Project/Area Number |
21K01457
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 07040:Economic policy-related
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
須賀 宣仁 北海道大学, 公共政策学連携研究部, 教授 (70431377)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2021: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | オフショアリング / リショアリング / 比較優位 / リカード / 賃金 / 社会厚生 / 工程間分業 / オフショアリング・コスト / 厚生 |
Outline of Research at the Start |
近年、生産の「国内回帰(リショアリング)」と呼ばれる現象が注目を集めている。生産の海外移転(オフショアリング)に比べて、リショアリングについては国際貿易研究の観点からこれまで十分な考察がなされていない。生産の国内回帰の可能性を考慮した場合、従来のオフショアリング理論の結果がどのように修正され、どのような政策的含意が導かれるだろうか。本研究では、生産が国内回帰する可能性を考慮に入れたオフショアリング・モデルを構築し、オフショアリング・コストの低下とともに工程間分業がどのように変化し、貿易、賃金、社会厚生といった経済の基礎的諸条件がどのような影響を受けるかを理論的に明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和4度は、前年度に構築した単一の生産要素とリカード的な比較優位を想定したオフショアリング・モデル(以下、基本モデル)に関して二つの拡張を試みた。一つは基本モデル(二国モデル)の多数国モデルへの拡張であり、もう一つはリカード的な線形モデルから非線形モデルへの拡張である。これらの新たな設定のもとで、前年と同様に、リショアリングが生じる条件と基本的メカニズム、加えて、リショアリング(生産の国内回帰)の発生・進展が貿易、賃金および社会厚生に及ぼす影響について分析を行った。具体的には、オフショアリング・コスト(生産の海外移転にともなう費用)の低下とともに生産工程レベルの国際分業がどのように変化するかを考察することにより、どのような条件のもとでどのようにリショアリングが生じるかを示した。また、貿易や賃金、社会厚生の変化について、経済の基礎的諸条件の違いに応じてどのような変化のパターンを示すかを明らかにした。 上記の研究は、基本モデルの主要な結果をより現実的な設定のもとで再検討し、その頑健性を明らかにしている点で重要である。多数国モデルの分析は、工業生産がオフショアリングを通じて低賃金の国々に逐次的に拡大する中にあって、リショアリングがどのように位置づけられるかについて一つの解釈を与えている。また、非線形モデルの分析は、現実との乖離という点で基本モデルが有する次の二つの問題点を解決している。一つは低賃金国の賃金が実質的に定数として与えられる点であり、もう一つは高賃金国が工業部門(オフショアリングが生じる生産部門)に完全特化している点である。この非線形モデルへの拡張により、低賃金国の賃金変化と高賃金国の産業間資源再配分という、リショアリングにともなう重要な経済的変化についての考察が可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和4度は、分析の進捗および研究成果の発表に係る作業において当初の目標から遅れが生じている。当初の研究計画では、研究実績の概要で述べた研究テーマに関する論文を令和3年度中に完成させる予定であったが、実際の進捗状況は論文の作成段階にある。当初の予定から遅れが生じている理由は主に二つある。第一に、基本モデルで示された結果の頑健性を確認するため、異なる設定のもとで新たな分析を試みたことである。現実に対する説明力を重視する近年の理論研究の傾向を踏まえ、シンプルな基本モデルによる分析だけでなく、より現実的な設定のもとでの分析も加えた方が望ましいと判断したことがその理由である。第二に、前年度と同様に、当該研究課題とは別の研究テーマに係る作業に多くのエフォートを傾けたことである。この研究は他の研究者との共同研究であり、作業分担や日程調整等の都合上、同研究の論文作成を優先する必要があった。結果として、当該研究課題に係る作業を中断する期間が度々生じることとなり、当初目標としていた論文の完成には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
大枠において当該研究課題の研究計画の内容に変更はなく、前年度までにやり残した課題を次年度以降に繰り越して研究を継続する予定である。ただし、当初予定していた一要素モデルと二要素モデルにおける分析の統合は取り止め、本研究課題の到達目標を二要素モデルにおける分析までとする。具体的には、令和5年度中頃までにリカード型のオフショアリング・モデルの論文を完成させ、研究成果の発表(セミナー報告・学会発表・学術誌への投稿等)を行う。これと並行して二要素モデルの分析にも着手し、年度後半において本格的な論文作成に移る。この二つ目のサブテーマにおける研究成果の発表については、令和5年度末までの学術誌への投稿を第一目標とするが、それが難しい場合にはセミナー報告もしくはディスカッションペーパーの投稿を目指す。令和5年度の終わりまでに二つ目のサブテーマに関する分析と論文を完成させることにより、研究期間内において当該研究課題の主たる研究目標を達成することを目指す。
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