環バルト海世界とスウェーデン・デンマーク近世王朝財政軍事国家に関する研究
Project/Area Number |
21K00950
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03040:History of Europe and America-related
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Research Institution | Asahikawa National College of Technology |
Principal Investigator |
根本 聡 旭川工業高等専門学校, 人文理数総合科, 准教授 (80342442)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2021: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
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Keywords | スウェーデン / デンマーク / カルマル連合 / ハンザ / バルト海 / エーアソン海峡通行税 / グスタヴ二世アドルフ / 免税特権 / 王朝財政軍事国家 / 環バルト海世界 |
Outline of Research at the Start |
近年、近世ヨーロッパ財政軍事国家に関する研究が隆盛である。が、十七世紀の全般的危機や三十年戦争で有名なこの変革期における肝心の主役たる北欧両王国、デンマークとスウェーデンの研究がいぜん欠けている。特に三十年戦争の勝者たるスウェーデンの新しい君主政が、デンマークとのバルト海支配をめぐる闘争の中で練磨され、ヨーロッパの大国へと変貌を遂げたという視点に乏しい。そこで本研究では、スウェーデン・デンマークの国力を国内関係・対外政治、資源開発、税制、兵制、海軍、財政、国制の全分野から比較検討することによって、中核・周辺モデルに代わる新しい王朝軍事財政国家を発展させた力学を解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、近世スウェーデン・デンマークの国力比較研究を行なうにあたって、中世以来の徴税方法と資源の生産・流通のあり方を中心に検討した。成果は、以下の三点である。第一に、スウェーデンにおける十六世紀のグスタヴ・ヴァーサ王が刷新した代官派遣の実態を解明しながら、同王が、徴税の任務にあてた代官の、中央への会計報告義務を厳格化し、局地ごとに全国の資源の分布状態を、王室が一手に把握するシステムを開発したその経緯を検討した。これは、尚書府と財務府による中央統治システムの刷新と強化という形で徹底される。ただし、これらの分析にあたっては、それ以前の城とレーンのあり方が、両国において把握されておかなければならない。そこで、カルマル連合のもとでもっとも問題と闘争をまねいた争点である、さまざまな城レーンを比較検討するなかから、グスタヴ・ヴァーサ王が打ち立てた代官領、宗教改革によって没収された教会領への代官の配置、農民に対する課税にあたっての地方における交渉のあり方についての具体像を解明する必要が出てきて、これについての分析を深めている。第二に、北欧世界における注目すべき経済現象は、おもにスコーネ沖のニシン漁、ユラン半島の牛交易、スウェーデンのバリイスラーゲンの製鉄業であるが、これらの産業活動が、どのように王室経済に貢献したかについての解明を目指し、両国の王室収入を、とくに十六世紀に関して検討した。ただし、それと同時に、デンマークについては、エーアソン海峡通行税の収入が王室収入に占める位置を把握しなければならず、十六世紀から十七世紀についての分析と解明を急いでいるところである。第三に、以上とは別個に、スウェーデンの大国時代研究のもっとも重要な局面である、グスタヴ二世アドルフ治下の経済政策を分析し、その時期の政治経済の概略が小論にまとめられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遅延の理由は、おもに次の六点があげられる。第一に、コロナ禍で、出張ができず、現地調査及び資料調査ができないことである。第二に、文献・史料の入手困難性、である。特に、デンマーク関係の文献の入手が思わしくない。しかも、史料の購入は、きわめて困難であり、現地に直接行くより打開策はないほどである。第三に、土地制度史や兵制の歴史研究は、第二次世界大戦前、あるいは十九世紀にまで遡る必要があるという点があげられる。第五に、バルト海支配をめぐる闘争において、重要な問題である海軍建設問題の把握が、困難な仕事であるという点がある。第六に、スウェーデンとデンマークの国力比較研究という性格上、本研究に関係する国々や地域が多岐にわたり、複雑な外交や国際関係の問題も絡む。本研究が、スウェーデン史に主眼があるとしても、デンマーク語、ノルウェー語、英語、ドイツ語、さらにロシアやポーランド、神聖ローマ帝国、フランス等の研究にも目配りしなければならない。さらに、外交用語としての国際語であるラテン語の解読も出てくるため、時間を要する、きわねて難解な作業であるという点がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、基本的には予定どおり、進めることにしたい。すなわち、主要な二点の研目標を解明するという方向である。一つは、環パルと海世界の主要な資源の出処を明らかにし、それらの生産と流通の在り方を分析することである。いま一つには、第一の課題で行なわれた、スウェーデンおよびデンマークの資源研究をもとに、かかる資源を国力として、十七世紀中葉にピークに達する両国のバルト海支配をめぐる覇権闘争において、いかに有効に、戦争のための資源動員につなげていったかを、資金融通の問題とともに、解明すること、である。したがって、かかる研究目標を解明するために、以下の四点研究課題として、考察を深めていくことにしたい。第一に、スウェーデンおよびデンマーク両国の税制および徴税の特質を考察する。第二に、デンマークにおけるスコーネ沖のニシン漁とユラン半島の牛交易、他方でスウェーデンの鉄・銅・銀の金属資源の生産・流通を考察する。第三に、国際商業の舞台としての両国の首都、コペンハーゲンとストックホルムの、環バルト海世界における競争で果たした役割と意義を検討する。第四に、以上の研究成果に立った上で、国制と王朝財政軍事国家との関係を考察する。本年度で、十六世紀以降のグスタヴ・ヴァーサによる代官派遣の実態がかなり把握されてきたので、同王以降の貴族の特権問題、農民の身分としての形成、それにともなう国会の意義、換言するならば、臨時税の恒常化とその納税者である農民との課税承認問題に、研究課題をさらに関連づけ、また発展させて、デンマークの税制と比較していきたい。
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Report
(2 results)
Research Products
(2 results)