山東京伝の江戸文化背景に関する研究―大名子弟の俳諧交友と蘭学者らとの係わりの解明
Project/Area Number |
22K00335
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02010:Japanese literature-related
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鹿島 美里 北海道大学, 文学研究院, 専門研究員 (00609068)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 山東京伝 / 江戸座俳諧 / 大名俳諧 / 蘭学者 / 田沼意次 / 木村蒹葭堂 |
Outline of Research at the Start |
山東京伝が作品を生み出した江戸の文化背景を解明する。このうち山東京伝作品に最も影響を与えた大名子弟と江戸座俳諧宗匠の俳諧交友関係を明らかにし、京伝作品の新たな解釈や登場人物の解明を行う。そして俳諧交流によってもたらされた森島中良、大槻玄沢や桂川甫周や当代一の学術サロンを形成した木村蒹葭堂ら蘭学者と京伝と西洋文化の繋がりを明らかにする。さらに大名子弟らと俳諧交友を通じた係わりから、幕府政治を風刺した作品を創作することにも繋がっていったことを考察する。これら俳諧交友をもとにした大名や幕府、蘭学など当時の社会情勢の背景を京伝作品から分析する研究を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
二年目の本年度も京伝のパトロン松江藩主弟松平雪川、松前藩主弟松前文京や江戸座俳諧活動を通じて係わりの深い大名俳人の大和郡山藩主柳沢米翁、伊勢神戸藩主本多清秋、尼崎藩主松平亀文、松代藩主真田菊貫らの俳諧交友活動の解明を継続して行った。大名子弟が係わることによって勢力を拡大する江戸座俳諧の交友関係を明らかにした。彼ら大名子弟は江戸座俳諧宗匠の下で俳諧活動を行うため、これら大名子弟が入集する俳書からその交友関係を明らかにするとともに、江戸座俳諧を当時の俳壇の大きな枠組みの中で捉えた。江戸座俳諧宗匠亀成・菊堂と大和郡山藩主柳沢米翁、松代藩主真田菊貫ら大名との俳諧交友活動と亀成と京伝との係わりを論文として発表する。さらに、京伝の俳諧交友関係から生まれた作品の時代背景について、京伝は田沼政治を批判して『時代世話二挺堤』や田沼派の土山宗次郎をモデルとした『奇事中洲話』を出版するが、京伝のパトロン松前藩主弟松前文京の兄道広は藩政ではロシアの南下問題、抜け荷、田沼意次との密接な関係などがあった。これをもとに天明八年に恋川春町の『悦贔屓蝦夷押領』が描かれたため、工藤平助『赤蝦夷風説考』や勘定奉行松本伊豆守秀持、勘定組頭土山宗次郎や平秩東作が係わった蝦夷地視察など田沼意次の蝦夷地開発政策を背景に調査を進めた。 加えて、『新雑談集』「我かどや」歌仙分析」(『近世文芸研究と評論』15号、2023)を担当した。中興俳諧の内実を明らかにするため歌仙分析を行い、其角の『雑談集』からの影響、俳壇への意見なども今後解明していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
山東京伝と係わりの深い大名子弟と江戸座俳諧宗匠の関係を中心に資料調査を行った。京伝のパトロン松前藩主弟松前文京と江戸座俳諧宗匠一世存義と秀国との係わり、大和郡山藩主柳沢米翁、松代藩主真田菊貫らの俳諧活動の調査を行い、論文としてまとめることができた。 京伝の俳諧交友によってもたらされた蘭学者と京伝を取り巻く交友関係に関して、東洋文庫ミュージアム「東洋の医・健・美」展から知見を得た。さらに京伝作品に描かれた田沼意次や松前藩主松前道広との係わりを工藤平助『赤蝦夷風説考』や平秩東作の蝦夷地視察から調査を進め、作品成立の背景の検討を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
京伝の江戸座俳諧の俳諧交流によってもたらされた蘭学者や吉原者をはじめとする人脈・文化の繋がりの解明とその俳諧交友関係から京伝作品が生み出された時代背景の解明を行う。京伝は俳諧交友関係を通じて蘭学者と交友を持っており、オランダ商館長が滞在した宿屋長崎屋が京伝作品に登場する。京伝と係わりがあると考えられる蘭学者大槻玄沢は日本一の学術サロンを形成した木村蒹葭堂から『六物新志』を出版していた。さらに玄沢は田沼意次、司馬江漢とも親交をもち、幕府の蘭学事業に係わっている。蒹葭堂は松前道広弟の蠣崎波響とも交流があった。また、京伝と同時代の蘭学者、戯作者でもあった森島中良は『解体新書』翻訳者の桂川甫周の実弟であり、中良の『紅毛雑話』を京伝は作品に取り入れていた。こうした俳諧交友をもとにした蘭学者と京伝の繋がりによる西洋文化の受容を解明してゆく。さらに江戸座俳諧交友から京伝作品が生み出された時代背景として、田沼意次隆盛の時代から松平定信による寛政の改革がこの時期の京伝の大きな作品のテーマとなっていた。このうち京伝のパトロン松前藩主弟松前文京の兄道広について恋川春町の『悦贔屓蝦夷押領』が出版され、京伝も寛政の改革で処罰されるが、田沼意次の息子意知が刃傷にあった事件を題材に田沼政治を批判して『時代世話二挺堤』を出版し、『黒白水鏡』で画工をつとめた。蝦夷地開発を含めた田沼時代から寛政の改革までの政治的政策が京伝作品にどのように影響を与えたかについて調査を行う。俳諧交友をもとにした大名や幕府、蘭学などの社会情勢の背景を解明し、山東京伝の江戸文化背景に関する研究を行う。
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Report
(2 results)
Research Products
(4 results)