Project/Area Number |
22K00187
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01060:History of arts-related
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
宮崎 法子 実践女子大学, 研究推進機構, 研究員 (20135601)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 日本の南画家の中国画理解 / 日本における中国文人画様式の受容 / 波多野華涯 / 石涛の古画学習 / 石涛と王原祁 / 中国江南における古画コレクション / 正統派と個性派 / 南画家たちの近代 / 田能村竹田 / 岡田半工 / 橋本青江 / 大坂画壇 / 日本近代の南画家 / 波多野華崖 / 王原祁 / 石涛 / 中国文人画様式の伝播 / 明清時代の美術市場 / 清初個性派 / 古画学習と模本 / 近世アジアの中国画流通 |
Outline of Research at the Start |
清初の八大山人、石涛を中心に、明末の美術市場の拡大が、個性派画家の創作に与えた具体的な影響を、画家と交流があったコレクターや当時流通していた作品を検証し考察する。また、それを、当時における絵画流通の全体的状況のなかに位置付けるために、江戸時代に日本に伝わった中国画やその模本類、日本の南画作品の調査を行い、さらに韓国や琉球などの中国画受容をも視野に入れ、近世東アジアにおける中国絵画の流通と絵画様式の伝播を、具体的かつ俯瞰的に把握する。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度の年度初めに所属先の変化があったため、それに対応するための研究環境の整備をはかった。調査活動においては、海外調査が可能になったが、諸般の事情により、すでに行ってきた日本の文人画調査の継続を優先させることが適当と判断した。明末の絵画市場の拡大や出版文化の盛行による文人画様式の伝播から、最も大きな恩恵を受けて発展した日本の文人画(南画)を、中国美術史の視点から捉え直すことの必要性と日本における研究における意義を再確認し、日本の南画の専門家の協力を得ながら調査研究を進めた。特にこれまで看過されてきた女性画家にも光を当て、日本における文人画の盛行とその中心地であった幕末の大坂の状況について、日本美術史研究者との研究会を通じて検討してきた。その成果は現在執筆中で今後発表する予定であるが、一部は、実践女子大学香雪記念資料館における展覧会企画と作品解説として発表してきた。本年度は幕末に生まれた南画家波多野華涯をとりあげて「波多野華涯ー明治・大正・昭和を生きた女性画家」展を開催し、企画と作品解説の執筆を行った。 一方、中国における状況について、清初江南都市で活躍した個性派画家たちの創作を、明末の絵画市場の拡大がもたらした最も大きな美術史上の果実として位置づけ、その代表である石涛の具体的な画風の変化と古画学習機会の増大について、対極の環境にあった正統派画家王原祁と比較しながら考察した論文を、実践女子大学美学美術史学科の紀要に発表した。 そのほか、依頼された講演「中国絵画の15世紀」において、蘇州文人における元代以来の文化資産の継承が文人画の復興に果たした役割を指摘し、また、重田みち編『日本の「伝統文化」を問い直す』の分担執筆において、本研究の成果を援用し、明末の美術市場の拡大がもたらした日本の江戸時代から近代の文人画の隆盛と、その近代日本における影響力の大きさについて論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度には、海外調査を計画していたが、調査のための十分な準備が整わず、また受け入れ先の事情などにより日程の調整がうまくいかなかったことなどにより、、海外調査を次年度に延期せざるをえなかった。ただ、それに代わって、国内の調査や資料収集に基づき、当初の計画通り、清初の石涛における古画学習機会について具体的な作画と関連づける考察を行い論文として発表することが出来た。 また、日本の南画研究者の協力を得て、共同調査や研究会を継続的に行い、明末の絵画市場の拡大による贋作の流通や出版物などの日本への流入の状況と、それがもたらした日本における南画画風の変遷や、近代におけるその展開などについて、著名な南画家だけでなく、従来看過されていた女性画家などについて、研究を進めることが出来た。 後者の研究成果については、23年度には、未だ展覧会企画や作品解説など一部しか発表できていないが、執筆中のものを含め、今後の刊行が決まっている。 以上から、海外調査は行えなかったものの、研究自体はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度に、まず執筆中の日本の女性文人画家の中国画受容と作画に関する考察を発表するなど、現在手がけている作業を継続させるが、今後の調査活動に関しては、これまで延期してきた海外調査を実施を、台北故宮博物院がコロナ禍収束後久しぶりに開催する秋の名品展の見学調査などから開始し、関連作品の特別観覧調査を行う予定である。また、秋に北京故宮から招聘されている国際シンポジュウムへの参加と、中国での作品調査も考えているが、これに関しては、他の作業との兼ね合いを見ながら進めたい。 これまで日本の南画研究と調査を行ってきたなかで、中国の同時代、清代中期以後の絵画史について、従来注目されてきたのは、揚州派など個性派の新たな展開の影に隠れて、ほとんど知られることがなかった正統派文人山水のその後について、確認する必要があることを痛感した。日本への同時代的影響を考える上でも、また明末の爆発的な文人画愛好の風潮を受けた乾隆帝による古書画の大規模な収集がもたらした、書画の古典のほとんどが宮廷に収められ、一般では、絵画制作に生かすことが出来なくなった状況下での、清朝の正統派山水画のゆくえについても調査を進めたい。 さらに、今後は、朝鮮半島やベトナムや琉球など、日本と同じく、中国文化圏の周縁に位置する東アジアの地域の状況についても、中国の文人画や文人画風の伝播や影響の実相を調査するための準備に取りかかることとする。最終的には、それらを総合して、明末清初で最高潮に達した中国文人山水画の盛衰について、東アジア文化全体を俯瞰する視野のなかにとらえ直すことを目指したい。
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