光明皇后の造営事業からみた奈良時代造瓦・供給体制の研究
Project/Area Number |
21K00951
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03050:Archaeology-related
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
次山 淳 富山大学, 学術研究部人文科学系, 教授 (80260058)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥130,000 (Direct Cost: ¥100,000、Indirect Cost: ¥30,000)
Fiscal Year 2021: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
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Keywords | 光明皇后 / 造営事業 / 造瓦 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、奈良時代の官による宮殿および寺院造営体制解明の一環として、聖武天皇(701~756)の后である光明皇后(701~760)による数々の造営事業に焦点を絞り、造瓦という観点から検討をおこなう。個々の造営事業に関する文献史・建築史・美術史・仏教史等の先行研究を整理するとともに、発掘調査の成果と出土軒瓦等の考古学的研究からそれぞれのありかたを検討し、これらを通時的・系統的にあとづけることで、平城京を中心とする地域の造営・造瓦供給体制を構造的に解明しようとするものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、奈良時代の平城京周辺でおこなわれた造営事業を、歴史考古学の方法を通じて構造的に捉えるための視点として、光明皇后(701~760)により行われた造営事業に着目し、考古学の資料である造瓦を中心に整理・検討していくことを目的としている。光明皇后あるいはその家政機関である皇后宮職の関与が指摘されている造営事業の対象地は、A:藤原不比等邸宅地、平城京皇后宮、法隆寺東院、恭仁京皇后宮、法華寺、B:興福寺五重塔、興福寺西金堂、新薬師寺、C:東大寺上院地区(東大寺前身寺院)、東大寺、の3グループに分けることができる。 令和4年度は、Bグループにあたる興福寺、新薬師寺を中心に、それぞれの造営事業と施釉瓦せん(緑釉水波文せん)に関する①文献史、仏教史、建築史、美術史の史資料・先行研究の収集と検討、②各遺跡および関連する瓦窯出土瓦に関する資料・先行研究の収集と検討、課題の抽出、および研究課題全般にわたる先行研究の収集・検討をおこなった。 興福寺については、光明皇后造営の五重塔、西金堂ばかりではなく、時系列的な藤原氏および皇室との関係性を重視し、前身寺院および中心伽藍造営全体を視野に入れて検討を進めた。興福寺中心伽藍では、伽藍全体としての出土軒瓦のありかたに加え、創建時の中心的な所用軒瓦である興福寺式6301A・6671Aの笵傷進行と所用堂塔との関係、生産遺跡である京都府梅谷瓦窯でのありかたなど研究の現状を整理した。また、近年の発掘調査で明らかになった新薬師寺金堂の創建軒瓦6301I・6671Jと、その生産遺跡とみられる奈良県荒池瓦窯の内容について整理した。この系列に対し、新薬師寺創建の天平19年(747)という年代の定点が得られたことは重要である。さらに、これらの瓦笵による製品は東大寺造営に際しても使用されており、Bグループにおける一連の関係を、興福寺式軒瓦を軸に捉えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、対象とする造営事業について時間を追って区分したかたちで、3ヶ年の研究計画を立てたが、概要に記したようにやや検討遺跡の構成を変更し、造瓦の系統性を重視した3グループを視点に検討を進めることとした。このため個別遺跡の対象年度に若干の異同は生じたが、年間の作業としては、Bグループという1系列について先行研究と論点をおおむね整理することができたため、ほぼ順調に進行しているといえる。 昨年度は、新型コロナウィルスの感染状況から、実地調査が十分に実施できない状況にあったため、文献資料調査による検討と考古資料の実地調査という本研究の2本の柱のうち、後者は充足できなかった。令和4年度も、文献資料調査に重点をおき、研究計画の対象を先行させるかたちで作業を進めたが、奈良文化財研究所における基準資料の実地調査など、文献調査により抽出した調査課題の確認作業をおこない得た。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、これまで検討してきたA・Bグループに加え、Cグループの東大寺上院地区(東大寺前身寺院)、東大寺の造営事業、および施釉瓦せん(緑釉水波文せん)について、文献史、仏教史、建築史、美術史に関する資料・先行研究の収集と検討、各遺跡および関連する瓦窯出土瓦に関する資料・先行研究の収集と検討、課題の抽出をおこなう。また、各グループ内の関係性に加えて、グループ間の相互関係の検討をおこない、全体の総合化と平城京における造営事業と造瓦体制のなかでの位置づけをおこなう。 考古資料の実地調査については、新型コロナウィルスの感染状況を配慮したうえで、前2ヶ年に十分に実施できなかった調査も含めて、効率的な実施をはかる。
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Report
(2 results)
Research Products
(4 results)