Project/Area Number |
22K00093
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01040:History of thought-related
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Research Institution | Tsuda University (2023) The University of Tokyo (2022) |
Principal Investigator |
高久 恭子 (中西恭子) 津田塾大学, 国際関係研究所, 研究員 (90626590)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 古代地中海世界の宗教思想史 / 新プラトン主義 / 初期キリスト教 / 西洋古典受容史 / パブリック・ヒストリー / インテレクチュアル・ヒストリー / 歴史叙述論 / 宗教実践と宗教哲学 / 古代ローマ史 / 古代ローマ宗教史 / アダプテーション / 古典受容史 / 初期キリスト教史 / 宗教と文学 / 歴史叙述 / 古代ローマ宗教史・宗教思想史 / 宗教史学 / 初期キリスト教と新プラトン主義 / 西洋古典受容史と歴史叙述 / ジェンダーと宗教 |
Outline of Research at the Start |
帝政後期ローマからポスト・ローマ期を中心とする時代に、在来の宗教・宗教思想のありかたと、それらとキリスト教の遭遇はどのように語られ、後世に伝えられてきたか。また、ジェンダーと宗教のかかわりの実態はどのように理解され、伝えられてきたか。以上の論点に注目し、古代末期地中海世界における宗教史・宗教文化誌叙述の形成を同時代史料から明らかにするとともに、後世における「古代末期地中海世界の宗教」像の形成過程の素描を試みる。
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Outline of Annual Research Achievements |
(1)古代末期の宗教哲学の形成に関連する業績 エルフルト大学・東京大学共催のLived Ancient Religions Seminar(4月、オンライン)ではイアンブリコスを中心とする新プラトン主義者の儀礼観を紹介し、ギリシャ哲学セミナー主催の共同研究セミナー「ギリシャ哲学と宗教」では新プラトン主義者の宗教観と修徳思想に関連する発表を行った(9月、早稲田大学戸山キャンパス)。ギリシャ哲学セミナーでの報告をもとに、『ギリシャ哲学セミナー論集』Vol.XXに「古代末期の「哲学」と宗教の諸相」を寄稿し、古代末期地中海世界における宗教史叙述・宗教哲学の発生過程を初期キリスト教と並走する新プラトン主義者の思考に注目して論じた。Renaissance Society of Americaの第70回年次集会(2024年3月、シカゴ)では個人発表を行い、マルシリオ・フィチーノが『プラトン神学』においていかにイアンブリコスの宗教思想を受容したかを紹介した。 (2)パブリック・ヒストリーと古典受容史の接点 近現代日本におけるキリスト教古典・西洋古典受容史に関連する研究報告と論文執筆を行った。早稲田大学高等研究所主催シンポジウム「〈うた〉と信仰」での研究報告(12月9日)にもとづく論考「キリスト教古典詩の翻訳と日本語聖歌・讃美歌」をアンダーソヴァ・マラル、フィットレル・アーロン編『〈うた〉と信仰 -生成・起源・変容-』(3月)に寄稿し(2024年3月)、世界文学会2024年度第1回連続研究会(12月)では研究報告「近現代日本語詩歌と古代ギリシア・ローマ受容」を行った。また、川本直・樫原辰郎・武田将明編『吉田健一に就て』(国書刊行会、10月)に論考「澁澤龍彦と吉田健一」を寄稿して両者の西洋古典理解の一側面を論じ、東京大学藝文書院シンポジウム「吉田健一の文学」(11月)でシンポジストを務めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
古代末期地中海世界の宗教史叙述・宗教哲学の形成史を研究することで、広く共有されてきた古代宗教史像の着想源や、古代地中海世界に遡る「宗教とはなにか」を問う議論の歴史を明らかにすることが可能になり、パブリック・ヒストリー研究と宗教学基礎論への貢献が可能になる見通しを得た。これは今年度の大きな収穫であった。 古代地中海世界においても、宗教実践と神話的思考をともに関連する現象として対象化する思考の系譜と継受は、宗教文化史叙述や哲学諸学派の宗教論を軸に系統的にたどることが可能である。特に古代末期には「ギリシア・ローマ宗教」の伝統の来歴に対する回顧のみならず、宗教実践の有効感や、神話的思考と宗教実践の更新をめぐる議論を見いだすことができる。しかし、これらはキリスト教系著作家の専有物ではなく、むしろ同時代の宗教哲学や宗教文化誌叙述、特に新プラトン主義の宗教思想と並走する現象としてとらえることができる。この視座に立つと、本研究計画当初の目標であったインテレクチュアル・ヒストリーとしてのユリアヌス評伝の執筆や、古代末期地中海世界宗教思想史・宗教史叙述史論をより明晰なナラティヴに基づいて書くことが可能になる。 今年度は古代宗教表象史の結節点でもあるマルシリオ・フィチーノの著作における古代宗教史像と古代宗教像の再検討に着手することができた。ピュタゴラス学派から新プラトン主義に至る古代の宗教思想は、文藝復興期にはキリスト教神学の祖型となる「古代神学(prisca theologia)」として理解されていたが、フィチーノの思索には再発見された古代の思想とキリスト教の比較を通して宗教と宗教実践の再定義を問う関心も見られる。 近現代日本における西洋古典詩・キリスト教古典詩の受容については、先行研究を整理し、古典の急速な導入のさいに生じる研究紹介上の関心と上演実践・アダプテーション実践上の課題を把握した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は本研究課題の最終年度にあたる。以下の3つの方針に絞って研究を行う。 (1)インテレクチュアル・ヒストリーとしてのユリアヌス評伝と、古代末期地中海世界における宗教哲学・宗教誌叙述の形成史の執筆は従前からの課題であった。これらについてはより明快なナラティヴを構築して執筆を進める手がかりを得たので、単著化にむけて執筆を行う。ユリアヌス著作集の翻訳もこれらの執筆作業と並行して進める。 (2)近現代日本語詩歌における西洋古代宗教表象史および西洋古典・キリスト教古典の受容については、これまでの成果を活かして関連史料の精査を改めて行い、来年度中にそれぞれ「西洋古典受容」と「キリスト教古典受容」に焦点を絞ってそれぞれ論考を執筆する。 (3)文藝復興期における古代末期の宗教哲学の受容については、ひきつづきマルシリオ・フィチーノの著作群を分析しながら古代末期の新プラトン主義受容と古代宗教の宗教観・宗教実践観に焦点を絞って検討を行い、可能な範囲で研究発表と論考の執筆を行う。
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