Project/Area Number |
21K19842
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 63:Environmental analyses and evaluation and related fields
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松本 義久 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (20302672)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
権藤 洋一 東海大学, 医学部, 客員教授 (40225678)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
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Keywords | 変異 / 放射線 / ゲノム / 次世代シーケンサ / 次世代シーケンシング / 全ゲノム解析 / DNA修復 |
Outline of Research at the Start |
自然変異、放射線誘発変異の研究においては、外見、薬剤耐性など視認が容易な変化を与える遺伝子に注目した研究(SLT法)が長らく行われてきた。一方、次世代シーケンシング(NGS)を用いた全ゲノム解読(WGS)法は変異の検出効率が飛躍的に上昇するとともに、表現型に反映されない変異も検出可能という利点がある。近年、ヒト、マウスなどの個体レベルでWGS法による変異研究が出てきているが、この方法を単純に培養細胞系に適用することはできない。本研究では、WGS法を培養細胞でも変異解析に適用できる方法の開発を行うことを通じて、次世代変異研究を開拓することを目的とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
自然変異、放射線誘発変異の定量的研究は長年、外見や薬剤耐性などの表現型の変化を与える遺伝子に注目した特定座位(SLT)法によって行われてきた。近年、次世代シーケンシングを用いた全ゲノム解読(WGS)法を用いた変異研究が主に個体レベルで広がりつつある。WGS法はSLT法に比べて4桁から5桁感度が高いことが示されているが、単純に培養細胞系に適用することはできない。本研究は、WGS法を培養細胞でも変異解析に適用できる方法を開発し、全ゲノムを視野に、また、表現型の変化に依存せず、ゲノム配列の変化を捉える次世代変異研究を開拓することを目的としている。 2022年度までの研究で、ヒトリンパ芽球由来TK6野生型細胞から単一の非照射および放射線照射細胞に由来するクローンを取得し、Illuminaプラットフォームを用いたWGSを行った。約300の単塩基置換(SNP)、約2,500の小規模挿入・欠失(Indel)、約2,700の構造変異(SV)が得られた。非照射細胞クローンと放射線(X線1 Gy)照射細胞クローンの間で、これらの新規変異候補数に違いはなく、SNPの内訳ではシトシンからチミンおよびチミンからシトシンへの置換が最も多い傾向が認められた。最終年度延長した2023年度はこれらの結果を国内、国際学会で発表し、そこでの討論などを踏まえて、データの再分析、追加サンプルの取得などを行った。 また、2022年度にCRISPR/Cas9系を用いたゲノム編集によって、ヒト骨肉腫U2OS細胞から作製したAPTX、XRCC1遺伝子欠損細胞のDNA損傷応答解析を行った。これにより、APTXとXRCC1がDNA複製過程におけるDNA一本鎖切断修復に関与することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の2021年度には、初代培養線維芽細胞を用いていたため、鍵となる単一細胞由来クローンの取得効率が極めて低いという問題に直面し、予定していたWGS解析までには至らなかった。2年目の2022年度に、ヒトリンパ芽球由来TK6を用いて、第一次、第二次クローンを取得することができ、さらに、全ゲノム解析データを得ることができた。また、得られた初期コールから新規変異候補を絞り込む過程、すなわち、数段階のフィルターを繋げたパイプラインを確立した。2023年度はこれらの結果を国内、国際学会で発表し、有益な助言やコメントを得た。これらを踏まえるとともに、関連論文等を参考にデータの再分析、追加サンプルの取得などを行った。 また、2022年度にCRISPR/Cas9系を用いたゲノム編集によって、ヒト骨肉腫U2OS細胞からAPTX、XRCC1遺伝子欠損細胞を作製した。2023年度はこれらのDNA損傷応答解析を行い、APTXとXRCC1がDNA複製過程におけるDNA一本鎖切断修復に関与することを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的としていたWGSを用いた培養細胞での変異解析の新しい方法の基礎となる細胞クローン集団の作製は確立できたと考えている。データ解析については、SNP、Indel、SVの数、SNPのスペクトルまで解析した段階では、放射線(X線1 Gy)照射細胞と非照射細胞の違いは見られていない。国内、国際学会等で発表した際に、放射線量を上げると増加が見られる可能性もあるのではないか、化学変異原や紫外線を用いればSNPがより顕著に見られるのではないかというコメントがあった。また、今回作製したDNA修復遺伝子欠損細胞では修復のエラーによる変異が増加する可能性が考えられる。放射線によるDNA一本鎖あるいは二本鎖切断に起因する新規変異の検出のためには、特にIndelとSVの分類と解析が重要と考えられる。Indelについては、同一塩基が続く配列や繰り返し配列の有無や長さ、SVについては切断・結合部位におけるマイクロホモロジーの有無や長さなどによって分類することで、放射線誘発新規変異を抽出できる可能性がある。これらを踏まえて、これまでのデータの再分析、追加サンプルの解析などを進め、2024年度は国際誌への論文投稿を目標として進める。
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