公共施設法に関する総合的研究―表現(集会)の自由との関係を中心に―
Project/Area Number |
21K01155
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 05020:Public law-related
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
神橋 一彦 立教大学, 法学部, 教授 (20262545)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 公共施設の管理・運営 / 集会の自由 / 行政裁量 / 施設使用許可 / 政治的中立 / 上告制度 / 上告受理申立制度 / 政治の概念 / 公共施設法 / 公物法・営造物法 / 公の施設 / 法律上の争訟 / 議員の政治活動 / 表現の自由 / 地方自治 / 公物営造物法 / 憲法訴訟 |
Outline of Research at the Start |
国や地方公共団体の設置する公共施設は、日常社会における私人の表現や集会の場として重要な存在となっている。もっとも、そのような公共施設の使用をめぐっては、単なる施設管理にとどまらない、当該施設において行われる表現・集会の内容や事実上の波及効果などをめぐって、使用不許可などの規制がどこまで許容されるかといった法的問題が生じ、現に紛争も起きているところである。本研究は、かかる問題を検討するにあたっては、行政法における公物法・営造物法と憲法における人権論との間の理論的架橋が必要であるとの認識の下、比較法的な研究をも踏まえ、この両法分野を総合した統一的な公共施設法の構築を試みるものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
1.2022年度は、公共施設の管理・運営をめぐる憲法・行政法上の問題につき、2021年度に引き続き、行政法・実体法的な研究を継続するとともに、そこで得られた知見と憲法解釈論を含めた総合的検討を行った。 2.とりわけ、本研究の具体的素材の1つとしていた金沢市庁舎前広場使用不許可事件(第2次訴訟)については、2023年2月に最高裁判決が出され、判例の状況にも大きな展開がみられた。同最高裁判決を批判的に分析することによって、公共施設の使用提供における行政の「政治的中立」とは何かという実体法的な問題や、上告審(最高裁)における憲法論(上告事件)と裁量論(上告受理申立事件)との役割分担などについて、具体的な検討・解明が相当程度進むこととなった。とりわけ憲法訴訟との関係では、一般に、ある違法事由において憲法違反と(裁量権の逸脱濫用を含む)法令違反とが密接不可分の関係にあることが想定されるところ、上記判決ではそれが分断されて処理されており、この点は、現行の上告制度の問題点を解明する上でも重要な手がかりとなる。そのような観点から、年度内に上記最高裁判決を分析する論稿を執筆した(「行政法研究」50号掲載予定)。 3.公共施設の提供をめぐる行政(地方公共団体)の「政治的中立」をめぐっては、住民自治や民主主義との関係が考察の基盤となる。とりわけ、近時の給付行政における「政治的中立」をめぐる行政の対応については、「政治」をめぐる対立的契機が過度に強調されているきらいがあるところ、この点について、さらに問題を深堀りすべく、憲法学・政治学の文献から知見を摂取することを試みた。 4.行政救済法に関する概説書(単著)である『行政救済法』の改訂(第3版)を行ったが、本研究で得られた憲法訴訟・行政訴訟に関する知見を直接、間接に活かすことができた。これは、計画で予定した本研究の行政法理論へのフィードバックである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、(1)公共施設の管理・運営に関し、2021年度に行った行政法・実体法的な研究を継続するとともに、その時点で得られた知見と憲法解釈論との間の総合的検討(憲法学における人権論と行政法学における行政裁量論との関係など)を行い、(2) 表現(集会)の自由に対する規制などを中心に、憲法を踏まえた法令解釈のあり方についてドイツ法の議論を検討し、日本との比較研究を行うことを予定していた。 この計画のうち、行政法と憲法解釈・憲法訴訟論との架橋を試みる総合的な検討については、金沢市庁舎前広場使用不許可事件(第2次訴訟)最高裁判決(2023年2月)が出されたこと、また上告制度・上告受理申立制度に関する公表文献などに助けを得て、訴訟法上の観点(憲法訴訟・行政訴訟の観点)からの検討を深めることができた。とりわけ、憲法論(憲法違反)と裁量論(法令違反)の区別ないし関連について、上告審(最高裁)での審理のあり方も含めて検討する端緒を得ることができた。また、ヘイトスピーチ規制との関連ついても、研究機関より招待講演の機会を得、そこでの研究者との意見交換を通じて一定の知見を得ることができた。さらに、概説書(単著)『行政救済法』の改訂作業を通じて、本研究を行政法理論にフィードバックすることも一定程度達せられたと考えられる。 ただし、当初予定したドイツとの比較については、憲法学、政治学の分野における文献について収集することができたものの、これらを十分に検討するには至らなかった。この点はとりわけ公共施設の管理・運営(政治的中立の観点も含む。)と集会の自由との関係の基盤をなす民主主義論にもかかわる問題であり、2023年度の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、これまでの2年間の研究を踏まえ、憲法と行政法の両分野を見据えた「公共施設法」(行政法各論)の構想を取りまとめ、その上で、行政実務や司法において解決方策の提示が要請されている諸問題に一定の回答を見出すとともに、行政法総論へのフィードバックも試みることを計画している。 このうち行政実務や裁判実務上要請されている諸問題への応答は、2022年度中にある程度行うことができ、行政法総論へのフィードバックも、裁量論への示唆を得ることや行政救済法(行政訴訟・国家賠償法)に関する概説書(単著)『行政救済法』の改訂作業を通じて徐々に実行しつつある。その意味で、本研究自体はおおむね計画通りに進捗していると考えている。 2024年度は、(1)(a)公共施設の管理・運営や表現・集会の自由の基盤となる基本権論、(b)住民自治も含めた民主主義論など統治のあり方との関係について、さらに研究を深めること、(2)当初予定したドイツの学説・判例などから知見を得ることを試みること、(3)憲法との架橋も志向しつつ、行政法総論、行政救済法へのフィードバックをさらに進めることなどを基本的な方針として、本研究全体を取りまとめるべく、さらに研究を進める。とりわけ、集会の自由と民主主義との関係については、並行して本格的検討を構想している地方議会のあり方を中心とする地方自治(住民自治)をめぐる諸問題の研究と連結しつつ、考察の視野を拡大、発展させることを試みたい。
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Report
(2 results)
Research Products
(14 results)