太平洋サケ養殖種苗の自発的ソーティング手法ならびに適苗性評価手法の開発
Project/Area Number |
21K05724
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 40030:Aquatic bioproduction science-related
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
棟方 有宗 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (10361213)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 宗敬 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (90431337)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | サクラマス / シロサケ / 自発的行動 / サロゲート / 水温 / 行動 / セルフソーティング / 肥満度 / 体サイズ / サケ科魚類 / 太平洋サケ / 種苗生産 / 成長ホルモン / インスリン様成長因子 / 種苗選抜 / ホルモン |
Outline of Research at the Start |
サクラマス(ヤマメ)やシロサケといったサケ科魚類の資源が川・海で減少している。ダムなどの河川横断工作物や海域の水温上昇が遠因とされるが、環境が戻り、天然資源が回復するまでの間、これらの資源を種苗放流で下支えすることも必要と考えられる。また、その際には生産した種苗の中から放流環境に適した個体を選抜・放流することで生産コストの削減や環境への負荷を抑える技術も重要となる。本研究ではサケ科魚類の自発的行動によって種苗を選抜する(セルフソーティング)手法、ならびに選抜種苗の適性を行動・生理学的に評価する手法を開発する。
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Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、シロサケならびにサクラマスの稚魚の中から低・高水温環境を選好する個体を稚魚の自発的行動に基づいて選抜する方法(セルフソーティング手法)を検討した。左右で温度勾配がある水温選択水槽を用いてシロサケの稚魚にセルフソーティングをさせたところ、前年度同様、低水温水槽を選択した稚魚は体長、体重が大きく、肥満度が小さくなる傾向を示した。このことからシロサケは体サイズ依存的に低・高水温を選択する性質を備えることが示唆された。また、シロサケはある体サイズを超えると温度の高低に依らず、低密度の水槽を選択する傾向も見られた。これらの結果から、シロサケは水温選好性、ならびに密度効果によって稚魚期の定位位置を決定する可能性が高いと考えられた。 サクラマスについても同様の水温選択実験を行ったところ、シロサケとは反対に、高水温水槽を選択した稚魚の体長、体重が大きく、肥満度が小さくなる傾向を示した。また、これらの実験魚に個体識別が可能なPITタグを装着し、低・高水温選択群を同一の水槽で数か月間にわたって飼育したところ、高水温選択群からは低水温選択群よりも高い頻度で銀化魚(スモルト)が出現することも判明した。 また、同じくサクラマスの天然魚由来稚魚にPITタグを装着し、実験河川内に放流したところ、実験河川内の上流にとどまった個体は川を降った稚魚よりも肥満度が高いことが明らかとなった。以上の結果から、サクラマスにおいてはセルフソーティング実験で高水温水槽を選択した個体と実験河川内で降下行動を発現した個体は同じ性質を有している可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度と今年度の研究によって、シロサケとサクラマスにおいて体サイズ依存的な水温選択性が見られることについて、再現性を得ることができた。すなわち、シロサケでは高水温選択群の体長、体重が大きく、肥満度が小さいこと、またサクラマスでは高水温選択群に同様の傾向が見られることが明らかとなった。また、シロサケにおいては体サイズ依存的な水温選択行動だけでなく、成長に伴って密度効果による移動も発現する可能性が示された。また、サクラマスにおいては、水槽実験だけでなく、実験河川における行動追跡実験においても同様の体サイズ依存的な河川内回遊行動が発現することを示した。 以上の結果を踏まえると、シロサケは主に体サイズ依存的な水温選好性と密度効果によって自身の定位場所を選択し得ることが示され、今後のフィールド研究にも繋がる新たな知見が得られたと考えられる。また、種苗生産の現場においてはこれらの知見を踏まえて、セルフソーティング、あるいは稚魚の体サイズに応じて低・高水温選択性を有する稚魚を選抜し、効果的な種苗放流技術を開発できることが示された。 また、サクラマスに関しても同様に体サイズに応じて低・高水温選好性を有する稚魚や銀化変態や降海回遊を起こしやすい稚魚を選抜し得ることが示され、概ね本研究の計画目的を達成する成果が得られたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までに開発したセルフソーティング手法によって、我が国の重要サケマス資源であるシロサケ、ならびに希少種でもあるサクラマスの低・高水温選好稚魚を選抜(セルフソーティング)する基礎的手法を開発することに成功した。そこで、次の段階ではこうして実験水槽でセルフソーティングさせた稚魚、あるいは特定の体型を持つ稚魚を人為的に選抜し、その後の成長過程や、浸透圧調節機能、銀化変態といった形質がどのように発現するかをさらに解析することが期待される。またサクラマスにおいては上記の手法で選抜した稚魚を実際のフィールドに放流した後の行動をPITタグ等によって追跡することなどが期待され、将来的には近年、資源が低迷しているこれらのサケ科魚類の新たな増殖法の開発と確立に結び付くと考えている。
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Report
(3 results)
Research Products
(13 results)