復員軍人の「心の中の戦争」―精神科診療録の分析と家族への聞き取りによる可視化
Project/Area Number |
21K12909
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 01080:Sociology of science, history of science and technology-related
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中村 江里 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 准教授 (20773451)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
|
Keywords | 戦後日本 / トラウマ / 患者と家族の歴史 / 未復員 / 精神医療アーカイブズ |
Outline of Research at the Start |
近年、戦時中の軍事精神医療に関する研究は著しく進展してきたが、精神を患った旧軍人の戦後に関してはほとんど明らかになっていない。本研究では、(1)戦後長期間にわたって国立療養所で療養生活を送っていた「未復員」と呼ばれる人々の診療録の分析、(2)精神の不調を抱えながらも、長期入院や医療そのものの対象とはならなかった旧軍人の家族へのインタビュー、(3)学際的・国際的な研究交流の促進を行う。 これらを通じて、戦争によって心を病んだ個人の歴史に焦点を当てるとともに、彼らを取り巻く家族や地域コミュニティ、戦後の日本社会全体に戦争が及ぼした長期的な影響を明らかにすることを目指す。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、第一に、戦争という大規模暴力が個々の旧軍人の精神や家族との関係、彼らを取り巻くコミュニティ、ひいては戦後の日本社会全体に及ぼした長期的な影響を明らかにすることである。第二に、敗戦や非軍事化という大きな変化が、心を病んだ旧軍人に対する周囲の対応や当事者の意識にどのような影響を与えたのか(与えなかったのか)を明らかにすることである。 2022年度は、まず復員兵の家族へのインタビュー調査が大きく進展した。復員兵の家族会による初めての証言集会やメディア報道を通じてインタビュー協力者を募集したところ、これまでになく反響があり、15名の方にインタビューを行うことができた。 第二に、2021年度に行った、戦後日本におけるトラウマの長期的影響に関する学際シンポジウムは継続を望む声が多かったため、2022年もオンラインの連続シンポジウムを3回行った。今年度は全ての回を一般公開にしたため、昨年度と比べて参加者は大幅に増加し、のべ253名が参加した。また、海外からの一般参加者も増加し、今年度は韓国やオーストラリアを拠点とする研究者にも報告やコメントでご参加いただき、アジア・太平洋地域の研究者とのネットワーク構築を進めることができた。 第三に、診療録調査については、電子化作業を終了し、病名、生年月日、階級、発病地、入退院日、治療日数、転帰、原職、留守担当者、傷痍疾病等差などの基礎的なデータ入力が完了した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一に、復員兵の家族へのインタビューについては、これまで新型コロナウイルスの影響で慎重に進めざるを得なかったが、家族会の協力やメディア報道の反響もあり、当初の計画以上に進んでいる。 第二に、学際的・国際的な研究交流の推進に関しても、当初の計画以上の成果を挙げることができた。2022年度、2023年度と学際シンポジウムは継続的に行われており、2021年度のシンポジウムの記録は2023年4月に書籍としても刊行される。 第三に、上記二点が計画以上に進んでいるため、診療録調査に関しては対象を限定せざるを得ないが、こちらも着実にデータ収集を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
復員兵の家族の証言は、本研究の双方の課題に関わり、研究の進展も見込まれるため、2023年度は、彼らへのインタビュー調査を優先的に進める予定である。 第二に、学際的・国際的な研究交流の推進については、2023年度もシンポジウムの開催を予定しており、とりわけ戦争のトラウマが地域コミュニティに与えた影響に焦点を当てて考察を深める予定である。 第三に、診療録調査に関しては、現在基礎的なデータ入力が終了している資料群について、量的な調査を行った上で、敗戦前後の診療録を比較し、敗戦や非軍事化を患者や医師がどのように主観的に捉えていたかということや、診療録の記入の仕方、患者と医師・家族との関係のあり方、患者の自己認識に変化はみられるかなどを明らかにする。
|
Report
(2 results)
Research Products
(11 results)
-
-
-
-
-
-
-
-
[Book] Traumatic Pasts in Asia2021
Author(s)
Mark S. Micale, Hans Pols, Harry Yi‐Jui Wu, Eri Nakamura, Ran Zwigenberg, Jennifer Yum Park, Narquis Barak, Vannessa Hearman, Caroline Bennett, Hua Wu, Dyah Pitaloka and Mohan J. Dutta, Seinenu M. Thein-Lemelson, Saiba Varma, Maki Kimura, Byron J. Good
Total Pages
406
Publisher
Berghahn Books
ISBN
9781800731837
Related Report
-
-
-