ソーシャル・ビジネスとしての観光の日韓比較-地域活性化と利益享受の実相に着目して
Project/Area Number |
21K12461
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 80020:Tourism studies-related
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
崔 載弦 東海大学, 観光学部, 准教授 (10806251)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山川 拓也 流通科学大学, 人間社会学部, 准教授 (30788485)
中尾 公一 金沢星稜大学, 経済学部, 准教授 (60807098)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | ソーシャルビジネス / 旅行業の社会性 / 便益の地域還元 / 公正旅行 / 住民参加 / ソーシャル・ビジネス / 観光 / 地域活性化 / 韓国 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、観光商品の造成に関わる事業者、消費者、行政・DMOが、各々、社会性を謳った活動の中で、どのように地域住民に具体的な利益をもたらしてきたのかを、関係者への聞き取り調査等に基づく定性調査により、日本の「地域貢献」型の観光事業と韓国の「公正旅行」と比較し、追究する。
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Outline of Annual Research Achievements |
23年度の研究実施計画に基づき、調査の範囲を、旅行事業に係る周辺のステークホルダーに広げて実施した。その目的は、本研究の主要なRQである、観光・旅行事業の地域社会に対する直接的な貢献の有無、及びそのための仕組み等をより具体的に検証するためであった。調査の対象と内容は、まず、国内では、石川県の温泉地振興における非営利組織の役割と貢献の実態について調査した。また、兵庫県加西市の地元の酒造業や農業者らとの連携を図りながら高付加価値な観光プロダクト開発に取り組む事例、「校外学習」を通じて地域の価値創造と新たな気付きの提供に取り組んでいる茨城県水戸市の旅行事業者、地域密着型観光事業(宿泊施設等)を通じて社会の課題解決に取り組む日韓の連携事業者のケース等を対象にした。そのうえで、これらの取り組みに関わりを持つ地域住民等に対し、その後の影響や変化等に関する聞き取りを行った。次に、海外においては、観光・旅行に係る全てのステークホルダー間の公正な取引と便益の配分に主眼をおいて活動する旅行事業者にヒアリングをしたうえで、地域社会に大きな影響力を持つ現地事業者や関係者に対して、関係性や取り組みを聞いた。 調査の結果、既述の各ステークホルダーに対する公正な取引と便益享受の仕組みづくりや努力という観点において、旅行事業が持つ社会性、または社会性の追求の所存を確認することができた。しかし、営利追求の経営的側面と社会に貢献するという社会的価値の同時追求は、必ずしも容易ではないことが分かった。研究成果のうち、非営利組織と地域活性化における役割に関しては論文として公開した。また、地域の固有資源を活用した観光価値創造や地域社会の関わり方等については、学会の研究発表等を通じて公表している。また、これらの成果の一部を韓国で開催された持続可能な観光まちづくりをテーマとする国際フォーラム(招聘)において講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
23年度は、予定以上の調査や知見を得ることができたが、しかしながら、当初の計画に比べると全体的に「やや遅れている」状態であり、最終年度となる24年度にはより活発な本研究調査を進めたいと考えている。やや遅れている理由とこれまでの進捗状況は次のとおりである。 本研究の初年度(2021年)と次年度は、新型コロナウィルス感染症の拡大により、当初予定していた遠距離の移動や宿泊を伴う実地調査が行えず、既存の研究や理論の整理などの限定的な基礎研究であったが、移動の制限がほとんどなくなった2023年度においては、予定を上回る調査を行うことができた。 具体的には、まず、本研究の対象となる事業者を選定し、事業者側の取り組みや理念等についてヒアリングを行ったうえで、各ステークホルダー(主に事業者にとってはクライアントの立場になるもの)がそれらの取り組みに対してどのような関わりを持ち、どのような評価をしているかを確認することができた。それが、茨城県水戸市を中心に活動する旅行事業者と、それらの事業活動の一部のクライアントに対するインタビューである。また、海外の事例調査では、韓国で公正旅行を営む複数の旅行事業者に対して調査を行った。韓国の調査では、社会的企業とも称される公正旅行事業者の各社を訪問し、長時間にわたりインタビューを実施した。また、小規模でありながらも地域住民の多くが自らの観光事業(主に民宿等)を営むことで地域観光の一プレイヤーとなっている地方都市を訪ね、実際に現地で宿泊をしながら、まちづくりにおける観光の役割について調査を行った。この調査では、関係者や住民の話から、観光地の生成と発展、成長に至る過程で起きる諸現象や地域社会の関わりについて多くの知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染症が5類相当の感染症に位置づけられ、国内外の移動の制限がほとんどなくなった2023年度においては、それまでやや遅れていた実地調査等を積極的に行った。やむなき状況により研究期間を1ヵ年延ばすことになった本研究課題は、24年度をもって最後の年となる。24年度においては、これまでの理論研究、ならびに実地調査で得られた結果をまとめると共に、追加調査等を実施する。 24年度の具体的な計画として、①本研究で究明しようとした旅行、または旅行業(その仕組みを含む)が追求する社会性、すなわち観光に関わるステークホルダーの共益を実現するための社会的役割とは何かについて理論構築を行う。②また、旅行業の社会性を実現するために、どのように仕組みづくりや取り組みが必要であるがを具体化する。③そのうえで、これまでの調査で見えてきた旅行業が追求する社会性の限界、すなわち事業としての旅行業と社会的役割としての旅行業の姿を共鳴と乖離を明瞭にしたうえで、近年旅行業において徐々に浸透され始めている社会的責任や社会性の在り方について展望する。
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Report
(3 results)
Research Products
(10 results)