Project/Area Number |
22H04966
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (S)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Broad Section D
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
三谷 誠司 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究センター, センター長 (20250813)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡林 潤 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (70361508)
柳原 英人 筑波大学, 数理物質系, 教授 (50302386)
三浦 良雄 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究センター, NIMS招聘研究員 (10361198)
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Project Period (FY) |
2022-04-27 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥193,960,000 (Direct Cost: ¥149,200,000、Indirect Cost: ¥44,760,000)
Fiscal Year 2024: ¥32,630,000 (Direct Cost: ¥25,100,000、Indirect Cost: ¥7,530,000)
Fiscal Year 2023: ¥48,100,000 (Direct Cost: ¥37,000,000、Indirect Cost: ¥11,100,000)
Fiscal Year 2022: ¥57,330,000 (Direct Cost: ¥44,100,000、Indirect Cost: ¥13,230,000)
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Keywords | トンネル磁気抵抗効果 / コヒーレントトンネル / 軌道対称性 / 界面軌道物理 / 量子デバイス |
Outline of Research at the Start |
トンネル磁気抵抗効果(TMR)はスピントロニクスと呼ばれる新規分野を代表する量子現象であり、磁気センサや不揮発磁気メモリにおいて実用化されていることから重要性が広く知られている。しかし、そのメカニズムは大枠が理解されているだけであって、未解決問題も多く残されている。 本研究では、TMRの学術理解を根底から見直す。軌道磁気分光手法の開拓、軌道磁性体薄膜の創製、軌道ホール効果の観測等を通じて界面軌道物理というTMRの根幹に関わる学術領域の創成を行い、これを基軸とすることでTMRの新展開を果たす。理論が予測する数千%のTMR比の実現や、コヒーレント性を利用した新規量子スピンデバイスの開発を狙う。
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Outline of Annual Research Achievements |
初年度は計画した種々の研究を行う中で特に高品位試料の作製に注力し、それらを用いたトンネル磁気抵抗効果に関する実験データの取得において主要な成果を得た。試料作製および測定評価に必要な装置整備も進めた。主要な成果を以下に示す。 (1)トンネル磁気抵抗効果のバリア層厚に対する振動効果を実験面から明らかにするために、高品位試料を作製し、振動現象の系統的なデータを取得するとともにその解析を進めた。従来より報告されているサイン波的な振動ではなく、共鳴現象に特有の関数形の性格を有することが分かってきた。物理的発現メカニズムを解明するための重要な知見である。なお、Mg4AlOxという化学組成のバリア材料を用いることで試料の高品位化が出来たことも特筆すべき点である。 (2) (111)結晶配向したMgOバリアを用いたトンネル接合を作製し、(111)面がエピタキシャル成長したトンネル接合における室温磁気抵抗効果を世界で初めて観測した。現状の強磁性トンネル接合では(001)面のMgOバリアを用いることが常識であるが、それに囚われない新展開と言える。なお、MgOバリア(001)方位ではデルタ1コヒーレントトンネル効果が重要な微視的トンネル過程となるが、SrTiO3バリア(111)方位ではラムダ1コヒーレントトンネルとなりことを理論的に明らかにした。このことは軌道対称性の効果の観点で興味深い。 (3)FeRhを用いた強磁性トンネル接合の作製を行い、トンネル磁気抵抗効果の特徴的な振る舞いを見出すとともに、軌道対称性の効果として理解できることを理論計算によって明らかにした。 上記の他、界面磁性および界面スピン輸送が基盤的研究課題であることから、CoSi薄膜のスピン軌道トルクについても調べ、界面効果等の成果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たな材料系を含め、高品位強磁性トンネル接合試料を作製することに成功しており、計画した内容に沿って成果が得られた。特にトンネル磁気抵抗効果のバリア層厚に対する振動現象の解明に着実に向かっていること、(111)エピタキシャルバリアを用いた室温トンネル磁気抵抗効果の観測(含、微視的解析)という常識を覆す結果を得て、文字通りトンネル磁気抵抗効果の新展開を果たしつつあることから順調に進展していると言える。装置整備や予備的実験等、今後の研究展開のための準備も着々と進んでおり、明確な重要性を有する研究結果も得られ始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画にしたがって順調に成果を挙げつつあるので、基本的に当初計画通りに進めていく。その中でも以下の点に注力する。 (1) トンネル磁気抵抗効果のバリア層厚に対する振動現象は、トンネル効果の科学という広い分野での重要な新展開となり得るため、基礎科学的な観点で深掘りし、教科書に書き加えるような普遍性のある成果としてまとめていくことを狙う。 (2) 強磁性トンネル接合の電極磁性材料として、RuO2などのaltermagnetic物質にも注目する。輸送現象における軌道対称性の効果を深く理解するという観点で、altermagnetic物質は非常に興味深い。
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