性決定遺伝子同定に基づく半数体生物のU/V性決定システムの制御機構の解析
Project/Area Number |
22H00417
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 44:Biology at cellular to organismal levels, and related fields
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河内 孝之 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (40202056)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉竹 良洋 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (10839179)
安居 佑季子 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (90724758)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥41,600,000 (Direct Cost: ¥32,000,000、Indirect Cost: ¥9,600,000)
Fiscal Year 2024: ¥8,970,000 (Direct Cost: ¥6,900,000、Indirect Cost: ¥2,070,000)
Fiscal Year 2023: ¥8,970,000 (Direct Cost: ¥6,900,000、Indirect Cost: ¥2,070,000)
Fiscal Year 2022: ¥7,280,000 (Direct Cost: ¥5,600,000、Indirect Cost: ¥1,680,000)
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Keywords | 植物発生生物学 / 有性生殖 / 性決定 / 遺伝機能進化 / 雌雄分化 / 植物発生 / 性分化 / 配偶子形成 |
Outline of Research at the Start |
半数体生物の性染色体U/Vを介する性決定システムは、二倍体のシステムとは本質的な違いがある。苔類ゼニゴケから同定したU染色体上の性決定遺伝子BPCUは予想外にもV染色体上に相同遺伝子BPCVがあり、ともに有性生殖誘導機能を有していた。これらがクロマチン動態制御を介して遺伝子発現調節を行うと予想される点に着目し、U/Vシステムの性決定因子を介した雌雄分化と有性生殖の制御機構を明らかにする。また、半数体生物における性染色体と性決定因子進化の遺伝的制約、機能分化の分子機構を統合的に解析し、半数体における性分化制御機構の特徴を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
ゼニゴケで見出した半数体生物の性決定因子BPCUはクロマチン状態の制御に関わるとされる植物特異的DNA結合タンパク質をコードし、雌雄性分化に加えて有性生殖誘導を制御する。本研究では、成長制御におけるクロマチン制御の実態とその制御因子を明らかにすることを目指している。本年度は、生殖誘導条件におけるクロマチン状態をヒストン修飾に特異的な抗体を用いて解析した。ゼニゴケは長日条件と遠赤色光の両方が生殖誘導に必要とされるが、両者の関係は不明であった。遠赤色光を与えず、日長のみを変化させた条件で、生殖誘導の鍵因子BONOBO遺伝子座において、長日条件と短日条件におけるクロマチン状態の差異があることを見出し、つまり日長の差がその後の遠赤色光による光質刺激に対して感度よく振る舞うプライミング状態を作ることを示唆することができた。 雌雄分化に重要な常染色体にコートされるFGMYB/SUF遺伝子は、メスではFGMYBが発現し、オスでは、アンチセンスロングノンコーディングRNAであるSUFが発現することでFGMYB遺伝子は抑制される。この遺伝子座のヒストン修飾についても解析を進め、雌雄に特異的なクロマチン状態にあることを見出した。オスでは発現するSUFがメスでは抑制する仕組みに関しては、性染色体上の性決定遺伝子であるBPCUが関わることを変異体の解析により示すことができた。 また、BPCUについては、性染色体相同遺伝子であるBPCVとのキメラ解析により、BPCUとBPCVに共通する生殖誘導機能と、BPCUのみがもつ雌性化機能がタンパク質のどの領域に由来するかを調べた。さらに、近年急速に充実してきたコケ植物のゲノム情報を利用してBPCUとBPCVの分子系統樹を詳細に解析し、祖先的な分子がもつアミノ酸配列を推定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クロマチン状態の解析においては、ヒストン修飾を特異的に感度よく検出する技術を用いて、鍵となる遺伝子座の日長、光質あるいは遺伝的背景の差異による違いを検出することができた。また、鍵となる転写因子群(CDF、BONOBO、BPCUなど)にノックイン法によりエピトープを付与した系統を作出し、特異的にゲノムへの結合を検出する系を立ち上げ、感度よくタンパク質を検出することに成功した。また、エピトープタグに対する抗体を用いて転写因子の挙動を感度よく取られることにも成功し、タンパク質レベルでの振る舞いを検出できる様になった。また、CUT&RUN法により結合部位の濃縮し、結合サイトの推定もできる様になった。植物から単離したクロマチンを用いて解析を行うことで、期待以上の成果も得られている。これまでのシロイヌナズナで進めれたDAP-seq(ゲノムDNAに対して発現させたタンパク質の結合を解析する手法)から予想されるタンパク質の構造に基づく結合サイトが濃縮されたことに加えて、別の転写因子の結合サイト予想される配列も濃縮された。これは、扱うタンパク質とともに働く転写因子の標的サイトを濃縮した可能性が予想され、制御の全体像の理解につながると期待している。 BPCUとBPCVに関して作成した領域キメラ分子が機能的であることは生殖誘導能により評価することができた。さらに、系統樹より予想したBPCUとBPCVの祖先配列をもつ遺伝子を作成して植物に導入したところ、雌性化能力があることがわかり、性決定遺伝子の誕生はオスの性染色体上のガメトログにおける雌性化能欠失とメスのU染色体上遺伝子の機能強化が進んだことが示された。4億年あまりの進化を再現できたことは極めて興味深い。 このように当初計画した実験は基本的にすべて順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
日長を介してクロマチン制御に関しては、長日条件ではプライミング状態にあることが予想された。クロマチンが開いた状態であるかを調べるATACseqは長日条件で得たものである。短日条件ならびに遠赤色光添加条件におけるATACseqを進めることでクロマチン開放度を調べる予定である。また、染色体状態の全体像を知るには、HiC解析のように染色体が核内でどのように配置されているかといった情報も重要になる。 またBPCUのC末端側を雌性化に重要な領域として特定することができた。この領域はDNA結合に関わると予想されている。以前のIn vitroの実験は両方のタンパク質がGAGA配列に結合することが示されていた。分子種の違いがDNA結合領域が行なっていたことは予想外の結果である。今後はin vivoの結合能の定量的評価も重要となろう。また、BPCUやBPCVがクロマチン状態を制御するには、クロマチン関連遺伝子との複合体形成の解析も重要である。初年度は予想されるクロマチン制御因子の変異体の解析を進めたが、単独欠損株で完全に表現型が一致するものは得られていない。これは、クロマチン制御は多様な制御に関わることからも予想されていたことでもある。今後はBPCUおよびBPCVが含まれるタンパク質複合体の生化学的解析も推進する予定である。 これらの解析は、組織をまとめて解析したものである。多数の細胞をバルクとして扱う手法は多細胞体制を調べるのには最適な方法ではない。特に、生殖細胞系列を特定するBONOBOのような転写因子に関する解析は少数の細胞の挙動を把握することが重要である。本年度はBONOBO誘導条件におけるシングルセル/シングル核の遺伝子発現解析に着手した。BONOBO誘導後の時系列および細胞ごとに遺伝子発現を把握することで解析の質が上昇することが期待される。次年度以降の解析に積極的に取り入れていく。
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Report
(2 results)
Research Products
(13 results)