Project/Area Number |
21K19675
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 58:Society medicine, nursing, and related fields
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
奥田 貴久 日本大学, 医学部, 教授 (20620305)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鉄 堅 日本大学, 医学部, 講師 (40277439)
近藤 真啓 日本大学, 歯学部, 准教授 (50312294)
橋本 悟 大分大学, 理工学部, 客員研究員 (60352150)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
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Keywords | ロングリードシークエンサー / ナノポアテクノロジー / 個人識別 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、犯罪捜査や多数死体、遺骨鑑定で問題となる「混合試料からの個人識別」におけるロングリードシークエンサーの有効性を探索的に研究することを目的とする。法医鑑定の個人識別ではキャピラリー電気泳動によるSTR型検査が主流であるが、本研究では、PCRによる増幅バイアスのない全ゲノムDNAの直接ロングリードシークエンスを実施し、ショートリードと比べて遙かに長いシークエンスデータを得ることで、ショートリードでは予測精度が低かったハプロタイプ解析の正確性向上に挑戦する。そして、簡便ながら多量の情報を得ることができる第3世代シークエンス技術であるナノポアテクノロジーの個人識別への応用の可能性を探る。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、第3世代シークエンサーであるMinIONを用いてミトコンドリアDNAのサンプル調整、ライブラリー作成、およびテスト分析を行った。MinIONは、タンパク質で形成された微細な穴、すなわちナノポアを通過するDNAを利用するシークエンス技術である。DNAがナノポアを通過すると、電極の間の電流が発生し、塩基ごとに異なる波形を生じる。新型のフローセルではナノポアを通過した際の検知性能が向上している。電流の波形の違いを測定することで、塩基配列を決定している。新型の試薬も同時に用いることで、感度や正確性が向上している。新規の試薬とフローセルを使用し、分析の精度の確認を行っている。また新規の試薬には、新たにBSA(アルブミン, ウシ血清由来)の使用が必要となった。ミトコンドリアDNA全配列解析のため、Long PCRを試みた。最初のPCR試験では、Long PCR kitであるPlatinum Super Fi II DNA Polymerase Mix kit(サーモフィッシャー社製)を用いたが、ミトコンドリアDNAは増幅せず、東洋紡のKOD One174; PCR Master Mix kitに変更した。この研究から、MinION Mk1Cの操作法と新規ライブラリー作成キットの適用により、ミトコンドリアDNA全配列の解析が効率的かつ正確に行えることができるようになった。これにより、ミトコンドリアDNAの詳細な分析が可能となり、さらなる個人識別の進展が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、ミトコンドリアのヘテロプラスミーと塩基の挿入を特定するために、MinION法とサンガーシーケンス法を用いた分析手法を比較した。MinIONにてミトコンドリアDNA(mt.DNA)の全塩基配列を読み取る際に、使用するフローセルR10.4.1とR9.4.1を比較検討行い、以下のような有効な結果が得られた。ヘテロプラスミーの検出として、MinIONシーケンサーにより、9963番目の塩基配列において、TとCの2つの割合を示す塩基が確認された。サンガーシーケンスでの波形解析により、大小二つのピークが観察され、これによりシーケンスのエラーではなく、ヘテロプラスミーの存在が明らかとなった。塩基の挿入の特定として、MinIONシーケンスにおいて、11,441番目のCと11,442番目のAの間に新たなAの挿入が検出された。最初のサンガーシーケンスではブロード状のピークが1つ観察されたが、新たなプライマーを使用した再シーケンスで2つのピークが確認され、AAと特定された。これにより、初回のサンガーシーケンスの誤りが明らかとなった。その結果、フローセルのR10.4.1からはR9.4.1より高い読み取り精度が得られた。また、MinIONシーケンサーがサンガーシーケンスと比較してよりヘテロプラスミー検出や塩基の挿入等において優れた精度を提供する可能性が示唆された。これによりミトコンドリアDNAを用いた個人識別において、より正確なデータを得られることとなった。一方で、MinIONを用いたミトコンドリアDNAの解析について解析可能であることが判明したが、混合試料となった場合、各々を識別できるのか定かではない。期間を延長し、混合試料の解析についての研究を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、個人識別においてミトコンドリアDNAのみだけではなく、ゲノムDNA内にあるSTR配列を、第3世代シークエンサーであるMinIONを用いて解析を試みることを検討している。方法としては、常染色体、Y染色体、X染色体おける複数のSTR領域の独自のプライマーを作製する。その後PCRにより得られたアンプリコンをMinIONでシークエンスを行う。従来のSTR解析に用いられるフラグメントアナライザーと比較し、MinIONで解析する際のメリットは複数存在する。すなわち、高額な機器や試薬は必要なく、安価で個人識別が行え、独自に設計したプライマーを作成することで、陳旧化などの断片化したDNA試料に対しても解析が行える可能性があり、全ミトコンドリアDNA解析による母系遺伝の識別が可能となることである。このことから劣化試料からの適切なDNA抽出方法の確立、信頼性のあるPCR増幅とライブラリ作成プロトコルの開発、ならびに精度の高いシークエンシングデータ解析手法の確立を目指す。また、効果的なクオリティチェックやフィルタリング手法を導入することで、MinIONを利用したシークエンシングデータからの正確なSTRプロファイルの抽出を目標とする。次の実験段階においては、これらの手法を用いて具体的な解析を実施し、その有効性を検証する予定である。
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