Research Abstract |
研究目的 学校現場においてリストカット,根性焼きなどの自傷行為は特別なことではない。自傷行為生徒への早期働きかけが可能なのは,養育者以外では教員となる可能性が高い。そこで,教育の場である学校の特性と限界を念頭に置いた支援方法の構築が必要と考えられる。教育現場における,自傷行為生徒への適切な対応を阻害する要因を質的に分析し,その阻害要因の対策を検討し,教育現場で実施できる自傷行為生徒への支援方法を開発することを目的とする。 研究方法 本研究は,一般中学校に勤務する教員を対象とし、自傷行為生徒への対応について,自由記述方式によるアンケート調査,インタビュー調査により質的に分析した。質的に分析した結果から,阻害要因を抽出・分析し,自傷行為生徒本人,家族・学校組織を含む環境要因への支援を検討した。インタビュー調査は、夏期休業中期間に、研究者が研究者と親交のある公立中学校へ出向き、その中学校に勤務する教員7名に実施した。インタビュー内容の分析・支援方法の開発においては、事例検討会開催、児童精神科医師、心理士より専門的知識提供を受けた。 研究成果 インタビュー調査内容の分析より、1)教員は生徒に相談されるとうれしいと感じること。2)授業中に周囲に周知されるようにリストカットをする生徒がいること。3)学校だけでは抱えきれないと強く感じていることの3点が明らかになった。教員が実施する支援においては、生徒個人と集団への教育的支援方法を開発する必要がある。支援においては、自傷行為の基礎知識、校内の相談・セスメント窓口、教員集団の連携が必要である。今年度は、専門家による自傷行為の講演、アセスメントシートを活用し学校の限界設定を念頭に置き生徒支援を実施した。課題として、より詳細な一般教員の自傷行為をする生徒への対応の調査を実施し、教員・学校の特性をふまえた支援方法を汎化する必要がある。
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