【研究目的】金型などの複雑で微細な形状の加工には、小径ボールエンドミルを用いた切削加工が増えている。しかしながら、小径ボールエンドミルは加工時の切削抵抗によって工具がたわみ易く、しかも、工具切れ刃上の創成点の位置の変化に伴い工具のたわみ量が変化するために、加工精度に大きな影響を及ぼす。本研究では、小径ボールエンドミルを用いた曲面加工において、創成点の位置を切れ刃上の特定の箇所に固定し、工具のたわみ量を一定に保つと供に、創成点の位置に応じた加工誤差量を補正した切削を行うことにより、加工精度を向上させることを目的としている。【研究方法】創成点を固定した切削を行うには、4軸以上の多軸制御加工を行う必要があるので、立型3軸制御マシニングセンタにCNC円テーブルを付加して4軸制御仕様とした。補助金で購入した超精密高速スピンドルを主軸に装着して、高速切削を可能にすると供に、工具の振れを2μm以内に抑えた。工具経路決定用のプログラムは、工作物上の加工点における接平面と工具切れ刃上の創成点における接平面が一致するという性質を利用した等勾配法という独自の手法により、Visual Basicを用いて開発した。4軸制御加工で創成点を固定した切削実験を行い、3分力切削動力計を用いて創成点の位置に応じた切削抵抗を測定した。また、三次元座標測定機を用いて加工物の加工誤差量を測定した。【研究成果】本研究で得られた結果は以下の通りである。(1)工具切れ刃上の創成点の位置に応じて切削抵抗は変化し、その影響で加工誤差量も変化する。(2)創成点の位置を固定した切削を行うことにより、切削抵抗の変化を抑制し、工具のたわみ量を一定に保つことができる。(3)工具経路に創成点の位置に応じた加工誤差量を補正した切削を行うことにより、加工精度の向上が可能である。本研究の成果をまとめ、平成22年度熊本大学総合技術研究会で発表した。
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