17世紀における大坂俳壇と地方物流網の紐帯関係―西鶴との交流を視座として―
Project/Area Number |
22K00309
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02010:Japanese literature-related
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
森田 雅也 関西学院大学, 文学部, 教授 (10239668)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2026: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 日本文学 / 西鶴 / 上方文壇 / 談林俳諧 / 地方文化圏 / 海川物流網 / 17世紀日本 / 読者の受容反応 / 17世紀日本文学 / 大阪文壇史 / 地方情報網の発展 / 水上交通史 |
Outline of Research at the Start |
「俳諧」は17世紀に入って成立した新しいジャンルの文学であるが、従来の俳諧史研究の中心が元禄期頃から確立する芭蕉の蕉風俳諧の展開相の分析におかれているため、それ以前の1600年代の俳諧興隆史は、未だ不明な点が多い。本研究は17世紀中頃に大坂談林俳壇の旗手として活躍した文人・西鶴(1642~1693)を視座として、当時の大阪俳壇と地方俳壇がその物流網の発展と不可分の連関関係にあった実態を解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
前年度まで行っていた課題研究「上方文壇と地方談林俳諧文化圏との繋属関係の研究~海川・物流網を視座として~」(森田雅也代表基盤研究(C)、課題番号「17K02480」、平成29年度~令和3年度)の研究成果を承けて、今年度より、「17世紀における大坂俳壇と地方物流網の紐帯関係―西鶴との交流を視座として―」と題して新たな研究に取り組んだ。 7/26~7/28「長崎歴史文化博物館・長崎県立長崎図書館郷土資料センター・長崎出島資料館」、8/19~23「諏訪市立博物館・諏訪大社前宮・諏訪上宮本宮・諏訪湖博物館・サンリツ服部美術館・岡谷蚕糸博物館・岡谷市立美術考古館・諏訪大社春宮・諏訪大社秋宮」、10/21~10/24「徳川ミュージアム・茨城県立歴史館・鹿島神社・神栖市歴史民俗資料館・鹿島神宮」、11/21「滋賀湖族の郷資料館」、1/31「東大寺ミュージアム・奈良市立史料保存館」、3/6「福井市立郷土博物館」にて各々の地域物流網と俳諧文化圏の関係調査を行った。 また、それらの地方俳諧文化圏形成の実態検証のため、17世紀、特に談林俳諧が最盛期を迎えた延宝・天和・貞享・元禄初期に刊行された俳書を中心に地方俳壇の俳人を悉皆データベース化(のべ約70,000名)し、大坂俳壇との関係を明示化した。 これらの成果の一部は、9/11「西鶴と地方物流業者たち」(西鶴忌記念講演会)と題して公表した。 論文公表も急いだが、2/21~2/23にパリ・国際大学都市日本館にてオンライン開催された「日仏伊共同国際シンポジウム―伝・賛と肖像の生成と出典・翻訳翻案のクロスメディア―」において「17世紀俳諧研究史と安保博史氏」と題し講演し、3/7にもイタリア・ナポリ東洋大学にてオンライン開催された国際講演会「翻訳論・出典論」のシンポジウムで司会・コメンテーターとして招待参加したため執筆計画が遅れ、来年度刊行予定となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度もコロナ禍で行動制限を余儀なくされたが、地方俳諧文化圏を探究するための現地調査は最低限実施できたのでおおむね順調に進展している。 一方、その成果の一部を公表する講演や研究発表の機会にも恵まれたものの、度重なる移動制限によって対面の場合、参加人数が少なく、質疑応答などの発言にも不便があり、成果公表への反応がわかりにくかった傾向がある。これは参加人数が多くてもオンラインでの発表では一方的となり、双方向の成果確認に難があり、同様に問題を残した。しかし、研究者間での情報共有は密になり、むしろ、SNSなどの媒体を通して闊達な意見交換ができたことは補って余りあるかも知れない。 また、論文公表については、予定外のオンラインによる国際学会の参加が増え多忙となったり、国内所属学会での活動が停滞し、定期の学術雑誌刊行が一時停止や遅延などしたり、コロナ禍で著書刊行を予定していた出版社自体が営業不振となり出版を見合わさざるを得なくなるなど予期せぬ事態に困惑している。もっとも、これらの問題はコロナ禍の収束に合わせて徐々に改善されつつある。 現地研修・調査においても衛生管理上などの問題から、資料閲覧時間の制限、場の制限など通常調査に比して多くの障害があったが、こちらにも緩和の傾向も見られる。長期的には補完調査の必要も生じているが、大きな計画変更の必要性はない。 むしろ、オンラインに依存せざるを得なかった近年の暗中模索の研究の中で、人文学の分野では想像できなかった情報交換・情報共有などに新しい研究方法が生み出されたり、提供されたりしたことは発見であった。自己の研究方法においても、それらをうまく活用することで新しい成果を得られることを学習したことは、今後の研究進展の上で大きな意味をなすこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も現地研修により、座学では得られない郷土資料を調査し研究を進めていく。2023年度は一つに東海道沿いの文化圏を中心に2023・2024年度の二年間にわたり俳諧文化圏の形成についての調査を行う。2023年度はまず、江戸時代の海上の関所ともいうべき下田を中心とした伊豆半島の俳諧文化圏の形成を調査する。同じく、その東に続く鎌倉近辺の三浦半島、その西に続く渥美半島から豊橋にいたる周辺、余力があれば、静岡など駿府城下を中心とした文化圏を調査する。また、日本海側の文化形成において重きをなした白山信仰に伴う文化交流ルートを石川県と福井県側から調査する。九州では宮崎を起点とする日向文化圏ともいうべき地域を調査する。宮崎は鹿児島などの南九州、大分・佐賀などの福岡に通じる文化交流ルートの中心にあり興味深い。できれば上方文壇に通じる四国、中国などの文化人と宮崎俳諧文化圏も調査したいが、2023~2025年度までの三年間の調査期間を予定している。また、2022年度に調査した長崎文化圏の調査では佐世保方面を残しており、再度の調査を行いたい。同様に2022年度の奈良文化圏の調査では興福寺・大安寺文化圏の調査を残しており、再度調査したい。 一方で、2022年度に調査不足のため、研究成果公開に至らなかった諏訪俳諧文化圏、東大寺俳諧文化圏について論文発表等の公表に努めたい。 また、2023年度は西鶴没後330年、近松門左衛門生誕370年、2024年度は芭蕉生誕380年、没後330年にあたっており、それに関連した行事も多く、すでに多くの機関から講演・展示依頼が来ていることから、新資料発掘とともに、17世紀の上方文壇の実態について、旧来の研究成果を検討し、新たな文学史上の問題を提起したい。 以上の研究成果は、随時、森田個人研究公開用ホームページ(http://saikaku48.jp/)を通じて公開する。
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Report
(1 results)
Research Products
(3 results)