Project/Area Number |
22931006
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Scientists
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
臨床医学
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大井 なぎさ 東京大学, 医学部附属病院, 医療技術職員
|
Project Period (FY) |
2010
|
Project Status |
Completed (Fiscal Year 2010)
|
Budget Amount *help |
¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2010: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
|
Keywords | 卵巣過剰刺激症候群 / 黄体化ホルモン受容体(LHR) / 血管内皮増殖因子(VEGF) |
Research Abstract |
(目的)卵巣過剰刺激症候群(OHSS)は重症化すると生命に危険を及ぼすが、予知・予防が困難で不妊症治療における最重要課題の一つである。その発症機序は未だ不明な部分が多いが、卵巣における血管内皮増殖因子(VEGF)の発現亢進により惹起される全身の血管の透過性亢進が原因として考えられている。卵巣におけるVEGFの発現は、黄体化ホルモン(LH)が卵巣顆粒膜細胞におけるLHに対する受容体(LHR)に作用することにより促進される。最近、本研究指導者の原田らによりラットにおける研究で、VEGFとLHRの遺伝子発現変化が同調していることが示され、卵巣でのLHRの発現変化がVEGFの産生を調節していることが示唆されている。我々は、ヒトにおいても、LHRの発現変化がVEGFの産生を制御しており、OHSS症例ではLHRの発現調節不全のためにVEGFが過剰に発現しているという仮説を立てた。本研究の成果により、体外受精患者から採卵時に採取した顆粒膜黄体細胞(GL)細胞におけるLHRの発現の多寡を測定することにより、OHSS発症の迅速な予測、および重症化の予知が可能になるのみならず、将来的にはLHRの発現調節を利用した新たな治療法に発展することが期待される。 (方法)体外受精を受けた患者の卵胞液よりGL細胞を回収し、LHR, VEGFmRNA発現を、PCR法で測定し、これらと、各種パラメータ(卵胞刺激ホルモン(FSH)基礎値、LH基礎値、成熟卵胞数、採卵決定時の血性エストラジオール値、採卵数、成熟卵数、受精卵数)の関連の有無につき検討した。 (成果)非OHSS症例23例のGL細胞につき検討を行なった。VEGFmRNA発現量と各種パラメータとの間に関連は認めなかった。LHRmRNA発現については、採卵数および成熟卵数と逆相関を認めた。OHSS症例は症例数が少なく、今回の検討では一定の傾向を見出すには至らなかった。しかし、OHSSは採卵数の多い症例で発症しやすいことは以前より知られている。今回我々は、採卵数が多いほどLHR発現が低下していることを初めて示した。一方、VGEF発現は採卵数により変化しておらず、採卵数が多くなるような環境では、LHRによるVEGF発現調節機構になんらかの異常をきたす、あるいはLHR以外のVEGF発現調節機構が優位に働き、それがある一定のレベルを超えるとVEGFの過剰発現につながりOHSSを引き起こすのかもしれない。今後OHSS症例をさらに集積し、検討を続けたい。
|