財団法人二十世紀研究所にみる終戦直後の知識人の協働に関する研究
Project/Area Number |
21K13099
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 03020:Japanese history-related
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
庄司 武史 東京都立大学, 人文科学研究科, 助教 (00609018)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 知識人の協働 / デモクラシーの作法 / 討議と熟慮 / 二十世紀講座「社会学の根本問題」 / 講義録「社会学の話」 / 東北帝国大学講義「社会集団」 / 『社会学講義』 / 二十世紀財団 / 東北帝国大学での社会学講義 / 講義録「社会学の話」から『社会学講義』へ / 共同体から協働体へ / 二十世紀研究所 / 知識人の社会実践 / 社会と社会科学 / 清水幾太郎 |
Outline of Research at the Start |
本研究では終戦直後の知識人集団・財団法人二十世紀研究所とそこに参画した知識人に注目し,研究所の組織や展開した事業,社会への貢献に加え,知識人たちの手記・回想から活動の具体的な様相や限界等を明らかにする。今日,社会が科学に期待する学術分野を越えた協働と,成果の積極的な還元を先駆的に実践した二十世紀研究所の実態はほとんど明らかでない。終戦直後における同研究所と知識人の研究・啓発活動は,社会の要請を汲み応える科学の役割と社会が科学に寄せる期待を基礎とした信頼関係を考えるモデルケースとなり得る。本研究により,多様な立場や見解を擁する知識人の実りある協働に向けた考察へ展開が期待できる。
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Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に沿って,2022年度は二十世紀研究所に実際に参画したメンバーと参画しなかったメンバーの手記・回想・業績等の収集を行い,研究所の個々のメンバーの参画・不参画に至る動機や背景等の検討に取り組んだ。2021年度の研究では申請時に判明していたメンバーが60名から72名に増加したことが明らかにされ、2022年度は増加した12名の資料収集を並行して実施した。2022年度の研究成果の一部は,2023年度に実施予定の学会報告1件,投稿論文1件として準備・執筆中である。 2022年度の研究実績の概要は以下のとおりである。第1に,研究所に実際に参画したメンバーについては,一部,参画に至る動機や背景について触れられた手記や回想等の捜出に至った。それらを総合すると,メンバーのほとんどがアジア・太平洋戦争への反省から,戦後におけるデモクラシーの再構築やその作法の啓発に強い意欲を有していたことがうかがえた。また,そのためには多くの知識人と協働する必要性を感じており,多くの著名なメンバーを擁した二十世紀研究所にひときわ魅力を感じていたらしい様子が浮かびあがりつつある。こうした動機は概ね想定どおりで新鮮さに欠けるものだが,同時に所長清水幾太郎のパーソナリティに惹かれ参画したという例がみられたことは興味深い。2021年度・2022年度の実績を総合すると,二十世紀研究所は資金面,体制面での充実もさることながら,清水に代表されるメンバーの魅力という人材面での充実も他の民間啓発活動を抜きんでた一要因との仮説が浮かび上がりつつある。 なお,2021年度に行った3回の学会報告を2022年度には2本の論文に整理し学会誌・所属機関の学内誌へ各1本ずつ投稿した。学会誌への投稿論文は査読を経て採録が決定し,2023年秋発行の学会誌に掲載される運びである。学内誌への投稿論文は2022年3月に掲載されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度はおおむね順調に進展しているものと評価している。理由は以下のとおりである。 第1に,研究計画に沿って研究所の事業に参画した知識人たち・しなかった知識人たちの手記や回想等史資料の検索・収集を順調に進行できたためである。結果的に,参画しなかった知識人たちの史資料から参画しなかった理由・背景等を見出すには至らなかったものの,参画した知識人たちについては当初の計画以上の成果を見出すに至っている。2021年度の研究は総じて研究所の体制や事業方針といったハード面に焦点をあてたが,2022年度は参画したメンバーの意識に焦点をあてたことにより,研究所の個性をいわばハード・ソフト両面から明らかにし得る材料を充実できたものと考えている。 第2に,史資料の検索・収集が順調に進展したことで,それら史資料からうかがえる研究所への引力の検討に時間を割くことができたためである。史資料によれば,参画した知識人たちの多くがアジア・太平洋戦争への反省や悔恨から,戦後におけるデモクラシーの再構築やその作法の啓発に強い責任意識を有しており,また同様の意識を有する他の知識人たちとの協働を指向したことが,若手からベテランまで,また人文・社会科学から自然科学まで幅広い専門の知識人たちをメンバーに擁した研究所にひときわ魅力を感じていたらしい様子が浮かびあがりつつある。また,所長の清水幾太郎のパーソナリティに惹かれ参画したという例がみられたことも興味深い結果であった。 第3に,2021年および2022年度の研究実績を適切に公表できたためである。「研究実績の概要」欄に記載のとおり,2022年度中に2本の論文(うち1本は査読有)として整理・投稿し,1本は2022年度中に掲載され,1本は掲載決定済である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度の研究計画は,引き続き関係者の文献・史資料収集を継続するとともに,すでに収集した史資料の分析を行い,分野・思想を越えた協働,科学と社会との協働の様相と今日への示唆を整理し,研究所の個性と戦後日本の再興期に果たした役割を明確に提示することである。既述のとおり史資料の収集については計画より順調に進展していると考えられるため,整理と分析に十分な時間をあてる予定である。とりわけ,本研究課題の端緒であった公文書資料の分析をもととした研究所事業のいわば建前の様相だけではない,メンバーの内的な事情という属人的な側面への照射から浮かび上がるであろう研究所の個性は本研究課題の焦点であるので,その点にとくに注力する予定である。また,戦後に立て直すべき人間の主体性をめぐって交わされたいわゆる主体性論争を念頭に,戦争に対する強い忌避感とデモクラシーの再建に向けた責任意識や高揚感の一方,当面,不問に付された社会主義・共産主義との遠近を焦点とするメンバー間の相違が次第に対立へと深刻に変化して,それがやがて研究所事業の停止に接続していく過程も分析していく。なお,2022年度の研究を進めるなかで,研究所に参画しなかった理由や背景等を史資料から明らかにすることは限界がある感触を得たので,その点にかける労力は最小限にしてすでに入手した史資料の整理・分析に注力することとしたい。 最終年度であることを念頭に,これまでの研究実績を適切に整理・分析し,分野・思想を超えた協働,科学と社会との協働の様相を明らかにし,社会における知識人の役割,知識人同士の分野・思想を超えた協働が今日の私たちに示すであろう示唆を明らかにしていく。
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Report
(2 results)
Research Products
(6 results)