江戸時代における貝類利用の俯瞰的研究-食用から美術工芸までを視野に入れて-
Project/Area Number |
21K01007
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03070:Museology-related
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Research Institution | Natural History Museum and Institute, Chiba |
Principal Investigator |
黒住 耐二 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員(移行) (80250140)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 貝類遺体 / 自然史標本 / 富ノ森城跡 / タニシ土坑 / 貝肥 / 俵物 / 小林一茶 / ウバガイ物送り / 近世貝塚 / 伊藤若冲 / 貝甲図 / 魚譜 / タニシ / マツカサガイ / 干潟 / 近世 / 貝類利用 / ヤコウガイ / 俵物三品 |
Outline of Research at the Start |
江戸時代における貝類の利用を、1)食用採集と販売、2)俵物三品としての松前藩のアワビ、2)螺鈿等の工芸材料や貝細工、4)伊藤若冲の貝甲図のような意匠、5)物産会という形等でのコレクション、6)シーボルト資料群中の貝類の分析等を中心的に取り上げ、ア:考古資料、イ:現存している自然史資料群、ウ:絵画や図譜を詳細に検討することにより、採集方法(底曳網等の漁法を含め)・意図→利用方法・処理(食用・殻利用)→流通・販売・入手経路→加工・保管・展覧会という流れと、それぞれの関連性を、北海道から琉球までの日本全国を分析対象として、俯瞰的に取り扱い、当時の社会の在り方を貝から示す。
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Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、長崎・沖縄の2カ所で、図書館での文献調査・博物館での展示資料調査・発掘現場での考古学的調査を行った。また、展示資料調査として、千葉県内の2カ所・三重県伊勢市・横浜市を訪れた。 長崎では、アワビの螺鈿細工である青貝螺鈿の詳細と、出島を中心としたオランダおよび中国との貿易に関するものを精査した。しかし、青貝螺鈿・ヨーロッパへの貝類“輸出”(よく知られているシーボルトコレクションに関連するようなコレクションアイテムや自然史標本としての貝類)に関しては、僅かな総説的なものしか地方史文献でも確認できなかった。中国との貿易に関しても、アワビの“俵物”のデータを入手できた程度であった。展示資料では、メダイとしての貝利用を確認することができた点は大きな収穫であった。 沖縄の遺跡においては通常、近世期の貝類遺体が少量ながら確認されることが多いものの、今回の発掘遺跡では近世期の堆積物はほとんどなく、貝類遺体を確認することはできなかった。図書館での文献調査では、近年の多数の遺跡報告書をコピーでき、これまでに申請者が指摘してきた内湾干潟の貝類利用が優占する状況を再確認した。 様々な展示会で、余り意識してこなかった分野での貝類利用を見つけ出すことを目的としたが、新たな利用法の展示はなかったといえる。 論文として、漆喰に用いられる貝を焼いた貝灰の歴史的変遷をまとめ、東京湾と鹿児島県を中心とした近世期の例を議論した。また、京都市淀の富ノ森城跡から江戸時代のタニシ利用を初めて報告し、併せて江戸でのタニシ利用における農民と他職の人々の間での水田での貝類採集=利用の在り方が異なっていた可能性を示唆した。北海道・噴火湾沿岸の遺跡では、ウバガイ(北寄貝)が物送りに関連することを報告した。東京湾沿岸での「深川飯で用いられた貝類の搬出」や田畑の肥料とされた貝類についても、一般向けの講座で触れた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度は、博物館業務である「鯨」の展示会メンバーとなり、夏開催までの準備および終了後の秋まで、本研究を進めることができなかった。秋以降、とりまとめにかかったが、発表できたものは決して多くなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、コロナ禍もほぼ収まったため、近世期の漁業の中心であった和歌山県の近世期から続く漁港(辰が浜漁港)や同様な日本各地の漁村を中心に最後の現地調査を行う予定である。 一方、沖縄と近世期には薩摩藩直轄地であった奄美地方の考古遺跡を中心に、同じサンゴ礁地域に立地する両地域の貝類利用を詳細に検討し、相違点の有無を抽出することを目指す。そして、相違が存在した場合、想定される社会的な状況(薩摩文化の影響等)を明らかにしたい。 また、これまでに資料を得ている千葉県の貝を肥料に用いた「貝肥」に関して、その考古学的・貝類学的に詳細な分析を行い、論文化することを目指す。貝肥に関しては、多数の古文書からの“他村の貝肥素材であるきしゃご採集を中止させるように”との訴状が東京湾の千葉県側各地で知られており、一定レベルの研究は存在するものの、貝肥の実態に関しては、全く述べられたことがなく、極めて興味深いものとなろう。 さらに、俳人の小林一茶が千葉県富津市で「耳っ貝」と呼ばれていた貝を干して、出荷していたということは地方史研究者の間で知られていたが、その貝の正確な同定と理由に関しても考察を行う予定である。
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Report
(2 results)
Research Products
(9 results)
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[Book] くらべてわかる貝殻2021
Author(s)
黒住耐二・大作晃一
Total Pages
127
Publisher
山と溪谷社
ISBN
9784635063562
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