Project/Area Number |
21K01239
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 05060:Civil law-related
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
三宅 新 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (30621461)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 重大事由解除 / オプリーゲンハイト / 保険法 / 危険増加法理 / 遡及的免責 |
Outline of Research at the Start |
保険法には、重大事由解除という解除権が存在する。この解除権の効果は、重大事由が生じて以降の保険事故につき、すべて保険金支払の対象外とするものであり、遡及的免責と呼ばれている。このような効果は、それまで契約で個別に対処していたものであったが、平成20年の保険法制定によって立法化された。しかし、その導入にあたっては、実務上必要であるという要請が優先されたため、理論的裏付けが十分ではなかった。そのため、様々な解釈上の課題が登場している。本研究は、このような遡及的免責が必要かという問題提起に基づいて、重大事由解除が理論的な整合性を有する解除権となるような解釈論や立法論を展開していくものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
日本では重大事由解除で因果関係不存在時の遡及免責を認めているが、ドイツでは約款が一定の行動規範を定めて対処している。ただし、その行動規範は、契約上のオプリーゲンハイトとしてその効果の限界がVVG28条によって画されている。本年度は、この点を研究した。 VVG28条が因果関係不存在時の免責を認めるのは、違反がarglistigになされたときである。この規律は、2007年制定の現VVGにおいて初めて登場した要件であるところ、我が国の先行研究においては、このarglistigについて、「詐欺的」という訳語が当てられている。しかし、この訳語は正確といえるかという問題提起から、ドイツ法で用いられているこの要件を明らかにしていった。 arglistigはBGB123条でも登場し、そこでは日本の詐欺取消しと同様の規律が置かれている。さらに、ドイツにおいても、VVG28条とBGB123条のarglistigは同じ意味であるという少数説が存在する。しかし、BGB123条は、あくまでarglistige Tauschungという表現であり、相手を錯誤に陥らせて意思表示をさせることを意味している。また、VVGでも22条でarglistige Tauschungという表現が登場するが、これは保険契約にもBGBの詐欺取消しが適用されるという規律にすぎず、VVG28条と直結するわけではない。上記少数説はこの点を混同している。 これについては、2012年BGH判決が、当て逃げの事案において、それがarglistigの対象となることを前提とする判示をした。このような当て逃げは単に事実の解明を妨げるにすぎないことから、arglistigはBGB123条で登場する意味とは異なるといえ、ドイツの多数説もそれを支持している。 以上から、arglistigは「背信的」という訳語を充てるべきだとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、比較法分析を行なうことによって、従来にない知見を加えることができた。特に、因果関係不存在での免責を認めたVVG28条3項については、これまで日本で本格的に研究されたことがなかったため、その大枠を示せたことで、自分自身にとっても今後の研究の基礎を築くことができた。また、それを論文として本年度中に公表できた点でも、順調に進んだといえる。 ただし、本年度は比較法分析を中心としたため、ドイツ語の調査にやや時間を要した点もあり、最終的に研究期間を一年延長することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究において、ドイツVVGの比較法分析を行なった。これにより、契約上のオプリーゲンハイトという法制度が日本の重大事由解除と共通する点を多くすることが分かった。その結果、日本の重大事由解除の遡及免責という効果がドイツの危険増加法理に類似しているという今までの見識に若干の変化が生じることとなった。他方で、この契約上のオプリーゲンハイトについての研究は、日本では1980年代までのものしかなく、相当に不足していることも明らかになった。 以上のことから、ドイツにおける契約上のオプリーゲンハイトについて基礎研究をしていくことが重要な課題になるとの前提の下、これからはそれを通じて本研究の目的である重大事由解除の遡及免責につなげていく。具体的には、日本では、保険事故発生後の行動規範違反(例えば、通常に保険事故が発生した後に水増し請求をする場合)をもって遡及的に保険事故まで免責とする約款を置くことは、重大事由解除の片面的強行規定性に反するとの見解がある。これに対して、ドイツでは立法の上でも保険事故後のオプリーゲンハイト違反が免責事由となることを前提とした立法がなされている。このような違いが生じている原因を法制史の視点も含めて解明していくことで、日本の上記見解は正しいかということを検証していく。
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Report
(3 results)
Research Products
(6 results)