Project/Area Number |
22K00377
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02030:English literature and literature in the English language-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
合田 典世 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (90454868)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | テクスト言語 / ヴァージニア・ウルフ / ジェイムズ・ジョイス / メディア / 文字 / 意識 / 読み書き / 自由間接文体 / 創造性 / モダニズム / 文体 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、20世紀の英国モダニズム文学、特にジェイムズ・ジョイスとヴァージニア・ウルフにおいて見られる、文字表象に特有の言語的様態を精査することで、モダニズム文学をより精緻かつ具体的に理解するための基盤形成に取り組む。文字言語/テクストというメディア的条件が、人間存在を取り巻くすべてを表象しようとする試みとどのような関係を切り結ぶのか考察しつつ、モダニズム文学の言語的特質や芸術性に光を当てなおす。
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Outline of Annual Research Achievements |
前年度のイギリスの国際学会でのウルフについての発表は論文化し、近日出版予定の論集に寄稿済みである。 また、ジョイス研究の第一人者であるFritz Sennが主催する国際ワークショップに参加した。発表では、ジョイスの『ユリシーズ』におけるブルームのswearing(意図せず競馬の予想に巻き込まれてしまう)のありようを描く言語を精査し、その一連のテクスト言語のふるまいが、本というメディア空間における、character(人物/文字)のありようを相同的に体現していることを、character(人物/文字)のswearing(誓い)の原型であるとして論じた。出版百周年にあたる2022年に、新しく『ユリシーズ』の注釈書を上梓したSam Slote, Sennの教え子であり著書の編集やインタビューも務めてきたChristine O'Neillをはじめとした、斯界の第一人者を含む参加メンバーとの議論は有意義なものとなった。得られたフィードバックを踏まえて論文化の上、現在企画進行中の論集(Efficacious Language: Oaths, Blessing, Cursing and their Social Decline(仮))に掲載される予定である。 一方、モダニズムの広がりを、ハイ・モダニズムの欧米キャノン作家研究の範疇を超えて跡付けるべく、日本のアニメ映画を考察した論文も発表した(『芸術文化講座論集』)。また、日本における現代お笑い文化に見られるノンセンス性、モダニズム性について、日本語やその文化が欧米をモデルとしたことによる影響という観点から考察する国際発表も行った。英米だけでなく日本の現代文化とモダニズムの関わりを考察することも今後のプロジェクトの視野に入れており、これらはその試みの一端である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナによる規制が緩和され、海外出張にも行きやすくなったため、対面の国際学会に参加できるようになった。一方、コロナ禍の経験から、オンラインでの国際学会参加の道筋も拓かれた。結果的にフットワークが軽くなり、研究活動の促進につながっていると感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、本プロジェクトのまとめのつもりでこれまでの成果を形にしていくと同時に、次なるプロジェクトも意識しながら研究を継続していく。ウルフやT.S.エリオットがジャンルを超えてテクスト上で変奏させながら提示する “passive-awareness” のテーマ(意識と無意識のあわいの次元)、ジョイスの文字/キャラクターが見せる、「意図」を超えて自律的にふるまうテクスト言語の様態など、英国モダニズム文学のテクスト言語的達成を詳らかにする本プロジェクトでの成果は、微視的なテクスト上の発見に基づいている。次はそうした具体的な細部を、より大きな文脈に位置づけていく必要がある。そこで鍵概念として設定したいのが “impersonality” である。モダニズムから100年経ち、戦争の不穏な気配という形で歴史を反復する現在、たとえばAI、多様な動画コンテンツなど、刷新されたメディア環境にありながら変わらずわれわれが直面しているのはけだし、モダニスト作家がしばしば使う語を借用すれば、“impersonality” をいかに扱うかという問題ではあるまいか。近代的自我(「エゴ」的「個」)に基づいた “personaity” を超えて “impersonality” を包摂するモダニズムの様相を捉え直すことで、「実験的」「前衛的」という教科書的記述で不当に狭められてきた感のある、モダニズムの広がり、その本質を把捉する視座を得られるだろう。その上で、モダニズム文学が討究した問題が、今もって形を変えて変奏されているさまを跡付け、モダニズムを「再モデル化」する道筋を拓いていきたい。さしあたっては、ジョイスと平和主義、モダニズムとスペクタクルというテーマのもと、諸学会で発表していく予定である。
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