Project/Area Number |
21K13499
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 08030:Family and consumer sciences, and culture and living-related
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
酒井 仁美 徳島大学, 技術支援部常三島技術部門, 技術専門職員 (30281166)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,810,000 (Direct Cost: ¥3,700,000、Indirect Cost: ¥1,110,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 小麦 / アラビノキシラン / 大腸菌付着抑制作用 / 食中毒予防 / コムギ / 大腸菌 / 食中毒 / 予防 / 付着 / 非生物素材 |
Outline of Research at the Start |
食品産業分野において食中毒予防は重大事項であり予防のため様々な対策が取られ,研究・開発も進んでいるが,調理器具素材と微生物との付着性に関する研究の中で,穀類成分が介在した時の研究はこれまでになく,申請者の研究により穀類の種類によって調理器具素材に対する大腸菌の付着を促進する成分や抑制する成分が含まれることがわかった。 食中毒予防対策として使用されている現存の薬品は「殺菌」成分を主としたものであるが,本研究課題では穀類に含まれる「付着を抑制する」成分を利用し,食中毒原因菌の初期付着数を抑制するタイプの新しい薬品の開発を試みる。
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Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究から小麦粉水抽出液中に非生物素材表面への大腸菌の付着を抑制する成分が存在し,活性成分が水溶性多糖であるアラビノキシランの65%硫酸アンモニウム沈澱画分(F65)であることを明らかにした。 本研究課題では原因菌を「つけない」ことを目的とした食品由来の安全な食中毒予防薬開発を目的とし,過年度の実験結果においてF65の大腸菌付着抑制効果に関する次の結果を得た。1)大腸菌が付着しやすい素材に対し素材表面にF65を付加させると大腸菌の付着を抑制する。2)ガラス素材表面にF65を付加してから4℃,25℃,37℃で32週間保管しても効果は維持されている。3)F65を付加したガラス素材表面を中性洗剤で1回洗浄すると効果が半減したが,5回洗浄した後でも効果は認められた。アルカリ性洗剤では1回洗浄後に効果は約半分に減少し,5回洗浄後には効果は認められなかった。4)表面に傷の入ったガラスでは効果が確認できたが,ポリプロピレンでは素材表面に傷がつくことによって大腸菌が付着しやすくなり,F65を付加しても効果は認められなかった。 2023年度は,F65と他の抗菌・殺菌成分との共存について調べた。殺菌成分3種,市販の殺菌剤3種,市販の洗浄剤12種(アルカリ性2種,中性5種,弱酸性5種)の計18種にF65を添加し,これらに大腸菌の付着抑制作用を付加できるかどうかについて調べた。殺菌剤や洗浄剤にF65を添加した時の大腸菌付着抑制効果は,今回調べた18種の殺菌剤および洗浄剤において,1種類の弱酸性洗浄剤を除き、F65の添加はガラス素材への大腸菌付着抑制効果を認めた。また,3種の殺菌剤にF65を添加した時,殺菌剤の殺菌作用は阻害されていなかった。 以上の結果から,F65を殺菌剤や洗浄剤に添加することで,器具などの殺菌や洗浄と同時に素材への細菌の付着を抑制できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2023年度の計画であるF65と他の抗菌・殺菌成分との共存について調べる実験が順調に進んだため,追加として非生物素材表面の液体親和性について調べる実験を行うことができた。得られた結果は以下のとおりである。 これまで行ってきた実験のなかで,F65を素材表面に付加させると素材表面の液体親和性に変化があることを目視で確認していた。そこで,F65を付加する前後の素材表面の接触角を測定することにより液体親和性の変化について調べた。その結果,大腸菌の付着しやすい素材は接触角が小さく疎水性が低く,大腸菌の付着しにくい素材では接触角が大きく疎水性が高かった。疎水性の低い素材表面において,F65が付加されると疎水性が高くなり大腸菌が付着しにくくなることがわかった。このことは,F65の大腸菌付着抑制作用のメカニズムのひとつであることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験結果から,身の回りで日常的に使用されるガラス類,金属類,プラスチック類のうち大腸菌が付着する素材に対して,F65を素材表面に付加させると素材表面への大腸菌の付着を抑制し,その効果はF65を付加させてから4℃,25℃,37℃で32週間保管した後でも維持され,既存の殺菌剤や洗浄剤にF65を添加しても殺菌作用を阻害することなく大腸菌付着抑制効果を発揮することがわかった。 これらのことから,F65は「つけない」ことを目的とした細菌性食中毒の予防薬としての利用が期待される。今後は,当初の計画通り活性成分の素材への付加方法について検討を行う。 これまでの実験では素材を水溶液に浸漬することで活性成分を付加させてきたが,浸漬できない部位への付加や簡便な使用法として,噴霧や塗布で成分を付加させることを想定している。噴霧や塗布で使用する際に適する濃度や効果を発揮するまでの時間について調べ,食中毒予防への応用に向け検討を行う。 本研究課題では食中毒菌原因菌として大腸菌での実験を計画したが,他の原因菌として緑膿菌やブドウ球菌などに対する効果についても検討を行いたい。
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