高次質感認知への色の寄与:色覚異常の感性に調和する色デザイン手法の開発
Project/Area Number |
21KK0203
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Research Category |
Fund for the Promotion of Joint International Research (Fostering Joint International Research (A))
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 61060:Kansei informatics-related
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
永井 岳大 東京工業大学, 工学院, 准教授 (40549036)
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Project Period (FY) |
2022 – 2024
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥13,910,000 (Direct Cost: ¥10,700,000、Indirect Cost: ¥3,210,000)
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Keywords | 色覚多様性 / 感性認知 / 色覚 / 質感 / 色覚異常 |
Outline of Research at the Start |
色は感性に直結する物体質感認知にも大きく影響するため、色覚異常の人は色覚正常の人とは異なる質感認知特性を有するはずである。しかし、色覚異常者の質感認知に対する色の役割や、その文化・人種差については、忘れ去られているかのように研究がほとんどない。そこで本研究では、1. 様々な環境における質感認知に寄与する色情報の包括的解明、ならびに、2.色覚異常の人々の質感認知や感性再現に至適な色デザイン手法の開発を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度にはオーストラリアへ渡航し、海外の共同研究者との研究活動を開始することができた。この滞在期間中、高次色知覚特性の国際比較の準備を進めることを目的として、具体的なトピックとして色と半透明感の関連に焦点を当てた。研究は主に二つの実験に分けて行われた。 第一の実験では、物体の半透明性(特に表面散乱)が網膜像に与える影響を定量的に調べるとともに、その変化をコンピュータグラフィックス上で簡易に模倣して、それによってヒトが感じる半透明感が予想通りに変わるかを検証した。その結果、物体素材の半透明性が輝度コントラストに独特なパターンを生み出すこと、ならびに、物理的には正しくないがその輝度コントラストパターンの特徴を模倣したコンピュータグラフィックス画像上では、知覚される半透明感が確かに変化することが確認された。この結果は、半透明感知覚における視覚系の基本的な方略の理解につながるものであり、色知覚特性と半透明感の関係性に関する研究の方向性を提供する。 第二の実験では、従来の質感研究で主に用いられてきた平面ディスプレイ上の静止画刺激ではなく、運動情報や両眼視差といった、実空間に存在する手がかりを取り入れて実験を行い、現実場面に近い条件での半透明感知覚の特性を検証した。この実験は現在進行中であり、多様な手がかりがある方が、色情報の半透明感知覚への寄与が安定することが示されつつある。 さらに、2024年度の実験計画へ向けて、海外の共同研究者と予備実験を複数行った。その一つでは、色情報を加えた際の半透明感の向上効果を分析し、従来研究から半透明感の手がかりとして提案されてきた色度と輝度の相関は半透明感にほとんど寄与しない一方で、ヘルムホルツコールラウシュ効果のように、明るさを介して色が半透明感へ寄与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オーストラリアに渡航した上で、実際に共同研究を開始することができた。さらに、共同研究の成果を国際会議で発表することもできた上、帰国後の共同研究体制も整えることができた。これらのことから、研究は順調に進捗していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度の研究計画では、日本の研究代表者とオーストラリアの共同研究者がそれぞれ実験を行う。計画されている実験は大きく3種類に分けられ、いずれも色が半透明感を含む高次質感認知に与える影響の機序を明らかにすることを目的としている。 【現実環境下における半透明感知覚特性の検証】運動や両眼視差など、豊富な視覚情報が半透明感に与える影響を実験的に検証する。これはこれまでの予備実験を正式な実験に昇華させるものである。この実験から、色情報による半透明感操作の基盤的な知見を得ることが期待される。 【色による半透明感向上効果の解明】これまでの実験結果から、色の付与が半透明感を向上させる効果が強く示唆されている。そこで、この効果を定量化ならびに画像特徴量によるモデル化を行うことで、そのメカニズムを探る。具体的には、色を付与したことによる画像特徴の変化(明るさ勾配、色度-輝度相関など)のうち、半透明感に因果的に寄与する要因を特定する。この知見は、色を用いた質感認知の操作と、新たな高次色デザイン手法の提案に重要である。 【質感認知特性の国際比較】1と2の実験を通じて、色と質感認知の関わりを定量化するが、この関連性には個人差が存在する可能性がある。特に、言語の違いが質感認知の方略や質感の定義に影響を及ぼすかもしれない。例えば、日本語の「半透明」と英語の「translucency」は感覚としては別の概念になってしまうため、質感認知特性が言語の影響を受けて異なるものになる可能性は十分ある。この点を明らかにするために、日本とオーストラリアで半透明感の「知覚的次元」を心理実験から明らかにし、半透明感を題材にして高次色覚特性の個人差の要因に関する手がかりを得る。
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Report
(2 results)
Research Products
(3 results)