |
21K00875
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03020:Japanese history-related
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
菊池 慶子 (柳谷慶子) 東北学院大学, 文学部, 教授 (00258782)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2022: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2021: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | クロマツ / 海岸林 / 松葉さらい / 築地松 / 仙台湾岸 / 畑作を支える海岸林 / 仙台藩 / 海岸林保護組合 / 磐城平藩 / 海岸防災林 |
Outline of Research at the Start |
本研究課題は、沿岸地域の防災をはじめ多様な公益的機能を併せ持って近世から近代、現代へと受け継がれてきた海岸林の成立と拡充の歴史をたどり、その生育管理の様相を沿岸部の集落における資源利用との関係に視点を据えて解明しようとするものである。クロマツを主木に選び植栽された海岸林は、人の営為と深く関わり生育する二次的森林生態系としての特徴を備えている。歴史のなかでその実相を捉えることは、東日本大震災の発生を機に多重防御の一つとして再生が進む海岸林の持続を見据えるものとなる。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、クロマツを主木として植えられた海岸林が防災はもとより、多様な公益的機能を持ち合わせることにより、近世から現代へ受け継がれてきた歴史に関心を向け、植林の政策的な展開と、海岸林の具体的な機能、および維持・管理をめぐる方策・技術の様相を沿岸地域の暮らしに視点を据えて解明することを課題とする。2022年度は前年度に続いて仙台湾岸地域で残存林の観察と再生海岸林の生育管理に関する調査を行いながら、①海岸林の歴史に関する文献と史料リストの作成を継続し、②東北地方の海岸林と比較する地域として鳥取県・千葉県で現地調査と関係資料の収集に着手し、③海岸林の恩恵を受けた集落の暮らしを知るために仙台市新浜地区の契約講史料の解読・分析と聞き取り調査を行った。 仙台湾岸の北部に位置する石巻市矢本地区、東松島市野蒜地区では、松葉の採取はマルの単位に成形する作業は行われず、また組合・集落の共同で実施せずに個人ごとに行われており、仙台市以南の集落と異なる様相にあることを確認した。集落の成り立ちや家相互の関係性に基づく相違であるのか検討を進めている。②は、畑作が展開した地域に成立した海岸林を巡ったが、収集した古絵図で畑作を支えたクロマツ林の分布と機能を考察することもできた。また島根県の出雲平野には屋敷の風除けのためにクロマツを植栽する「築地松」が展開しており、沿岸域でクロマツが担った防災機能を地域の生活文化の構築として捉え、類例を探る視点を得ることとなった。 ③は史料の前半部分の解読・分析を進めた。新浜地区はムラ・クミ・講という三重の組織のもとにクロマツと共生する暮らしが持続しており、契約講は頼母子機能が重視されたことも確認した。 以上の研究を通して得られた知見のうち、松葉さらいに関する考察を中心に「暮らしのなかの海岸林の松葉」と題して報告を行った(「震災被災地の自然・暮らしと復興研究報告会」)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度の計画のうち、①海岸林の歴史に関する文献の収集は、図書や学会誌論文を中心に前年度に確認作業が遅れた理系の成果のリストアップを進めた。また行政が作成した海岸林造成地に関する報告書のなかに近世・近代の施工に触れたものがあることがわかり、収集対象としたが、東北地方にとどまっており、次年度全国を見渡して拾い上げる必要がある。歴史資料に関しては自治体史の史料集のうち関東以西の収集は不十分であり、次年度に集中して行うこととする。②仙台湾岸域で現地調査は仙台市・名取市・岩沼市を継続しているほか、北部の石巻市矢本地区、東松島市野蒜地区で写真撮影と地元の住民の聞き取りを行ったが、隣接する集落で組合の活動、松葉を採取するルール等に異なる様相が確認されたことから、仙台市をはじめ未調査の集落の調査を次年度に実施する必要がある。また宮城県公文書館にある植林関係資料のうち、前年度未着手であった石巻市、東松島市の部分を写真撮影により入手したが、昭和年度は膨大であるため、なお作業を残している。 ③東北地方と比較する地域として当初は福井県を予定していたが、畑作の展開した地域でクロマツ林の役割があることを知り、鳥取県米子市・鳥取市、千葉県銚子市で海岸林を巡見し、関係史料を公文書館・図書館で調査した。時間切れで入手できなかった史料については所蔵館の職員の協力で入手することができ、絵図類を中心にウエブ上で公開されている分を入手することもできた。④仙台市新浜地区に残る契約講史料の解読は、昭和戦後期の部分が終えられずに残った。大正7年以降、現在に至る全体の解読と分析をめざし、聞き取りと合わせて次年度の計画とする。 以上、予定した作業・調査は遅れている部分はあるが、おおむね実施できており、遅延している調査についても次年度の見通しが立っていることで、ほぼ順調な進捗状況であると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
課題研究の最終年度であるので、計画した調査・作業の完了をめざして以下のように取り組む。①海岸林の歴史に関する文献・史料のリストは前年度に残した作業を継続し、完成させる。国会図書館の蔵書・論文検索、県立図書館・大学図書館での文献調査、そのほかweb検索を行い、情報を収集する。また新たに刊行された自治体史の収載史料については直接史料の内容を確認する必要があり、都立中央図書館で調査を行う。②仙台湾岸地区で植林の経過を追うために実施してきた残存林の調査、および再生海岸林の調査については、仙台市、および東松島市を中心に未調査の旧集落について、現地を巡り景観の撮影と関係者からの聞き取りにより情報を収集する。前年度の調査により松葉の共同利用を可能とした堆積の条件(植栽の密度、間伐時期など管理方法との関係)を探る視点を得たことで、海岸林の再生に取り組む県・市・法人の担当者から聞き取りを行う。③海岸林の管理と利用のありかたを東北と比較する地域として、福井県敦賀市気比浜、静岡県沼津市千本松原を巡見し、関係資料を現地の公文書館・図書館で収集する。④仙台市新浜地区に残る契約講史料の解読・分析は昭和戦後期に着手し、大正7年に始まる講の全体について検討を行う。 3年間の調査・研究で得られた知見を研究会、講演で公表し、研究論文として執筆する。また研究課題について総括を行い、文献・史料リスト、調査地の写真、研究会報告資料などを収載した報告書を作成する。仙台市新浜地区については10年にわたって調査を継続しデータの解析・検討が進んでいることから、集落の歴史と海岸林との関わりを詳述する論考を作成し、地元での成果の報告をめざす。
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Report
(2 results)
Research Products
(5 results)