中世私撰集所収万葉歌を対象とした散佚非仙覚本万葉集の復元の研究
Project/Area Number |
22K00318
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02010:Japanese literature-related
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
樋口 百合子 奈良女子大学, 大和・紀伊半島学研究所, 協力研究員 (90625493)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 勅撰名所和歌要抄 / 歌枕名寄 / 毛利本『歌枕名寄』 / 仙覚校訂本 / 散佚非仙覚本 / 新点 / 改訓 / 長歌 / 万葉集 / 仙覚 / 非仙覚本 / 類題歌集 |
Outline of Research at the Start |
1993年の廣瀬本万葉集の発見を契機に、万葉集古写本の原本調査、写本系統の見直しが行われた。しかし、現存する非仙覚本万葉集の完本が廣瀬本のみであることが障壁となっている。申請者は中世の類題歌集『歌枕名寄』や『夫木和歌抄』中に、現存しない非仙覚本系万葉集に依拠した万葉歌が多数存在することから、そこに散佚非仙覚本系万葉集が残存する可能性に着目した。 本研究では、中世成立の私撰集所収万葉歌を調査し、その中の漢字本文や訓を収集し、散佚非仙覚本の存在を明らかにすることを目的とする。この研究の成果は、新たなる万葉集写本の系統の研究を飛躍的に発展させ、万葉集の訓点史、伝来史の空白の解明を進め得るものとなる。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中世私撰集に所収された万葉歌(特に長歌・東歌を中心に)を調査し、散佚非仙覚本のありようを検討するものである。 初年度にあたる今年度は、依然としてコロナ禍の影響は避けられない状況の中、徐々に文献所蔵機関における調査や研究会も実施可能となった。 まず長歌の数は少ないが、『歌枕名寄』についで漢字本文表記の多い『勅撰名所和歌要抄』について唯一の完本である内閣文庫本を調査した。既に先学によって明らかとなっていることも多々あるが、失われた非仙覚本の捜索という視点で検討した。成立は14世紀半ば頃であり、仙覚校訂本が都で受容されていく時期と重なるが、仙覚を受容していないことが推定できた。次に明治大学附属図書館蔵毛利家旧蔵本『歌枕名寄』を翻刻し、調査を行った。その結果非流布本であること、仙覚校訂本を受容していないこと、『歌枕名寄』他写本に見られない鴨長明との関わりが存在し、長明が鎌倉紀行記(現存しない』を記した可能性のあることなどが判明した。 さらに『歌枕名寄』細川本(諸写本中最も原撰本に近い)中の長歌をすべて抜き出し(107首)、重出歌も含めて一覧し、中世万葉集を研究していくために学会共有のものとした。これまでの『歌枕名寄』所収万葉集長歌についての論考をまとめ、その中に仙覚本、非仙覚本のどの写本とも一致しない仙覚の新点が多数見られること、改訓を採り入れていないことなどが判明した。大量の万葉歌を所収する中世類題歌集中には失われた非仙覚本群がに埋もれており、それを明らかにすることにより、本研究の主題である散佚非仙覚本の復元に近づくことができる可能性を見い出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍のため、『名所歌枕』島原松平文庫本や龍門文庫蔵野『十四代集歌枕』の調査は実施できなかった。これは二年度に行う予定である。また現在調査中の『勅撰名所和歌要抄』については、引き続き調査を続け、結果を纏める。その他の文献についても閲覧を許可されたものについては順次調査を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
推進方策に変更はない。次年度は調査中の『名所歌枕』について所収万葉歌の考察を行いたい。『勅撰名所和歌要抄』についても同様である。『歌枕名寄』については日本大学文理学部蔵『歌枕名寄』について現在翻刻・調査を行っているので、本年度中には論文に纏める予定である。これは箱書が『頓阿法師名所集』でありながら、内容は『歌枕名寄』であるという興味深い写本である。
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Report
(1 results)
Research Products
(3 results)