マルチスプリングモデルを用いた制振構造物の耐震性能評価法の構築
Project/Area Number |
21K04333
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 23010:Building structures and materials-related
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
森 保宏 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (30262877)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2021)
|
Budget Amount *help |
¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
|
Keywords | 履歴ダンパー / 制振構造物 / 性能設計 / 累積塑性変形倍率 / 最大変形量 / 確率論的地震ハザード / マルチスプリングモデル / 超過確率 |
Outline of Research at the Start |
極めて稀に発生する大地震に対して建物の機能性保持能力を向上する手段の一つである履歴ダンパーを設置した制振構造物を対象に,地震の発生や地震動特性の不確定性,個々の建物の構造特性考慮しながら,ダンパーや構造物全体の耐震性能を確率論的尺度によって評価する手法を提案し,実用的な耐震性能評価法の枠組みとして構築する。耐震性能水準の定量的表現によって制振構造の費用対効果が明確となり,その採用の動機付けとなるだけでなく,長寿命化を見据えた良質な社会ストックの形成にも貢献できる。
|
Outline of Annual Research Achievements |
履歴ダンパーを設置した制振構造物(以下,制振構造物)の設計・性能評価には,その要求性能として供用期間中にダンパーに生じうる最大変形量と累積塑性変形倍率の確率特性が必要となる。地震時における弾塑性多層骨組の各層の最大層間変形角を簡易にかつ精度よく評価する方法として,申請者はこれまでに, Inelastic Modal Predictor (IMP) を提案している。IMPは応答スペクトルによるモーダルアナリシスを,一次モードについてのみ弾性スペクトル変位応答を等価な弾塑性一質点系の最大変位応答に置き換えると共に,降伏後の振動モードの変化を考慮することで塑性域まで拡張をしたものである。助成研究初年度は,この手法を制振構造物に適用するために,履歴ダンパーは早期に塑性化することから,すべてのダンパーが塑性化したものとして固有値解析を行い,ここから二次以上の「弾性」振動モードを評価することで,高次モードの影響も考慮した履歴ダンパーの最大変位応答評価法の精度向上を図った。また,等価な弾塑性一質点系であるMSモデル(マルチスプリングモデル,現在までの達成度参照)の最大変位応答を,Tri-linear型復元力特性を有する一質点系の簡易応答評価手法である固有周期依存型スペクトル強度を地震動強さとする評価法を用いて精度よく評価できることを示した。
制振構造物の減衰が0の場合,ダンパーが吸収するエネルギー量は,各次モードの吸収エネルギーの重ね合わせにより評価できうることから,高次モード応答にも等価なMSモデルを用いることで高次モードによるエネルギー吸収も考慮したダンパーの累積塑性変形倍率の簡易評価法を提案し,各次モードと等価なMSモデルの時刻歴応答解析結果を重ね合わせて評価した各層のダンパーの累積塑性変形倍率は,骨組モデルの時刻歴応答解析から得られる累積塑性変形倍率と概ね一致することを示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,制振構造物の耐震性能設計を実現するために,地震の発生や地震動特性の不確定性,個々の建物の構造特性考慮しながら,ダンパーや構造物全体の耐震性能を確率論的尺度によって評価する手法を提案し,さらに実用的な耐震性能評価法の枠組みとして構築することにある。履歴ダンバーの変形は層間変位のみに依存していることから,申請者はこれまでに,架構と各層のダンパーをそれぞれ一つの弾塑性せん断バネに置換し,それらを並列に並べた1質点系モデル(MSモデル)を提案している。本研究では,MSモデルを用いることを念頭に,建設地点での確率論的地震ハザードを考慮しながら下記の3つの評価法の開発に取り組み,その成果を統合することで制振構造物の実用的な耐震性能評価法を構築する。 ① 制振構造物の各層の最大層間変形角および各層のダンパーの最大変形量の評価法 ② 高次モード応答を考慮した各層のダンパーの累積塑性変形倍率の評価法 ③ 各次振動モードに対応したMSモデル内の各せん断バネの累積塑性変形倍率の評価法 助成研究初年度は,①および②について研究を進め「研究実績の概要」に示す通りの成果を得た。制振構造物の設計・性能評価に必要なこれらの確率特性の評価のうち①については,申請者らがこれまでに提案している,塑性化後の振動モード形が塑性化の程度によって大きく変化することによって複雑な形状となる超過確率の分布を,3つの超過確率に対応する応答値で等価な移動対数正規分布に近似して評価する手法が適用できる。一方,②については,課題③を解決した後,確率論的地震ハザードに基づき各地震動モードに対応したMSモデル内の各せん断バネの累積塑性変形倍率の確率特性を評価し,さらにこれらの和として評価される各層の履歴ダンパーの累積塑性変形倍率の評価することとなる。以上の理由からおおむね順調に進展していると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
最大応答の評価の際には,高次モード応答を弾性応答で近似評価しても十分な評価精度が得られたが,累積塑性変形倍率は塑性化を考慮しなければゼロになってしまうことから,これを考慮する必要がある。そこで,最大応答の評価の際に用いた1次モードと等価なMSモデルに加え高次モードと等価なMSモデルを用い,各次MSモデル内の各せん断バネの累積塑性変形倍率の評価方法として,次の2つの手法を検討する ① MSモデル内の各せん断バネの最大変形量はTri-linear型復元力特性を有する一質点系の簡易応答評価手法である固有周期依存型スペクトル強度を地震動強さとする評価法を用いて精度よく評価できることから,この最大変形量から累積塑性変形量を推定する。 ② 最大変形量と累積塑性変形量の関係についての研究は,これまでにもいくつかなされているが,その有効性には少々疑念があることから,地震動毎の弾性エネルギー応答スペクトルからMSモデルのエネルギー応答を評価し,ここから履歴エネルギー応答,さらにはこれをモデル内の各せん断バネのエネルギー応答へと分配し,累積塑性変形倍率を評価する。なお,履歴エネルギー応答はエネルギー応答における粘性減衰エネルギーと履歴エネルギーとの比から評価することとなるが,この比は最大変位応答の関数として評価できると考えている。
このようにして各層の累積塑性変形倍率の評価法を開発したのち,その確率特性の評価手法を検討する。エネルギー応答スペクトルは速度応答スペクトルによって近似評価できることからその超過確率を用い,最大変位応答の評価の場合と同様に3つの超過確率に対応する応答値で等価な移動対数正規分布に近似して評価する手法が適用できると考えている。
|
Report
(1 results)
Research Products
(1 results)