尾張藩の芸能保護・統制の実態と東海地域の芸能に与えた影響についての基礎的研究
Project/Area Number |
22K00304
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02010:Japanese literature-related
|
Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
飯塚 恵理人 椙山女学園大学, 文化情報学部, 教授 (00232132)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三木 邦弘 椙山女学園大学, 現代マネジメント学部, 准教授 (80174001)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2023: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
|
Keywords | 能 / 伊勢 / 狂言 / 大蔵流 / 和泉流 / 愛知県 / 尾張藩 / 古典芸能 / アーカイブ / 芸能統制 / 民間資料 |
Outline of Research at the Start |
尾張藩における雅楽・能楽平曲・地唄第曲などの式楽および地芝居や浄瑠璃などの統制対象になった芸能についての町触れや台本、番組、伝書等を収集・整理し、藩の芸能の保護と統制についての実態を資料的に明らかにすることを目的とする。例えば尾張藩には扶持米を与えて抱える能役者である「御役者」がいたが、彼らの中には幕府の能、禁裏の能、興福寺の能に出演する二重出仕の者がおり、それぞれ江戸、京都、南都に生活基盤があった。その場において他流の能役者や他の芸能者と芸事上の交流があった可能性がある。藩組織が研究されている尾張藩で、このような資料を収集・整理して芸能への保護と統制の実態を明らかにする。
|
Outline of Annual Research Achievements |
尾張藩の芸能保護・統制の実態と東海地域の芸能に与えた影響について検討した。伊勢神宮の神領であった伊勢市通町の栄通神社の奉納で三百年近く狂言奉仕をされている大蔵流狂言方森家の森浩一師の所蔵資料の中で、昭和期に先代大蔵流宗家大蔵彌右衛門師より伝えられた間狂言台本50曲ほどを拝借して、現在整理している。森浩一師の祖父は和泉流狂言方の岩本家からの養子であり、岩本家宛の免状や書簡も残されているとのことなので、間狂言台本の整理を終え次第、森師所蔵の岩本家関連書簡も整理させていただきたいと考えている。 和泉流では名古屋市在住の狂言方佐藤友彦師所蔵の山脇得平本間狂言本を撮影し、《頼政》について他の間狂言本との差異を検討、論文執筆中である。また佐藤師より狂言《鈍根草》の六義(台本)を提供していただき、現代語訳と英訳を作成、愛知県伝承の台本に基づいた英語圏留学生向けの狂言普及教材を作成した。(「留学生向けの狂言英語教材の制作―《鈍根草(どんごんそう)》を素材として―」名古屋芸能文化会「名古屋芸能文化」第32号,P.95-110、令和5年2月) 間狂言諸本の比較としては、世阿弥の自筆能本が現存している能《江口》についても検討した。《江口》は室町時代の自筆能本のシャベリアイの間狂言から江戸時代初めの古本能狂言の居語りの形になって性空上人が江口の長を普賢菩薩と観たこと、西行と江口の長が和歌問答をしたことが語られることが定型となったことを述べた。しかし江戸時代が進むにつれ、おそらく舞台進行に応じて間狂言の長さを変化させる必要があったため、西行の和歌問答を省略する間狂言の本が現れた。こうして間狂言の内容が時とともに変遷していく一つの例を見出すことができた。(「《江口》の間狂言-江口の長について-」紫明の会「紫明」52号,P60-65,令和5年3月)
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
伊勢市勝田流保存会の狂言方森浩一師御所蔵の間狂言本や免状の調査が、ほぼ予定通りに進捗している。 また明治維新期の名古屋能楽界と尾張徳川家の関係について徳川林政史研究所の「御次御能装束冥加金帳」など尾張徳川家の資料を閲覧・調査することが出来、明治4~10年前後に、寺田左門治や大野藤五郎などの旧尾張藩御役者が能楽の催しを行う際に、尾張徳川家はその所蔵の装束を貸し出すという形で援助していたことなどを明らかにすることができた。 また岐阜羽島の尺八演奏家不破洋師が提供してくださった写真やSPレコード、カセットテープ等の音源から、戦前から昭和40年代までの岐阜県の尺八・筝曲の実演家の芸系やその演奏の特色などを明らかにしつつある。さらに尾張藩領だった岐阜市内芥見村で、浜松の虚無僧寺の普大寺と旦那場を争って抗争事件を起こした山梨県の虚無僧寺の明暗寺の活動実態について、江戸後期の留場証文などの活動資料を閲覧・撮影することができた。これを基にして明暗寺だけでなく江戸後期の三重県白子の普済寺などの、尾張藩領内にはないが尾張藩領を旦那場とした虚無僧の活動実態や吹奏した曲の特徴などについて検討し、明治の愛知における尺八ブームの基盤について考察する。
|
Strategy for Future Research Activity |
伊勢市の森浩一師が所蔵する、和泉流岩本家から大蔵流森家に養子に入られた浩一師の御祖父伝来の、岩本家に対する和泉流家元の山脇和泉家の免状等に関する書類を、調査の際一部確認した。これについて御許可を頂いた上で撮影し、伊勢の狂言において和泉流と大蔵流がそれぞれどのような六義(台本)を使用していたかや、異流共演や曲の演出や詞章を教えあうなどの芸事上の交流が見られるかなどを調査・検討したい。 また和泉流佐藤友彦師が御指導されている新城狂言同好会の酒井家の六義について閲覧の許可を頂いている。佐藤師からは「太平洋戦争後、高校生に狂言を教えるため、六義の詞章を一部改めた」と伺っているので、六義のどの部分がどのように改められたのか、その理由についても検討したいと考えている。
|
Report
(1 results)
Research Products
(5 results)