皇室への「献上」行為から読み解く近代日本における天皇権威の形成
Project/Area Number |
21K13097
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 03020:Japanese history-related
|
Research Institution | Otemae University |
Principal Investigator |
池田 さなえ 大手前大学, 国際日本学部, 講師 (10781205)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2023: ¥130,000 (Direct Cost: ¥100,000、Indirect Cost: ¥30,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
|
Keywords | 日本近代史 / 近代天皇制 / 社会秩序 / 社会構造 / 献上 / 交換 / 贈与 / 皇室財産 / 政治史 / 地域社会 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、明治期における天皇・皇室への「献上」行為の分析を通して、明治期以降に天皇・皇室が新たな国家的「権威」として社会の中で認知されるようになる過程を明らかにするものである。 具体的には、まず①宮内庁書陵部宮内公文書館所蔵史料を用いて、これまでその全容が解明されてこなかった明治期の天皇・皇室への「献上」行為の広がりを解明(数量的データ解析・公開)する。次に②各府県に残る史料を用いて、個別具体的な「献上」の事例検討を行い、人びとが「献上」を行う動機を解明(「献上」の質的分析)する。 このような分析を経て、最終的には、天皇・皇室研究の究極の目的である、「近代天皇制国家」の新たな理論構築を目指す。
|
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、①前年度の研究成果の公表、および②新たな研究のための史料調査を行った。 ①は、前年度収集した史料をもとに、研究会報告を行なった(7月23日、象徴天皇制研究会、Zoom開催)。研究会では、研究代表者が主に使用した宮内庁書陵部宮内公文書館所蔵「恩賜録」等の史料では行幸時になされた献上事例を拾えないため、宮内公文書館所蔵「幸啓録」や『太政官期 地方巡幸史料集成』(我部政男ほか編、全8巻、柏書房、1999年)等の史料も検討する必要があること、宮内公文書館所蔵「例規録」等の簿冊を用いて「献品取扱内規」の制定過程を解明する必要があること、宮内省側が献上の論理を「選び取っていた」と言うためには、採択された献上のみならず採択されなかった献上についても分析すべきこと、などが指摘された。ここでの指摘を受け追加調査を行った後、論文化し、取り扱う時代を勘案して明治維新史学会会誌『明治維新史研究』に投稿した。 ②本研究課題で行う予定であったもう一つの課題である、採択されなかった献上事例を検討するため、昨年度に引き続き明治期の政治家私文書の収集を進めた。まず既に公刊されている『品川弥二郎関係文書』(尚友倶楽部品川弥二郎関係文書編纂委員会編、山川出版社、1992~2017年)を悉皆調査し、品川への伝献依頼の事例をリストアップした。次に国立国会図書館憲政資料室所蔵「品川弥二郎関係文書」の中から、同上書に収録されていない書簡を集中的に収集し、翻刻を進めた。同時に、献上に関する近世史の先行研究調査を進めるとともに、周辺諸分野(文化人類学、社会学等)において交換や贈与などの問題を扱った研究の知見にも目を向け、理論化を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者の基礎疾患と新型コロナウイルス感染症との関係から、遠方での史料調査は感染状況の落ち着いている時期に最小限の時間で行わなければならないという制約はあったものの、遠隔複写・遠隔撮影サービスやデジタル化史料を活用することで目的とする史料はおおむね順調に収集することができた。また、当初予定していた研究報告も実施することができ、論文執筆・投稿という目標はひとまず達成できた。また、期間内に実施する予定であった残りの研究成果公表に関しても、口頭発表・活字化の場を確保することができた。 もちろん、遠隔複写サービスは1年間に利用できる回数が限られるため、当該年度において目的とする史料の全てを入手することはできなかった。しかしながら、未入手の史料は次年度の助成において全て収集可能であり、翻刻作業も含めて研究助成期間内に全ての作業を完了させることが可能と考え、(2)の通りの自己評価とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は研究の最終年度であり、上記「研究実施の概要」①で投稿した論文の査読通過・刊行を確実に遂行すること、および②の研究を完成させ、口頭発表および活字化に向けて最終的な調整を行うこととする。 ①については査読・印刷スケジュールとの関係もあるが、次年度内には査読を通過し、印刷スケジュールに乗せることを最低限の目標とする。②については、笠原英彦編著『天皇・皇室の政治史』刊行プロジェクトにて年度内に一度研究発表を行い、活字化に向けた更なるブラッシュアップを行う計画である。 ②の研究発表のために、第一に未収集の品川弥二郎宛書簡の収集を完了させ、同時に収集済の書簡の翻刻を完了させる。第二に、品川弥二郎と同時期に活躍した他の政治家(伊藤博文、山縣有朋、松方正義、井上馨など)のもとに寄せられた伝献事例も悉皆調査し、リストアップする。このようにして明治期の政治家ごとに書簡からわかる伝献依頼の件数をリストアップし、比較することで、政治家ごとの特徴を析出する。現時点では書簡のまとまって残っている政治家の中で、伝献依頼の割合が最も多かったのは品川弥二郎ではないかとの仮説を立てており、これを検証することがこの過程における課題である。第三に、各政治家に対してなされた伝献依頼リストをもとに、宮内公文書館所蔵「恩賜録」、「進献録」等の公文書と突き合わせて検討し、各政治家に対してなされた伝献依頼のうち採用された献上、採用されなかった献上にはどのような違いがあるのか、その背後にある論理はいかなるものであったかを考察する。
|
Report
(2 results)
Research Products
(14 results)