近代における雅楽普及の水脈---地方で活動した「元楽人」に焦点をあてて
Project/Area Number |
22K00143
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01050:Aesthetics and art studies-related
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
寺内 直子 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (10314452)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2025: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
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Keywords | 雅楽 / 元楽人 / 地方 / 静岡県士族 / 伊勢神宮 / 近代 / 中間師匠 |
Outline of Research at the Start |
この研究は、宮廷芸能の雅楽を例に、大きな文脈としては「文化伝承は誰が支えてきたのか」を問う研究である。申請者は、ある芸能の質を高めるには、享受者の裾野の広がりによ って技術の向上や芸術上の深い理解が進み、結果として芸能全体あるいは頂点の質が高まると考えている。そのためには中央もしくは頂点に立つ少数の芸能者と多数の一般素人愛好家の間を結ぶ「中間師匠」の活動が重要となる。本研究では、中央の宮内省を辞め、「中間師匠」として伊勢、静岡、尾張・三河の雅楽の定着に貢献した元楽人たちの活動と当該地域の雅楽の歴史と現在を、現地での聞き取りと史料から検証する。
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Outline of Annual Research Achievements |
この研究の目的は、明治維新後、雅楽伝承の広範な伝播と継続的な実践を支える人材として地方に下った「元楽人」の活動と当該地域の雅楽実践を明らかにすることである。従来の雅楽研究は関西の禁裏楽人や東京の宮内省の楽人など「中央」の雅楽と楽人を対象とするものが多い。しかし、雅楽はいくつかの地方では古くから実践され、明治以降は政府の雅楽解禁政策により、雅楽を持たなかった地域にさらに広がる。その際、中央の楽人と地方の人々の間を取り持つ「中間師匠」として、地方に下った楽人が活躍した。本研究は、伊勢、静岡、尾張・三河で活動した元楽人たちに注目し、歴史資料と現地の雅楽関係者への聞き取り調査によって、彼らの活動と当該地域の雅楽の歴史と現在を検証する。 2023年度は、1) 静岡県士族の元楽人の調査を重点的に行った。また、年度末に、2) 三河での雅楽の広がりに関するフィールド調査を行った。1) については前年度から行っていた、静岡県下で神職を務めた大井菅麿の日記の分析により、以下のことが明らかになった。①明治2年に静岡士族として静岡に移住した旧紅葉山楽人の東儀弘長(音和)、東儀閑八、多忠敏らの楽人は、明治4,5年までに、東照宮、静岡浅間神社などの神社の雅楽を定着させ、10数人の宗教関係者、素人愛好家の弟子を育てた。②東儀音和の弟子の、神官の大井管麿は、さらに中間師匠として浅間神社や小國神社、井伊谷宮、遠州の天理教会などで多数の人に雅楽を教えた。③神社の儀礼のうち、官祭ではもっぱら雅楽の唐楽、御神楽などの演目が、対して、神社固有の私祭では昔ながらの地元の巫女神楽や、明治初期に広まった春日大社系の倭舞・巫女舞が用いられた。2)については、近代に創設された多くの雅楽団体はすでにほとんど廃絶してたが、現代において、新たに宮内庁の元楽師を招いて教習を受けて演奏会を催す等、リバイバル的な動向が注目される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
静岡浅間神社の調査では、当初の予想以上に資料が見つかった。一方、三河については歴史的文書や伝承は現状で把握してしている以上は残っていないことがわかった。そのかわり、現在における宮内庁(元)楽師との活発な交流の実態が明らかになったので、引き続き、現況について調査を行いたい。以上を総合すると、全体としては概ね順調に研究が進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に調査を行った静岡県下の神社は、いわゆる「地方の舞楽/稚児舞楽」(舞楽の曲名や衣装などを残した民俗芸能)を伝承している。小國神社、天宮神社、山名神社、静岡浅間神社では、長い歴史の中で芸態は雅楽ではなく民俗芸能に変化している。ところが、このうち静岡浅間神社は、明治期の紅葉山楽人の移住の後、複数回にわたって、東京の宮内省または宮内庁の楽師から指導を受けた経験があり、そのことによって、他の3箇所と異なる形態に「稚児舞楽」が変化している。2024年は、宮内庁の(中央の)楽師との交流、または宮内庁楽師に指導受けた中間師匠の活動がもたらす芸能の変化について重点的に調査し、その芸態の詳しい分析と変化を促すアクターを解明したい。
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Report
(2 results)
Research Products
(6 results)