Subject Formation of Tuberculosis Patients in Prewar and Wartime Japan: Analysis of Patient Experiences in Home Treatment and Veterans Sanatoriums
Project/Area Number |
22K00270
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01080:Sociology of science, history of science and technology-related
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
宝月 理恵 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (10571739)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | 結核 / 患者 / 1920~1930年代 / 主体形成 / 自然療法 / 患者同士の連帯 / 食養生 / 結核患者 / 主体 / アイデンティティ / 療養生活 / 大正から昭和初期 / 患者研究 / バイオソシアリティ / 患者史 / 戦前・戦時期日本 / 療養談 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、戦前・戦時期日本における結核(元)患者がいかにしてそのアイデンティティを他者との関係性の中で構築し、病む主体、あるいは完治した主体として自己を呈示し、療養や社会復帰の過程と向き合ってきたのか、以下の側面から明らかにする。 (1)大正期以降隆盛した婦人雑誌に掲載された読者の療養談を通して、自宅療養者が、誌面上でいかなる社会的紐帯を求め、自己呈示していたのか。 (2)除役軍人患者がいかなるアイデンティティを他者との関係性の中で構築し、病む主体として自己を呈示し、権利を求め、病やその治療、社会復帰に向き合ったのか。 以上の検討を通して、結核の感染症史を患者史の視点から補強することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023度の研究実績は以下の二点にまとめられる。 第一に、前年度に引き続き、大正末期に創刊された結核患者のための専門雑誌『療養生活』の記事を収集、分析した。なかでも読者投稿欄「まどい」上での患者同士のやり取りを検討し、雑誌上の仮想空間において、バイオソシアルな連帯関係が創出されていたのではないかと指摘した。この連帯関係への基盤となったのは、自然療法(とそれを提唱する雑誌主幹の田辺一雄)への信頼と自然療法の実践である。これは、様々な療法を求めて「惑う(まどう)」患者に対し、別の患者がそれを戒め、自然療法への信頼を取り戻す重要性を説くという事例に端的に表れている。この信頼は、「専門家システム」(Giddens, A., 1990=1993『近代とはいかなる時代か』而立書房)に対する信頼とは異なる。『療養生活』誌上において、結核に関する権威が患者に対して知識を授ける「医師-患者関係」的構造が存在しないわけではないが、結核患者同士であるという生物学的な関係性、社会的差別の経験の共有等が「まどい」欄に集う患者たちを横の連帯関係で強く結びつけていた。本研究の成果の一部は、『現代思想』および日本社会学会で報告した。 第二に、結核の自宅療養のひとつとして重視された食養生がいかに実践されていたのかを検討した。1930年代は、大部分の患者が自宅療養を行っていた。自然療法を信奉する全国の患者たちの指針となった通信指導書には、どのような食餌を取るべきか/取るべきでないか、食事中の咀嚼等の情報が掲載されている。また献立には和食だけではなく、洋食も頻繁に紹介されている。患者たち、あるいは看護役割を担い食事を用意した女性たちは、いかなる規範や知識の影響のもとに食養生を実践しようと試みたのか、また結核患者の主体形成に食はいかに関与するのかを検討した(2024年度も継続中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度は研究代表者の所属先の異動があり、新しい環境への適応と、新規着任に伴う授業準備や校務のために時間を割かざるを得ない状況となった。そのため、科研費研究に充てる時間のねん出が難しく、進捗状況としてはやや遅れている。 当初の研究計画上では、2023年度中に徐役療養所の分析に着手する予定であったが、2024年度にずれ込んでいる。2024年度には食養生を通じた療養患者の主体形成についての分析の公表と合わせて、もう一つの主題である徐役患者(傷痍軍人)の研究にも着手する。
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Strategy for Future Research Activity |
まず2023年度に推進した研究について公表の準備を行う。具体的には『療養生活』での患者同士の連帯について雑誌論文として投稿するとともに、食養生については論文集に寄稿予定の論文の執筆を進める。 2024年度は、徐役患者の主体形成の解明という研究主題にも着手する。本研究では、傷痍軍人療養所資料およびエゴ・ドキュメント(日記、手紙、回想、自伝など)の分析から徐役患者の主体形成を明らかにする。すなわち、結核によって徐役された元軍人がいかなるアイデンティティを他者との関係性の中で構築し、病む主体として自己を提示し、権利を求め、病やその治療、偏見、社会復帰と向き合ったのかを探る。史資料収集については、国立国会図書館のデジタルアーカイヴの利用や、結核予防会研究所図書室への訪問を予定している。 これらの研究の進捗状況に沿って医療社会学研究会や医学史研究会等の場で研究構想・データ分析を報告し、フィードバックを得ながら論文構想を練る予定である。
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Report
(2 results)
Research Products
(2 results)