Project/Area Number |
22K00218
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01070:Theory of art practice-related
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
加藤 晴明 中京大学, 文化科学研究所, 特任研究員 (10177462)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久万田 晋 沖縄県立芸術大学, 芸術文化研究所, 教授 (30215024)
川田 牧人 成城大学, 文芸学部, 教授 (30260110)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 地域文化 / 地域メディア / 民俗芸能 / 文化生産 / 世代継承 / マスメディアとの共鳴 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、世界自然遺産登録地であり、豊かな固有の文化をもつ奄美群島を対象に、民俗芸能文化の現代的な展開・継承の可能性に関する研究である。 研究では、奄美の民俗芸能文化を、過去の固形物として「伝承」の対象としてだけ捉えるのではなく、メディア文化・ポピュラー文化が席巻する現在の文化胎動と共振することで融合的・拡張的に創生され続けている生きた文化として捉え。つまり地域の文化の本源的な姿の残り香を探し出すのではなく、民俗芸能文化がメディア文化、ポピュラー文化と連続することによって、持続可能な世代継承が可能となっているような〈地域の文化の継承・創生のプロセス〉を理論モデル化することを目指している。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、奄美の民俗芸能文化が〈メディア媒介的な展開(メディア化)〉を遂げることで、次世代につながる創造的継承が可能になってきていることを、島唄文化・余興芸能文化 に焦点を当てて研究してきた。 中間年の研究実績として、「奄美島唄という文化生産:の録音メディア編・セントラル楽器を中心に」を公刊した。この論考も含めたこれまでの研究により、①教室化・組織化・大会化・レコード化など、文化の媒介過程の全域を含む〈広義のメディア〉概念の有効性を実証的に検証することができた。②民俗文化の〈メディア化〉が、シマ(集落)から文化産業の集積地であるマチ(都市部)へと担い手自身が移住・移動する文化アリーナの移動によって創造的継承がなされていることを初めてモデル化できた。③シマの暮らしを知らない世代でも、「シマとの想像的対話」を通じて文化の継承が可能になることが、関係者への取材を通じて明らかになりつつある。現在、これまでの文化生産論を加筆修正して体系的な著作の執筆に取り組んでおり、この世代継承の可能性としての「想像的対話」について、その加筆・修正のなかに盛り込む作業を進めている。 奄美の余興芸能文化に関する研究として、「島の地産地〈笑〉論」を公刊した。「公民館の余興」「地域演芸」の中にある「〈笑い方〉の島独自の基準」について、これまでのメディアイベントとしての全島的な余興大会(Y-1グランプリ)の映像分析や大会主宰者・演者への継続的な取材をとおして解明しつつある。研究では、「ヴァナキュラー」の概念を取り入れることで、奄美の芸能文化の位置づけをより明確にすることができた。同時に、「集落の笑い」が単独の民俗芸能文化としてあるのではなく、「都市の笑い」(マスメディアの笑いでもある)と相補的な関係・共鳴的な関係にあることも発見され、文化の多層性という新しい研究地平が拓かれてきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4月下旬に全体ミィーティング(オンライン)を実施、また島唄研究を担う加藤と余興文化研究を担う川田で1月に東京でミィーティングを行い、それぞれの研究経緯と成果について討議した。 【論考のまとめ】奄美島唄と余興芸能について、それぞれ論考を発表した。島唄については、「録音メディア」についての論考を公刊するとともに、奄美島唄の文化生産全体について、これまでの論考に加筆修正して一冊の著作として刊行する準備を進めている(進捗状況は、65%程度)。余興芸能についても、ヴゥナキュラーな笑いの質を明らかにした論考を発表するとともに、「集落の笑い」と「都会の笑い」の多層性や共鳴関係の存在を発見するなど、新しい知見にもとづく研究へと進みつつある。 【調査取材】現地調査は、加藤が9月と3月、川田が6月、11月、3月、久万田が11月と2月に。奄美で調査研究を実施した。島唄調査では、「世代継承」の視点から島唄関係者へのインタビュー取材を続けている。対象者は、①島唄教室を主宰する指導者やコンテスト大会に出場している中堅唄者、②生活の中に島唄が根ざしていた時代を知っている高齢の唄者、さらに③島唄について自身の見解を持っている島の知識層である。また、地元ラジオ局の島唄番組の録音を全部入手し分析も進めている。また、集落の八月踊り(島の盆踊り)や十五夜祭事を観察・参加することで、シマの暮らしについての内在的な理解を深めている。 余興文化については、島内の有名芸人へのライフスリートー取材を続けている。「公民館の余興」「集落の笑い」を担っていた素人芸人が、メディアイベントを通じてローカルな有名芸人になるプロセスを解き明かす試みを続けている。また、かつて集落の中にいた素人芸人集団などを発見することで、余興グランプリというメディアイベント(現代的継承の姿)の背後にある余興芸能文化の基層を発見することを試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究課題は、奄美の島唄・余興芸能の文化実践について、「世代継承」の視点を加えながら、その創造的継承のプロセスをより精緻に解明することにある。 【奄美島唄の創造的継承のモデル化】文化生産論をもとに進めてきたこれまでの研究を、加筆修正して一冊の体系的な著作としてまとめ、民俗芸能文化の創造的継承のモデルを提起する予定である。とりわけ、シマ(集落)からマチ(都市部)への文化アリーナ移動などの発見を組み入れたモデル化や、「シマとの想像的な対話」による世代継承モデルなど、文化の変容・伝承・創造にかかわる一般モデル化を試みる。 【世代継承についての調査】ベテラン唄者への取材に加えて、地元ラジオ局の島唄番組を利用して、高齢で著名な唄者たちの島唄観・継承観について考察を進める。また、過去に地元新聞に連載された鬼籍に入った有名唄者のインタビュー記事なども活用して唄者の島唄観についての再構成も試みる。 これまでの調査で、若い世代への直接の取材よりも、教室主宰者や島唄に造詣の深い地元知識層への取材の方が有効であることがわかった。そのため、世代継承をめぐって、研究成果である「シマとの想像的対話」などの仮説の有効性について、島唄関係者との討議を進めていく。 【文化の拡張の調査】民俗文化の継承は、〈保存的伝承〉ではなく、領域の拡張・融合をともないつつ〈創造的継承〉がなされていく。①音楽的なジャンルの拡張:島唄の「音楽」への昇華の試みとしてポピュラー音楽との融合やクラッシックとの共鳴など、新しい音楽として外に向けて発信する試みが増えてきている。そうしたメディアコンテンツ自体の収集と担い手の語りの研究も進めていく。②活躍舞台の拡張:島内に止まらない、ルーツミュージック・ワールドミュージックとして全国市場や世界市場に進出する動向もある。そうした新しい融合や活躍の展開の資料も収集していく。
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