Project/Area Number |
21K18904
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 30:Applied physics and engineering and related fields
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中村 一隆 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (20302979)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2021: ¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
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Keywords | コヒーレントフォノン / 偏光制御パルス列 / フェムト秒 / コヒーレントフォオン / アト秒 / アト秒精度 / 量子コヒーレンス / フォノンエコー / デコヒーレンス |
Outline of Research at the Start |
量子コヒーレンスは、量子コンピュータや量子通信などの次世代量子技術のキーアイテムである。しかし、バルク固体中における量子コヒーレンスの保持時間は非常に短く、その定量的な評価は困難である。本研究では、独立して偏光を制御したフェムト秒パルス列を用いることで、フォノンエコーをポンプ・プローブ時間分解計測する方法を開発し、量子系や観測光の不均一広がりの影響を排除して、フォノンの量子コヒーレンス時間を計測し明らかにすることを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
2022年度までに整備した計測システムを用いて、コヒーレントフォノンの計測と制御の実験を行った。この装置では、偏光制御した2つのポンプパルスと2つのプローブパルスを用いた過渡反射率(透過率)計測が可能である。研究の主目的である、エコー配置でのコヒーレントフォノン計測はダイヤモンドを試料として、40THzの光学フォノン振動測定を行い、4パルスの間隔に依存したフォノン干渉を計測できた。また、シングルパルス励起でダブルパルスプローブする測定では、偏光角度が平行の場合と直交する場合では、位相が逆転した干渉が観測できた。 ダイヤモンド以外の試料として、GaN、WeSe2、イオン照射グラファイトを用いた計測も行った。GaNでは、4THzと17THzのEgモードのコヒーレントフォノンが計測でき、ダブルパルス励起の実験ではパルス間隔を制御することで、フォノン強度を制御できた。平行偏光条件で4THzモードが増強されるポンプポンプ遅延時間において、直交偏光では4THz振動が抑制され17THzモードが増強される結果を得た。WSe2を用いた測定では、7.5THzの強いコヒーレントフォノン信号が観測された。フーリエ変換を行うと、7.5THzに加えて強度の弱い4.0THzと11THzのピークも確認できた。中心波長が750nmのバンドパスフィルターを用いた波長分解計測で、コヒーレントフォノン強度が強く見えることが分かった。イオン照射したグラファイトのコヒーレントフォノン計測では、約1.3THzのグラファイト面間振動モードの振動数と寿命がイオン照射量によって変化することを観測した。 サブ10fsレーザー装置を用いたシステム以外にも、光音響変調器を用いた2次元コヒーレント分光装置にチャープ補償光学系を整備し、約60fsのパルス励起でのGaAs/AlGaAs量子井戸サンプルのエキシトン振動の計測も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、偏光制御したフェムト秒パルス列を用いたポンププローブ型のフォノンエコー計測法を開発し、フォノンデコヒーレンスの計測を行うことである。実験に必要となる偏光角度および相対位相を制御した4パルスの発生と、それを用いた過渡反射率(透過率)計測システムを構築できている。2つのポンプパルス列および2つのプローブパルス列の時間間隔はアト秒の精度で制御できることを第二次高調波発生を用いた相関計測により確認している。このシステムを用い、選択的に制御したパルス列を用いたコヒーレントフォノン計測と制御の研究を行っている。ダイヤモンドを用いた実験では、2ポンプ+1プローブおよび1ポンプ+2ポンプの実験で、コヒーレントフォノンの制御の偏光角度依存性が明らかになっている。また、4パルスを用いた、コヒーレントフォノン計測も実現しているが、シグナル干渉形状が複雑なため、詳細な解析に想定以上の時間を要している。 開発したシステムを用いて、GaN, WSe2、イオン照射グラファイトのコヒーレントフォノン計測と制御にも成功している。開放量子系の考えに基づいたデコヒーレンス解析を、コヒーレントフォノンに応用し、リンドブラッド型量子マスター方程式を用いた数値計算ができるようになっている。結合フォノン系でのデコヒーレンス速度計算や、エントロピー計算もできるようになり、フォノンデコヒーレンス過程の理論的解析も進んでいる。 サブ10fsレーザー装置を用いたシステム以外にも、光音響変調器を用いた2次元コヒーレント分光装置にチャープ補償光学系を整備した。これにより、コヒーレントフォノン励起も可能な約60fsのパルス励起を可能にし、GaAs/AlGaAs量子井戸サンプルのエキシトン振動の計測も行うとともに、フォトンエコーが起こる場合のデータ解析を行い、フォノンエコーとの比較を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
ダイヤモンドを試料して4パルスを使ったコヒーレントフォノン計測データの解析を引き続き行う。解析のために、必要に応じて、ポンプパルス対間隔とプローブパルス対間隔との相対間隔を変化させた計測も行い、解析の手がかりすることも予定している。また、理論解析として励起過程とプローブ過程全体を通したモデルでの解析も試みる。これまで用いてきたガウス関数型のパルス幅を用いた計算では非常に計算が複雑になるために、パルス幅を短いと仮定するインパルス近似を用いた計算も試みる。また、4パルス実験だけでなく、1ポンプ+2プローブによるダイヤモンド光学フォノンの計測と制御についても、成果をまとめて発表を行うようにする。 また、構築したシステムを用いGaNやWSe2を試料として計測したコヒーレントフォノンのデータの詳細な解析を行い、振動数やフォノンデコヒーレンス速度を求め、学会での発表を行うとともに論文として国際誌に投稿できるようにする。その際、必要に応じて追加の実験を行う。 2次元コヒーレント分光システムを用いた、極低温下におけるGaAs/AlGaAs量子井戸サンプルのエキシトンのデコヒーレンスの計測も引き続き行う。このシステムでは、反射光の分光測定によりエコー信号情報を得ている。これは、コヒーレントフォノン計測における波長分解計測との関係があるため、波長分解シグナルにおけるエコー信号寄与についての考察も行う
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