「よみうり抄」のテキスト化と研究利用に関する総合的研究
Project/Area Number |
22K00350
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02010:Japanese literature-related
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山岸 郁子 日本大学, 経済学部, 教授 (90256785)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
十重田 裕一 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (40237053)
杉浦 静 大妻女子大学, 文学部, 教授 (50140108)
石川 巧 立教大学, 文学部, 教授 (60253176)
前田 恭二 武蔵野美術大学, 造形学部, 教授 (70912020)
須田 喜代次 大妻女子大学, 人間生活文化研究所, 特別研究員 (90118612)
宗像 和重 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (90157727)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 日本近代文学 / 彙報欄 / 文壇 / 読売新聞 / メディア / 作家研究 / よみうり抄 / 文化資源 / 文化研究 |
Outline of Research at the Start |
「よみうり抄」とは明治から昭和にかけて『讀賣新聞』に掲載された作家、芸術家、学者、文化人らの旅行や転居等の短信、消息、ゴシップ、イベント情報などの「彙報欄」である。「よみうり抄」を精査し信頼のおける資料体(テキストデータ)とすることが本研究課題の核心である。 また「よみうり抄」によって読者が予め作家や芸術家の消息を知ったうえで、そこから推測される出来事を小説に期待し、作家たちもそれを想定したうえで様々な場面や状況を描写するといった循環現象も起こりうる。「彙報欄」を媒体としたネットワークの実態と事実と虚構が複雑に交錯する光景が文学の場でどのように生成されるのかを明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は『讀売新聞』の文芸彙報欄である「よみうり抄」を校訂し資料体(テキストデータ)として完成させ、それをもとにした研究の方法を提示し、従来の文学史からは見えてこなかった文芸文化ネットワークの実像を解明することである。2022年度は、第一段階の研究成果として、書籍『よみうり抄』(大正期)の出版に向けて、代表者と分担者で項目の確認にあたるとともにその価値を示すべくデータを使用した国際的なワークショプを行った。ワークショップは、杉浦静(大妻女子大学)・石川巧(立教大学)・山岸郁子(日本大学)を中心とする研究チームが進めてきた読売新聞の彙報欄「よみうり抄」(今回は大正期を対象)の研究の重要性を、広く共有してもらうことを目的としたものであった。ワークショップは公開で行い、まず本研究の分担者である早稲田大学国際文学館長・国際日本学拠点リーダーである十重田裕一が、世界最大の発行部数を誇る読売新聞の「よみうり抄」が、日本文学をはじめとする日本文化の宝庫であり、データベース化も含め、新聞社と研究者が協力してこれを学際的・国際的研究に活用していくことの重要性を示した後、研究分担者の武蔵野美術大学教授の前田恭二が、読売新聞社で記者として勤務された経験を踏まえて、「よみうり抄」の作られ方・使い方について詳細な報告を行なった。様々な文化人の動静を提示する「よみうり抄」が、どのような取材によって作成されていたかという点や、また「よみうり抄」を辿ることによって、文学作品ができあがっていくまでの進捗や背景を読み解くことができる情報の宝庫である点が示された。資料としての「よみうり抄」の価値の高さを示しことができたのみならず、大正期以外の時期や他紙の彙報欄との比較など今後の研究展開の必要性についても確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度はコロナウィルス感染拡大のため、調査先の許可に時間がかかる、また代表者や分担者の国内出張についての本務校への出張申請や許可が出る期間にバラツキが出たため共同での調査が難しく、年度をまたいでしまう地域が出てしまったため2023年度以降に調査機関と相談した上で計画を練り直し実施することを考えている。 国際ワークショップの実施や専門知識の提供を目的とした講演会などは計画通り遂行することができた。具体的には「日本の新聞彙報欄を活用した国際ワークショップ」(早稲田大学)を実施、研究代表者と分担者が全員報告をし、ロバートキャンベル(早稲田大学特任教授)、鳥羽耕史(早稲田大学教授)をコメンテーターとして迎え、50名以上の参加者により活発なディスカッションを行ない「よみうり抄」についての価値を見直すことができた。 また、「よみうり抄と音楽」(白石美雪 武蔵野美術大学教授)、「よみうり抄と泉鏡花」(吉田昌志 昭和女子大学教授)、「よみうり抄と大正美術」(五十殿利治 筑波大学名誉教授)といった近接領域の専門知識の提供を意図した講演会を継続的に行ない、「よみうり抄」について幅広い視野から改めて重要性について確認することができた。2023年度も計画にしたがって研究会と講演会を複数回実施する予定である。 研究活動においては読売新聞社から全面的な協力を得ており、必要な資料の提供などを受けるとともに公開についての承諾も得ているため、今年度中に書籍(『よみうり抄』大正篇)を出版すべく作業を進行するつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
1912(明治45)年1月~1926(大正15)年12月までの記事データの入力を完了しているが、2022年度第1段階では入力した記事データを研究資料や文献と組み合わせて活用する方法を提起した。次年度以降はそれをふまえ、より使いやすいテキストデータとして昭和戦前期までの記事を入力・校訂し完成させる。資料を一種の文化資源アーカイブスとして汎用性があるデータベースとし、その活用について実践的に示すことで、横断的な文化研究に資するものとする。また同時代の他媒体における彙報欄と比較し情報を集合させ、諸情報と創作世界との連続・非連続性についても検討する。 具体的には3つのデータベース使用者を想定し構築した。1)研究者、及び何らかの研究目的をもつ人、2)マスコミ、ジャーナリズム関係者、及び出版文化に関する研究・調査を行う人、3)近代文学、文化、芸術、学術、教育等に関わる、ある特定の人物、特定の印刷物、特定の場所等に興味を持ち、その情報を収集し活用する人、などである。 インターネット上の基本操作や画面構成と本索引との統一、英語の記述など外国人利用者の便宜をはかるための工夫については「ヨミダス歴史館」を管理・運営する読売新聞社と相談して進めたい。メディアの中に位置づけられた文芸文化の「彙報欄」を横断的に探究することで、文学のみならず美術・芸術など隣接領域との共通性や関連性、歴史・思想に及ぶ視野の転換点についての考察が可能となり、日本近代における文化史の新しい座標軸を示すことができるであろう。デジタル機器を用いた検索を可能とするような包括的なアーカイヴス化を想定しながら入力・校訂作業を進行させることで、総合的な文化事象のデータベース作成のためのモデルケースとなり、幅広い利用者に正確な情報を提供することで他領域の研究推進・社会還元にもつながると考える。
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Report
(1 results)
Research Products
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