就学型自立援助ホームの研究―児童養護施設退所者の進学保障と生活支援の確立に向けて
Project/Area Number |
21K02031
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 08020:Social welfare-related
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Research Institution | Kagawa Nutrition University |
Principal Investigator |
深田 耕一郎 女子栄養大学, 栄養学部, 准教授 (40709474)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 社会的養護経験者(ケアリーバー) / 自立援助ホーム / 若者支援 / 潜在的社会的養護層 / 社会的養護経験者 / ケアリーバー / 家庭的養育 / 就学型自立援助ホーム / 児童養護施設退所者 / 社会的養護 / アフターケア |
Outline of Research at the Start |
本研究は児童養護施設を退所した若者への進学保障および生活支援をいかにして確立するかを考察するものである。施設退所者は学費や生活費を自分で働いて支弁しなければならないため、学業と仕事の両立困難さに直面する。施設退所後の進学はゴールなのではなく、進学後に困難さが深まるのである。 こうした施設退所者への支援施設として自立援助ホームがある。その多くが「就労型」であるのに対して、本研究は学生支援に特化した「就学型」自立援助ホームの可能性を研究する。施設退所後に進学した若者が抱える困難はどのようなものか、いかなる支援が必要かを考察する。その上で就学型自立援助ホームの意義と必要性を社会に訴えていきたい。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、社会的養護経験者(ケアリーバー)といわれる、児童養護施設等を措置解除となった後に、大学・専門学校等に進学する若者への進学保障・生活支援のあり方を、自立援助ホーム等への実態調査に基づいて、考究するものである。 2022年度は、関東4都県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の自立援助ホームに対して実施した実態調査について、その分析と成果公表を行った(2022年6月18日開催の関東社会学会第70回大会において報告を実施)。 本報告では、第1に、全国自立援助ホーム協議会調査研究委員会が実施した全国調査の結果から認識できることをまとめた。本調査が示す基本的な事項を確認すると、入居者の入居経路は「家庭からの入居」が43.3%と最も多く、「児童養護施設等の他施設からの入居」は36.5%であった。入居の理由は「父母からの虐待」が45.3%と約半数を占め、10代後半まで虐待を受け、長期間、不適切な養育環境に置かれた若者の存在が浮き彫りになった。就学・就職の状況は、高校在学が34.9%、中卒後就職が23.5%、高卒後就職が11.5%、中卒後無職が19.3%であった。就労も就学もできていない入居者が全体の25%超にのぼった。 第2に、以上を踏まえつつ関東圏での実態を把握するために、関東4都県の全59施設を対象とした調査票調査を実施し、その報告を行った。ここでも「本人がこれまで経験・直面したこと」として「養育者からの虐待」が80%と最も多かった。学歴は、中卒者が11%、高校中退が29%であり、進学を希望していない者は51%だった。収入は「5万円以上10万円未満」が33%と最も多く、雇用形態は「臨時雇用・アルバイト」が60%だった。心身の健康について、支援が必要でないは43%、必要は56%であった。複合的な要因から不安定な状態に置かれた若者たちの存在を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の進捗は、おおむね順調に進んでいると考えている。既存の自立援助ホーム全国調査および独自に実施した関東圏の調査により、自立援助ホームの現代的特性が明らかになってきているからである。たとえば、入居者の年齢は10代の後半が多く、また、「本人がこれまで経験・直面したこと」には「養育者からの虐待」が80%と最も多かった。そのようななか、心身の健康については、「支援が必要」と回答のあったもののうち、「精神保健上の疾患、障害、症状や問題がある」が24%、「知的障害、発達障害がある」は18%だった。今後本人が自立をしていく上での課題と必要な支援については、①学校・就学、②就労、③金銭に関する課題、④生活に関する課題、⑤家族に関する課題、⑥非行・犯罪、⑦性に関する課題、⑧精神・心理に関する課題などがあげられた。以上の点から、本人が抱える課題の複合性が指摘できる。不適切な養育環境といった背景とともに、障害特性、生活管理の困難、また就学機会・就労機会の相対的な剥奪等が複合的に交差し課題が生じている現実が見て取れる。 なお入居経路は、家庭からの入居が増えており、非社会的養護≒潜在的社会的養護層として認識しなければならない現実がある。これらは社会的養護の制度枠組みでは対応しきれない谷間の問題であり、潜在的なニーズの存在に目を向けなければならないことが明らかになっている。自立援助ホームという、生活を軸とした環境のなかで、多様なニーズを受けとめる支援が必要となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、本研究が対象とする「自立援助ホーム」の理解について、いくつかの関心の向け方が考えられる。第1に、社会政策学的関心であり、自立援助ホームをめぐる「政策はいかにあるべきか」を考察する視点である。第2に、社会福祉学的関心であり、自立援助ホームにおける「援助はいかにあるべきか」を考察する視点である。第3に、社会学的関心であり、自立援助ホームにかかわる人びとが「どのような生を送っているか」を認識・考察する視点である。これらの3点は相互に関連しており、その相互作用から政策・援助・実態の認識を深め、考察していくことが求められる。 本研究はこれまで、上記の3点を相互に行き来するかたちで調査研究を進めてきた。とりわけ昨年度は、第2の視点に重きを置きつつ、統計的な把握の方法によって自立援助ホームの支援のあり方に関する調査を行った。今後は、第3の視点である社会学的な関心に基づいて、自立援助ホームの実態把握に努めて行きたいと考えている。特に、当事者である若者たちがどのような経験世界を生きているのか、また職員・支援者がどのような意識をもち葛藤を抱いているのかを、インタビュー調査やフィールドワーク調査によって、直接的なナラティブを拾い上げたい。そうすることで、支援・援助という枠組みから理解するだけでなく、人びとが持つ経験の意味の理解・解釈を行う。 そのため、今後は各地の自立援助ホームへの訪問を中心に、当事者、職員、支援者への質的な調査研究を展開する。そうした現象把握を踏まえ、今後、社会政策学的、社会福祉学的な考察へと発展させていきたいと考えている。
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Report
(2 results)
Research Products
(2 results)