Project/Area Number |
21K13132
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 03040:History of Europe and America-related
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
日尾野 裕一 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (80804012)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | 近世イギリス史 / 大西洋史 / 海事史 / 西洋史 / イギリス史 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、18世紀イングランド大西洋世界において、政府と通商利害関係者との間で展開された公益と私益との調整の結果として成立した通商活動奨励策を対象とする。 事例としては1705年から導入された北米産船舶必需品の輸入奨励金を取り扱う。同時代の奨励金制度導入をめぐる議論の中で公益と私益が調整されていくプロセスと政策への反映、奨励金制度をめぐる北米植民地側の反応を分析することで、近世国家において通商奨励による私的利害関係者の経済的利潤と国家の重商主義的貿易振興がどのように調整されたかを明らかにし、経済活動における官民の関係の歴史的推移の一端を示す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題として初めての史料調査を2023年3月にイギリスで実施した。主な史料調査対象はロンドンのThe National ArchivesおよびBritish Libraryであり、主として17世紀から18世紀にかけての植民地産業奨励に関する史料を収集した。その成果を踏まえつつ、2023年5月に日本最大の西洋史関係の全国学会である日本西洋史学会(開催地:名古屋大学)にて個別報告「18世紀初頭イギリス帝国と麻・亜麻生産奨励 」を実施した。 ここでは、以下の3点に着目して18世紀前半のイギリス大西洋帝国における植民地資源利用計画としての麻・亜麻栽培がいかに主張されたのかを検討した。第一に、同時期に麻・亜麻生産とリネン産業が展開されていたアイルランドとの関係、第二に、1700年の大北方戦争の勃発に伴うバルト海情勢の悪化と麻を含む船舶必需品(naval stores)の調達不安、第三に、植民地の毛織物産業抑制論である。帝国諸地域を麻・亜麻供給源として期待するイギリス本国とそれに呼応する植民地側の意図を検討し、17世紀末から18世紀前半にかけての「イングランドにおける資源調達の外部化」と「帝国における資源調達の内部化」の構造を明らかにした。また本報告の内容については学会で得られたコメントなどを反映した上で2024年度中に投稿論文とする予定である。 2023年9月には本研究課題2度目の史料調査をイギリスのThe National Archivesにて実施した。ここでは輸入奨励金と商人の活動との関わりに関する史料を主に収集している。その成果については2024年度中に学会報告もしくは投稿論文にて発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題を遂行する上では海外での史料調査が不可欠であるが、2020年から続く新型コロナウイルス感染症の世界的拡大により、2022年までの研究の進捗は予定とは大きく異なるものとなった。それゆえに1年間の研究年限延長を行った。 しかし、2023年には2度の海外史料調査を実施することができ、その成果については2023年5月の日本西洋史学会でも報告するなど、研究の進捗状況は著しく改善している。 ただし、申請の際には予期できなかった極端な物価の上昇と円安により、史料調査の場所と時間について当初の予定からは大幅に変更せざるを得なくなっている。研究課題の大枠そのものには影響はないものの、アメリカでの史料調査について断念せざるを得ないなど、そのディテールについては様々な点で影響がでている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は本来研究課題の最終年度であったが、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響を鑑み、1年間の年限延長を行った。最終年限である2024年度は収集した史料の整理と分析を重点的な課題とする予定である。特に奨励金をめぐる商人と政府の関係については、2023年9月の史料調査により多様な史料を集めることに成功したため、それを丁寧に読み解き、同時代の通商奨励政策の政治的・経済的・社会的影響を明らかにすることに注力する。
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